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ベネディクト・カンバーバッチ、独占インタビュー。ジュリアン・アサンジを演じた最新作を語る!

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
ウィキリークスの創始者アサンジを演じるカンバーバッチ。映画は現在北米公開中。

現在北米公開中のカンバーバッチ主演作「Fifth Estate」は、先月のトロント映画祭でオープニング作品として上映された。当時は日本でも来年の公開が決まっていたが、最近になって日本では公開されないことが決定。DVDリリースもないとのことだ。それを受けて、筆者がトロントでカンバーバッチをインタビューした内容を、今ここで掲載する。

Q:この映画で演じるのは、ウィキリークスの創始者ジュリアン・アサンジですね、本人に会われたことはないようですが、会話をもったことはありますか?

この映画の話を受けた後に、彼にメールを送ったよ。そこで何を語り合ったかは、僕とジュリアンの間のプライベートなことなので、ここでは語りたくない。彼はこの映画の製作に賛成ではなかった。僕は、この映画がどうして彼のためになるのかを、僕なりに熱心に説明したけれど、彼を説得はできなかったよ。

Q:彼はこの映画を見てくれると思いますか?

僕は彼じゃないからなんとも言えないけれど、見てくれるんじゃないかな。どっちかに賭けろというなら、見るほうに賭けるね。彼のことを、ゴシップ紙をにぎわせたレイプ疑惑の人として覚えている人も、きっと多いことだろう。だけどそれ以前に、彼はウィキリークスを生み出した人なんだ。ウィキリークスのせいで、僕らが住む世界は大きく変わった。僕は彼を善人としても、悪人としても演じていない。立体感のある、本当の人間として演じたつもりだ。

Q:今でもアサンジに会ってみたいですか?

ああ、できることなら映画が公開される前に会いたかったね。そして彼の意見を聞きたかった。後になって「なんでこんなふうにしたのさ」と言われるよりも。

Q:役を引き受ける前には、かなり躊躇したそうですね。

彼のことをあまり知らなかったからね。もちろんニュースはフォローしていたが、彼本人についての僕の知識は限られていたんだ。でも、調べれば調べるほど、僕はこの人物に魅了されていったのさ。と同時に、彼はまだ生きており、このニュースもまだ終わってはおらず、逐次更新されているという事実にも気づいた。そのことに大きな責任を感じたよ。僕は、この人を正しく演じなくてはという強いプレッシャーを感じたんだ。

Q:あなた自身はテクノロジーに詳しいほうですか?

普通だね。僕は読書好きで、普通の本も読むし、Kindleでも読む。どっちを好むというのはない。この先も、本はなくならないと思うよ。リビングリームを飾る写真集とか、そういう役割だけでなく、読むための本としても、存在し続けると思う。1冊の本を手に出来るというのは、特別なフィーリングだよね。Kindleで「あなたは今、全体の10%を読み終えました」と言われるのとは違う。まあこれは予測ではなく、あくまで僕の希望にすぎないんだが。

Q:あなたのキャリアは絶好調ですね。このトロント映画祭でも、この映画のほかに、「August: Osage County」「12 Years a Slave」を含め、合計3作が上映されています。

ちょっと恥ずかしく感じるくらいだよ(笑。)今、僕はたしかにすばらしいオファーをたくさんいただいている。それはとても幸運なことだ。これがいつまでも続けばいいが、それはありえないともわかっている。だから、せいぜい今の特別な状態を楽しませてもらい、これが続いているうちに、できるだけ幅広いジャンルの、前とはと違う役柄に挑戦しようとしているんだよ。

Q:ご両親とも俳優ですが、自分も俳優になろうと子供の時から決めていたのですか?

いや、自分が何になるのか、しばらくわからなかった。弁護士になろうと思った時期もあるよ。僕が弁護士になったら両親は喜んだだろうな(笑。)でも両親はとても寛大な人たちで、僕に自分で選ぶ自由を与えてくれた。俳優になると決めた時も、許してくれたし、僕をサポートしてくれたんだ。そして結果的に、それはうまくいった。

Q:舞台にもまた戻ろうと思いますか?

もちろんだよ。具体的なプランはないけれども、ぜひ舞台に立ちたい。イギリスは捨てたのですかとか、舞台は捨てたのですかとよく聞かれるが、たまたま僕はこの1年ほど映画で忙しくて違う場所でロケをしていたにすぎない。僕は舞台も愛しているし、イギリスも捨ててはいない。

Q:ロケであちこち飛び回るあなたですが、どこにでも必ず持っていくものはありますか?

とくにはないな。ただ僕は、やたらと多くのものをスーツケースに詰めこむ傾向にあってね(笑。)服も、本も、そんなにいらないよというくらい持っていってしまう。でも、これがないと自分は落ち着かないというものはないし、迷信深くもないし、なんとしても持っていく、という物はないな。

L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「シュプール」「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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