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月額50万円以上が必要。それでも駅直結シニアレジデンスが注目を集める生々しい理由

櫻井幸雄住宅評論家
横浜市港北区に完成した駅直結のシニアレジデンス「グランクレール綱島」。筆者撮影

 横浜市港北区で建物地下が鉄道駅と直結しているシニアレジデンス(自立高齢者向け住宅)の「グランクレール綱島」が完成。11月30日からの入居開始を前に、その建物内が報道陣に公開された。

 東急不動産と東急イーライフデザインが運営するこの施設の内容と価値は、若い世代にはなかなか理解されにくい。特に、家賃の高さは受け入れがたい水準だろう。

 月額家賃は約33平米のワンルームでも23万円だ。それに管理費・サービス費の18万円が加わるので、合計41万円。さらに、1日三食の食事を利用すれば、その費用が月30日で約8万円かかる。すべて合わせれば約49万円で、管理費・サービス費・食事代には消費税が加わるので合計金額は50万円を超えてしまう。

 ちなみに、家賃23万円は最も安い住戸で、約83平米の2LDKだと月額家賃は83万円となり、毎月の費用は100万円を大きく超える。

 なんという無駄遣いと、思ってしまう人もいそうだ。シニアのための住まいが駅直結の必要はないとも……。

 しかしながら、シニアの実情からすると、異なる見方が生じる。そういうシニア向け住宅があってもよいと考えられるのだ。

高級車が一定数売れるのと同じ……

 世の中の多くの商品は、クラスに応じたラインナップがある。

 車の場合、フェラーリやロールスロイスに代表される超高級車があり、国産でもレクサスやGTRなど高級車に分類される車種がある。カローラはスタンダードレベルの車か。軽自動車のなかにはもっとお手軽価格の車種がある。

 国産車でも新車価格が1000万円を超える高級車は誰でも買えるものではない。それでも、一定の需要があるし、高額の車が売れることに文句を言う人はいない。財力と好みで、どんな車を選んでもよいのだし、いつかはレクサスやGTRを新車で買えるような身分になりたいと夢見る人が多いからだ。

 駅直結で費用が高いシニアレジデンスも、そのように高級な高齢者向け住宅として企画され、一定の需要がある。

 では、駅直結のシニアレジデンスが好まれる理由は?そして、シニアが求める最後の住まいの条件とは?

 若い世代だとなかなか接することがない高齢者向け住宅の実情を明らかにしたい。

駅と直結していることが喜ばれるホントの理由

 「グランクレール綱島」の最大の特徴は、鉄道駅と直結していること。建物の地下で東急新横浜線の新綱島駅とつながっている。これは、同レジデンスに暮らす上で、最大の利点になる。

 まず、遊びに出かけるのに便利なのだ。

 新綱島駅からは新横浜駅まで1駅・3分の所要時間となる。

 新横浜駅からは東海道新幹線を利用できるので、シニアが好きな新幹線での旅行に出かけやすい。東海道新幹線だけでなく、東京駅で新幹線を乗り継ぎ、東北・上信越方面にも行きやすい。そして、新横浜からは羽田空港、成田空港へのリムジンバスも出ているので、極めて旅行に行きやすい立地になっているわけだ。

 旅行はシニアになってからの楽しみのひとつ。時間を自由に使えるので、料金が下がる閑散期を狙って旅行を楽しみたいと多くの人が考えている。それがしやすいのは、新横浜駅に近い駅直結シニアレジデンスの大きな利点となる。

 加えて、都心や横浜中心部にも出かけやすい。劇場や映画館、美術館にも、デパートにも行きやすいし、食べ歩きもしやすいわけだ。

 ここまでは想像しやすいだろう。以前の高齢者施設は山の中や海のそばなど自然が身近な場所に設けられたが、「そんなところはすぐに飽きるし、家族も来てくれない」とシニアに敬遠されるようになった。それは、今やシニアでなくても、知っている人が多いことだろう。

 しかし、もうひとつの理由は、想像しにくいのではないか。

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住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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