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「風立ちぬ」オスカー受賞の可能性は?現段階における、全米各都市映画批評家賞の受賞状況をレポート

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト

北米で、アワードシーズンが本格的に始まった。3月2日のオスカーに向けて、まだまだ重要な賞の発表が続くが、全米各都市の映画批評家協会の結果は、ほぼ出そろった感じだ。宮崎駿の「風立ちぬ」は大健闘しており、ニューヨーク、シカゴ、ボストン、トロント、サンディエゴ、そしてナショナル・ボード・オブ・レビューから最優秀アニメ賞を獲得している。最大のライバルは、「アナと雪の女王。」こちらは、ワシントンDC、ヒューストン、サンフランシスコ、オースティン、フロリダの批評家から最優秀アニメに選ばれた。ハリウッドのお膝元であるL.A.の映画批評家は、ベルギーのフランス語アニメ「Ernest & Celestine」を選択。カンザスシティの批評家は、「怪盗グルーのミニオン危機一髪」に賞を与えた。筆者も所属する女性映画批評家サークルは、最優秀アニメに「アナと雪の女王」を選んでおり、「風立ちぬ」には最優秀家族向け映画賞を与えている。

今後発表される賞には、ゴールデン・グローブと放送映画批評家協会賞(クリティックス・チョイス・アワード)があるが、まだ英語吹き替えがなされていないという理由で、ゴールデン・グローブではアニメ部門ではなく、外国語映画部門にノミネートされている。一方、アニメ映画協会が投票するアニー賞には、作品のほか、宮崎駿が脚本部門、高坂希太郎がキャラクタ−部門でノミネートされた。アニー賞の受賞結果発表は2月1日。

ただし、これらの結果が必ずしもオスカーにつながるとは言えない。全米各都市の批評家賞に投票するのはあくまでジャーナリストであり、オスカーに投票するアカデミー会員とは重ならないのだ。アニー賞も、たとえば昨年は「シュガー・ラッシュ」が受賞したが、オスカーは「メリダとおそろしの森」だった。これからの2ヶ月半、まだまだ何が起こるかわからない。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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