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アカデミーが新会員を発表。北野武、仲代達矢、是枝裕和、種田陽平らも

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
トム・ヒドルストン(10月日本公開の『アイ・ソー・ザ・ライト』より)も招待された

アカデミーが、今年の新会員として招待した人々の名前を発表した。2年連続でオスカーの演技部門候補者20人全員が白人だった“白すぎるオスカー”バッシングを受けて、アカデミーは会員の多様化を大きな目標に掲げており、まさにその努力を反映したリストとなっている。

招待を受けた人数は、通常より圧倒的に多い683人。これまでで一番多かった年は、アカデミーがすでに多様化を意識していた昨年で、322人だった。しかし、そのペースでは「2020年までに女性とマイノリティの数を倍増する」というゴールを達成するのは難しいことは指摘されてきており、招待数自体を倍以上にすることで、スピードアップを図ったと見られる。この683人の中には、59カ国出身の283人の外国人が含まれている。アカデミーの発表によると、46%が女性、41%がマイノリティということだ。日本人では、北野武、是枝裕和、仲代達矢、黒沢清、河瀬直美、種田陽平、作曲家の梅林茂などが招待されている。

アカデミーに招待される基準のひとつに、「劇場用映画の世界で並外れた仕事をしてきた人」というのがあるが、それほど長いキャリアを築いてきたとは言えない若手の名前も見受けられる。たとえば昨年の「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」で初めて映画に主演したダコタ・ジョンソン(26)や、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」でブレイクしたばかりのジョン・ボイエガ(24)などだ。

今月初め、「L.A.TIMES」紙は、アカデミーに新会員として推薦したい100人を選び、記事にしている(http://bylines.news.yahoo.co.jp/saruwatariyuki/20160606-00058510/)。今回のリストには、その100人に含まれていた顔ぶれも多く見られ、あの記事は多少なりとも影響を与えたのかもしれないと思われる。記事には、北野武、菊地凛子、種田陽平の名前が挙げられていた。

今回招待された主な人々の名前は、以下のとおり。

マイノリティ

イ・ビョンホン

パク・チャヌク

イドリス・エルバ

ライアン・クーグラー

マイケル・B・ジョーダン

ジェームズ・ワン

ジャ・ジャンクー

キャリー・フクナガ

ルイス・グズマン

オシェア・ジャクソン

アッバス・キアロスタミ

オスカー・アイザック

女性

ミシェル・ロドリゲス

ティナ・フェイ

エマ・ワトソン

レイチェル・マクアダムス

サム・テイラー=ジョンソン

リタ・ウィルソン

パティ・ジェンキンス

アビ・モーガン

フィリダ・ロイド

カリン・クサマ

リン・ラムジー

フリーダ・ピント

アニカ・ノニ・ローズ

ケイト・ベッキンセール

ヴィヴィカ・A・フォックス

LGBT

ラナ・ウォシャウスキー

リリー・ウォシャウスキー

もちろん、白人男性も招待されている。監督ではケン・ローチ、グザヴィエ・ドラン、クリスティアン・ムンギウ、レニー・エイブラハムソン、スコット・クーパー、アダム・マッケイ、ニコラス・ウィンディング・レフン。俳優ではアンドリュー・ガーフィールド、トム・ヒドルストン、ブルース・グリーンウッドなどだ。

今年のオスカー受賞者であるブリー・ラーソン、マーク・ライランス、アリシア・ヴィキャンデルも、もちろん招待されている。

このリストに対しては、賞賛の声も聞かれる一方で、「もはや、たいしたことをしていなくてもアカデミー会員になれるんだね」「ばかげている。どうして『ジェニファーズ・ボディ』の監督の名前がケン・ローチと一緒に並ぶんだ?」と言ったネガティブな声も出ている。また、全会員数が6,000人以上で、そのうち94%が白人、76%が男性、平均年齢63歳という実態を考えると、これら新会員が全員招待を受け入れたとしても、マイノリティは3%、女性は2%しか増えないことから、「来年のノミネーションでも、また同じような結果になるのではないか」「多様性だけを必死で追いかけないほうがいいと思う。そうすることで権利を奪われる人が出たら、ますます批判が強まるだけだ」という指摘も聞かれる。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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