アメリカの映画館で、上映中、観客が刃物で刺され重傷

事件が起こった映画館では「ロスト・バケーション」(今月日本公開)がかかっていた

アメリカの映画館で、またもや悲惨な事件が起こってしまった。

現場は、カリフォルニア州サンタローザのロキシー・シアター。西海岸時間29日(水)午後4時頃、「ロスト・バケーション」を上映していた劇場内で、21歳の男性観客が、突然、後ろから刃物で刺された。犯人は、男性の肺、喉、腕などを何度も刺した後、ロビーを走り抜けて映画館の外に逃亡している。男性は、命に関わる重傷を負い、病院に運ばれた。意識はあるようだ。

映画館は二階建てで、事件直後から夜まで、二階部分は、捜査のため閉鎖された。目撃者から犯人の特徴を聞いた警察は、事件後まもなく23歳の男性を容疑者として逮捕。地元のメディアに対し、警察は、犯行は特定の人物を狙ったものではなく、事件の引き金になったきっかけもとくにないようだと語っている。凶器は、劇場の外のゴミ箱から発見されている。この街では、月曜日にも、ある男性が何者かに刃物で50回ほど刺されて殺されており、手口が似通っていることから、警察は、事件の関連を調べている。

「ロスト・バケーション」は、ブレイク・ライヴラリー主演、ジャウム・コレット=セラ監督のスリラー映画。先週末北米公開され、週末3日間に予測を上回る1,700万ドルを売り上げて、この夏のスマッシュヒットとなりそうな見込みだ。しかし、事件があったのは平日の昼間ということもあり、劇場内はすいていたという。救急車が到着するまで、ほかの観客らが、被害者の男性のそばに付き添っていた。

サンタローザは、サンフランシスコの北およそ90kmのところにある、閑静な街。周辺にはワイナリーが多く、ワイン好きの旅行者を惹きつけているほか、スヌーピーの生みの親チャールズ・M・シュルツの人生や作品を振り返るシュルツ・ミュージアムもある。突然起こった、残忍で無差別な犯行に、地元の人たちは大きなショックを受けているようだ。

アメリカでは、5年前、コロラド州オーロラで、「ダークナイト・ライジング」を上映中の映画館に銃を持った男が侵入し、12人が死亡、70人が負傷するという大きな悲劇が起こっている。オーロラもまた、普段は平和で静かな街だ。被害者の遺族たちは、この映画館チェーン、シネマークの安全対策が徹底していなかったとする民事訴訟をコロラド州の裁判所で起こしたが、シネマーク側の弁護士は、「映画館で乱射事件が起きたことはそれまで一度もなく、こういった事態を予測するのは不可能だった」と主張。今年5月、シネマーク側が勝訴している(http://bylines.news.yahoo.co.jp/saruwatariyuki/20160520-00057880/)。別の被害者グループは、連邦裁判所で訴訟を起こしたが、こちらも却下された。

この判決が出た後、シネマークが、訴えを起こした被害者たちに対し、裁判にかかった費用として、69万9,187ドルを請求していたことが、本日になって判明している。コロラドの州法は、民事裁判に関し、勝ったほうが負けたほうに裁判の費用を請求することを認めている。敗訴した後、原告側の弁護士が上訴のかまえを見せていたため、裁判費用の請求を取り下げるのと引き換えに、上訴をあきらめさせようというのがシネマークの狙いではないかと見られている。このシネマークの姿勢については、「ひどすぎる。もうシネマークには二度と行かない」「事件を起こしたのは犯人なのに、被害者は映画館を訴訟した。そのせいで映画館はお金を使ったのだから、払ってもらうべきだ」「やっていることは合法とはいえ、会社のイメージを考えれば愚かなんじゃないか」など、ソーシャルメディアには、さまざまな意見が飛び交った。そんなふうに、5年前の出来事が人々の頭によみがえっている中、この新たな事件が報道されたのだ。

昨年12月にはL.A.郊外サンバーナディーノの福祉センターで14人が死亡、つい最近はオーランド州コロラドのゲイバーで49人が亡くなるなど、乱射事件が頻繁に起きる中、アメリカでは、いつ、どこで、どんな恐ろしいことが起きるかわからないという危機感が高まっている。テーマパークや大型ショッピングモールなど、大勢の人が集まる場所では、常に多数の監視カメラが回され、私服、制服の警備員を随所に配置しているが、スクリーンが14個や15個もあり、1日何回も映画が回るシネコンで、毎回必ず、観客全員の持ち物検査をするというのは、大変すぎて、現実的ではないだろう。それでも、なんらかの対策を望む観客は多いのではないか。夏の大型映画がまだまだ控える中、劇場主には、安全面について、真剣な再考慮が求められる。