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投資家や富裕層は買いに来ないで。郊外の「優等生マンション」が普通の購入者に人気

櫻井幸雄住宅評論家
首都圏でも近畿圏でも、環境のよい近郊外で人気物件が出現している。昭島市で筆者撮影

 新宿駅から1時間圏となる東京都下・昭島市の新築分譲マンションで昨年9月に行われた第1期1次販売で262戸もの住戸が売れ、そのうち30戸が抽選販売に。以後、第1期2次、第2期1次と好調に販売を続け、1月9日時点で全481戸のうち380戸も売れてしまったマンションがある。

 近畿圏では、昨年1月〜9月近畿2府4県で成約戸数第1位(186戸)となったマンションが兵庫県伊丹市で建設中だ。

 いずれも駅直結の超高層マンションではなく、1億円以上の住戸をそろえる高額マンションでもない。

 「郊外」と位置づけられる場所で、5000万円台、6000万円台で購入できる3LDKが中心となる十数階建てのマンションである

 購入者の多くは、初めてマイホームを買う人たち。家族で暮らすための3LDKや4LDKを無理のないローンで買おうとする……従来、マンション購入者の主流となってきた実需層(自ら住むために家を買う人たちの意味)だ。

 今、新築マンションは1億円以上の都心超高層ばかりが売れている、と思っている人には意外な動きが首都圏でも近畿圏でも出ている。

都心超高層ではないのに、なぜ売れる?

 昨年9月から首都圏において380戸もの住戸が売れたのは「プレミスト昭島モリパークレジデンス」。地上13階建ての大規模マンションだ。近畿圏で昨年上半期に成約戸数第1位になったのは「パークホームズ伊丹稲野ガーデンスクエア パークフロント」。地上15階建て全571戸となり、こちらも大規模マンションとなる。

「パークホームズ伊丹稲野ガーデンスクエア パークフロント」の優雅なレジデンシャル・サロン(販売センター)。筆者撮影
「パークホームズ伊丹稲野ガーデンスクエア パークフロント」の優雅なレジデンシャル・サロン(販売センター)。筆者撮影

 じつは、2つのマンションには、大規模であること以外にもいくつかの共通点がある。

 まず、駅に近い。「プレミスト昭島モリパークレジデンス」は駅から徒歩5分で、「パークホームズ伊丹稲野ガーデンスクエア パークフロント」は最寄り駅から徒歩2分だ。加えて、公園に隣接するなど緑が身近で環境がよい。

 じつは、冒頭のイチョウ並木の写真は「プレミスト昭島モリパークレジデンス」の建設地近くで撮影したものだ。

 それでいてスケールの大きな商業施設が近く、生活しやすいという特徴も2つのマンションに共通する。

 便利さと環境のよさ、生活のしやすさを備えているわけだ。

「プレミスト昭島モリパークレジデンス」の建設地へは、駅からイチョウ並木の歩行者専用通路を歩いて5分。環境がよく、買い物施設も近い。筆者撮影
「プレミスト昭島モリパークレジデンス」の建設地へは、駅からイチョウ並木の歩行者専用通路を歩いて5分。環境がよく、買い物施設も近い。筆者撮影

 建物の質が高いことも2つのマンションに共通する特徴となる。

 いずれも、省エネ性能が高いZEH-M(ゼッチ・エム)オリエンテッドの認証を受けている。その結果、住宅ローン控除の枠が大きいし、住宅ローンの金利も優遇される。そして、寒い冬も暑い夏も光熱費が抑えられるといったメリットが生じる。「住んで得するマンション」になっているわけで、それも堅実な実需層に好ましい特性だろう。

 長所はそれだけでなく、キッチンにはディスポーザーと食器洗い乾燥機が付き、バルコニーにはスロップシンク(外部水栓)が付くなど設備仕様のレベルが高いのも2物件に共通する性格。間取りにも工夫が多く、生活しやすそうだ。

「プレミスト昭島モリパークレジデンス」では、一部の住戸に趣味を楽しむ空間として「土間スペース」が付いている。靴のまま入ることができるスペースで、洗面所にも直結している。筆者撮影
「プレミスト昭島モリパークレジデンス」では、一部の住戸に趣味を楽しむ空間として「土間スペース」が付いている。靴のまま入ることができるスペースで、洗面所にも直結している。筆者撮影

 つまり、郊外の新築分譲マンションとして「優等生」と呼ぶべき内容になっており、それが実需層のハートをつかんだと考えられる。

こんなマンションなら、もっと増えて欲しい

 ここ数年、新築分譲マンションは、東京でも大阪でも都心立地の高額物件ばかりが脚光を浴びていた。それらの価格があまりに高いため、「1億円以上の予算がないと、マイホームは買えない」と言われることもあった。

 しかしながら、普通の人が1億円以上の家など買えるわけがない。そもそも一般的なファミリー世帯が「都心マンションの3LDK」を盛んに購入した時期など、マンションが増え始めた昭和期から一度もなかった。普通の人たちにとって、都心の新築マンションはいつの時代も高嶺の花だったのである。

 その都心高額マンションが脚光を浴びたのは、投資家や富裕層と呼ばれる人が盛んに購入したから。この先、さらに値上がりが見込めると判定されたため、お金のある人が、新築の都心マンションを購入したのである。

 これに対し、地道に頭金を貯めて家族のためにマイホームを買う層は、都心部のマンションには目もくれず、準都心や郊外の便利な場所で、つくりのよい新築分譲マンションを探してきた。

 だから、堅実な実需層が買いたくなる価格と内容のファミリー向けマンションであれば、首都圏でも近畿圏でも、やっぱり人気が高くなる。2つのマンションは、そのことを証明した。

 となれば、同様の性格を持つマンションをもっと増やして欲しい……ただし、投資家や富裕層は高品質な郊外マンションに目を付けないでいただきたい。

 1人で3戸4戸も購入する投資家が集まると、堅実な実需層が買いにくくなってしまう。さらには、今は価格が抑えられている郊外マンションも、価格が大きく上がる危険性が生じてしまう。じつは、建築費の上昇で、郊外マンションも今後は価格が上がることが予想されている。その価格上昇が一段と激しくなる事態はなんとしても避けたいところである。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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