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平均1億円超でも最高11倍の抽選に。大阪で「安くない定借マンション」が人気上昇中

櫻井幸雄住宅評論家
人気の定借マンションが登場した大阪の中心部、中之島エリア。筆者撮影

 近年、定借(定期借地権方式)マンションの性格が変わってきた。いまだに「定借マンションは安い」と思っている人が少なくないのだが、じつは令和に入ってから分譲された定借マンションは決して安くないのだ。その「安くない定借マンション」の人気が上がり、大阪でも人気物件が続出……以前では、考えられなかった現象が起きている。

「定借マンション」が安かったのは、今や昔の話

 定借マンションが初めて登場したのは21世紀の始まった2001年のこと(定借の一戸建てはその数年前からあった)。当初、定借マンションは「安さ」が第一のウリになっていた。

 定借ならば、東京でも大阪でも所有権分譲マンション(一般の分譲マンション)より2割から3割程度安いのが当たり前で、なかには4割安いという事例もあった。その分、建物の質は低かった。お粗末とまではいわないが、「中の下」というか分譲マンションとしては最低ランクの仕様になるのが普通だった。

 建物の質はそれなりでも、便利な都心部や準都心部で駅に近い場所に建設されたため、「この場所で、この広さ、この価格は値打ちあり」と評価され、多くは勢いよく売れて、なかには抽選になった物件もあった。

 その定借マンションは、平成中期から徐々に価格設定を上げてゆき、「3割安い」といえる物件が出なくなった。なかには「ずいぶん高いなあ」といわれる物件も出てきたのだが、所有権分譲のマンションと比べて、どれくらい安いのか、高いのかがわかりにくくなった。

 その理由は、2つある。

 1つは、競合する所有権分譲のマンションがない場所で、定借マンションだけが登場するケースが増えたこと。「所有権分譲のマンション」との価格比較がしにくくなったのだ。

 もう1つの理由は、定借マンションの建物がランクアップしたこと。所有権分譲のマンションと変わらない、もしくは所有権分譲を凌ぐ高スペック物件が出るようになったので、単純な価格比較ができなくなったわけだ。

 以上の流れで、定借マンションの性格は大きく変化。以前のように、「安い定借マンション」は見つけにくくなってしまった。

 徐々に価格を上げた定借マンションは、東京都心部では、まあまあ売れている。価格が安いとはいえなくても、「この場所で、この建物内容ならば、買い」と判定する購入者が一定数いるからだ。

 これに対し、「安さの魅力がなくなった定借マンションなど、誰も振り向かない」とみなされてきたのが大阪だ。その大阪で、このところ定借マンションの人気が上昇している。その原因は何か。

 最新の定借マンション事情を解説したい。

2020年から登場しはじめた「安くない定借」

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住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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