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4年ぶりの大雪で実感。「札幌のタワマン」で東京からの購入者が急増しているもっともな理由

櫻井幸雄住宅評論家
札幌中心部で分譲開始した「ONE札幌ステーションタワー」のモデルルーム。筆者撮影

 首都圏で4年ぶりの大雪となった1月6日、各地でスリップや転倒事故が相次ぎ、雪が生活に及ぼす影響の大きさを改めて思い知らされた。1日の雪でこれだけ支障がでるのだから、12月から3月まで雪に覆われる北海道において、雪の影響は計り知れない。

 そのためではないか、と思える現象が札幌の住宅事情に出ているので、報告したい。

草原の一戸建てよりも、便利なタワマンが憧れの的に

 10月に発表された「地域ブランド調査(ブランド総合研究所発表)」で、北海道は13年連続で「最も魅力的な都道府県」となった。その魅力的な北海道の中心地・札幌ではタワマン=超高層マンションの人気が上昇。道内の人だけでなく、東京・大阪など道外からの購入者も急増し、驚きを持って受け止められている。

 北海道には豊かな自然に豊富なグルメ、スキーやゴルフ、ショッピングの楽しみがあるし、観光で訪ねたい場所も豊富。夏が涼しい、杉が自生していないのでスギ花粉の心配がないなど、エリアの魅力が多い。

 コロナ禍をきっかけに、テレワークやワーケーションが可能になれば、北海道への移住を考える人が増えるのは当然といえる。

 が、これまで北海道での移住先で人気が高かったのは「自然に囲まれた郊外の一戸建て」。一戸建てならば、以前から移住目的の購入者が少なくなかった。

 東京に住んでいる人が、札幌で駅に近い便利な超高層マンションを購入するケースはこれまで希だった。わざわざ北海道まで行って、タワマンはないでしょう、と思われていたわけだ。

 それが、コロナ禍が起きて以降、超高層マンションで道外からの購入者が増えた事例が続出。新さっぽろ駅近くで現在販売中の「プレミストタワー新さっぽろ」では、契約者の約15%が道外在住者になったし、札幌市内の別の超高層マンションでは契約者の20%が道外在住者だった。

 北海道への移住やセカンドハウス購入を考えたとき、「大都市・札幌の便利な超高層マンション」を選ぶ人が増えているわけだ。

 その理由となっているのが、まさに冬の大雪だった。

初の地下街完全直結マンションに全国から熱い視線

 北海道札幌市で、今、東京など道外からの購入者、及び購入検討者が3割から4割に達する、という超高層マンションが2物件出ている。

 2021年秋から販売活動を開始した「ライオンズタワー札幌」と「ONE札幌ステーションタワー」だ。

 道内はもちろん、道外からも注目される大きな理由は、2物件とも札幌市内でも希少な「地下街完全直結」のマンションであることだ。

 北海道というと、夏涼しく、快適な気候を思い浮かべる人は多い。が、移住するとなると、夏だけでなく過酷な冬も過ごさなければならない。

 一戸建てに住めば、毎日、屋根の雪下ろしと道路の雪かきをすることが求められる。それは重労働だし、危険を伴う。近くのスーパーマーケットまで買い物に出かけるのも、吹雪く日は命がけだ。

 そこで、今、北海道の人たちの憧れを集めているのは、雪下ろし・雪かきをしないで済み、屋根付きのペディストリアンデッキや地下通路を使って、駅や買い物に出かけられる住まい。

 その条件を満たす便利な駅近・超高層マンションが、次々に登場。道内の人たちの人気を高めている。そのことに東京・大阪からの購入者も気づき、札幌市内の超高層マンションを購入しはじめたのである。

 なかでも、憧れの物件となるのが、建物の地下から直接地下道・地下街にゆけるマンションだ。

 札幌市内では、これまでも「地下街直結」とされるマンションはあった。が、一部通路が屋根付きながら壁なしのため、冬は冷たい外気にさらされた。

 その点、「ライオンズタワー札幌」と「ONE札幌ステーションタワー」は、2つとも屋内を通って地下街に行くことができる「地下街完全直結」タイプとなる。

 それなら、冬も革底の靴やハイヒールを履き、薄着の生活も可能。冬の札幌で、夢のような暮らしを実現するマンションなのだ。

全国的にみても、希少な地下街完全直結マンション

 札幌の中心部では1972年札幌五輪をきっかけに地下通路・地下街の建設が進み、現在は全国でも有数の地下空間ができあがっている。

 地下通路の長さでは、東京駅、新宿駅に次ぐ全国第3位とされ、札幌駅北側から地下鉄大通駅を経て、すすきの駅までの約1900mは、日本で最も直線距離が長い地下通路ともされている。

広大な面積を持つ札幌の地下街。厳寒の冬も快適に過ごすことができる空間だ。筆者撮影
広大な面積を持つ札幌の地下街。厳寒の冬も快適に過ごすことができる空間だ。筆者撮影

 広大な地下通路には、多くのショップや銀行が軒を連ねる地下街部分が多く、三越やPARCOへの入り口もある。

 近年、札幌の中心部では、道路の融雪が行われ、冬でも雪のない歩道が増えた。それでも、横断歩道を渡るときは足を滑らせやすく、転倒による骨折事故も少なくない。そして、地上を歩けばマイナス10度を超える厳しい寒さもある。

 そのことを考えれば、地下のほうがはるかに安全だし、生活しやすい。北海道において「地下街完全直結」マンションの魅力はとてつもなく大きいわけだ。

 じつは、地下通路に直結するマンションは全国的にみても珍しい。

 私の記憶では、東京で地下鉄東池袋駅と直結する「ブリリアタワー池袋」や月島駅と直結する「キャピタルゲートプレイス ザ・タワー」、横浜高速鉄道みなとみらい線馬車道駅と直結する「ザ・タワー横浜北仲」(いずれも、過去に分譲された物件)などが思い当たる程度。ただし、それらは地下鉄の通路につながっているが、巨大な地下街につながっているわけではない。

 東京駅周辺の地下街と直結したマンションや、新宿駅周辺の地下街に直結したマンションは思い当たらないのだ。これに対し、札幌では「地下街完全直結」マンションが2つ誕生する。

 北海道内外から注目されるのは、当然といえる。

1つは、狸小路に面して建設される超高層

 「地下街完全直結」マンションは、2つとも注目度抜群の場所に建設されている。

 1つは、「ライオンズタワー札幌」。その建設地は、狸小路に面した場所……札幌の繁華街で、その中心エリアに建設されるため、東京でいえば、銀座4丁目の交差点に面して建つマンションのようなものである。

 下層部は商業施設となり、北海道では数少ない水族館も設けられるなど、便利さ、華やかさで注目を集めるマンションだ。

商業施設、公共施設との複合開発で誕生する「ライオンズタワー札幌」の完成予想模型。筆者撮影
商業施設、公共施設との複合開発で誕生する「ライオンズタワー札幌」の完成予想模型。筆者撮影

 その第1期販売は年明け2月から行われる見通しで、取材時点では価格未定。極めつきの立地であるために相応の価格になることが予想され、最高額住戸は3億3000万円になるのでは、という報道も出ている。

48階建て超高層には、新幹線が札幌に来る楽しみも

 もう1つの「地下街完全直結」のマンションが、「ONE札幌ステーションタワー」で、建設地は札幌駅の北口側。北海道大学がある側で、近年開発が進み、超高層、高層の建物が並ぶ場所である。東京でいえば、新宿駅の西口側と似た風情がある。この新しい街区に、地上48階建ての超高層マンションとして建設されるものだ。

 地上48階建ては北海道で最高層となり、地上約175メートル、全624戸も北海道で1位。階数、高さ、戸数規模ともに北海道でナンバー1であるため、マンション名に「ONE」の名前が付いている。

「ONE札幌ステーションタワー」の販売センターには、巨大な完成予想模型も提示されている。筆者撮影
「ONE札幌ステーションタワー」の販売センターには、巨大な完成予想模型も提示されている。筆者撮影

 スケールの大きなマンションであることを示すように、来客の宿泊に利用できるゲストルームが6つもあり、パーティルーム、ラウンジなど共用施設が充実する。

 さらに、「ONE札幌ステーションタワー」では、札幌駅に近いという利点がある。この利点は、将来、北海道新幹線が札幌まで延伸したとき、さらに高まると予想される。実際、新幹線ホームが計画されている場所は同マンションの建設地に近く、地下通路で行き来できそうなのである。

2億3000万円住戸は、11倍の抽選に

 「ONE札幌ステーションタワー」の住戸は、平均で75平米という広さがあり、11月末から販売開始された第1期で最も高額な住戸は5億円(約228平米)だった。

 やはり高額だが、第1期244戸のうち212戸が2週間ほどで契約済みに。なかでも2億3000万円の住戸は11倍の抽選となった。

 第1期販売住戸契約者のうち、およそ3割が道外在住者だ。

 東京や大阪に住んでいる人が札幌市内のマンションを買う理由は何か。複数の購入者に聞いたところ、「仕事やレジャーで頻繁に北海道に行く」ことから、移住やセカンドハウス購入を決めたという人が多かった。突然思い立っての移住ではなく、北海道の暮らしを知ったうえでの移住やセカンドハウス購入。だからこそ、便利な超高層マンションを選んだわけだ。

 なかには、「近年、東京の夏が暑すぎるので、夏を快適に暮らせる北海道で、冬も不自由のないマンションを選んだ」という声もあった。

 もちろん、「今買っておけば、新幹線延伸後に値上がりしそうな楽しみもある」という本音も。それは、道外から札幌の便利な超高層マンションを購入する人たちが誰しも持っている夢のようなものだろう。

 値上がり期待も重なって、札幌のマンション人気は熱を帯びている。その動きに合わせ、不動産会社のなかには、北海道で快適に住まうための知識をまとめた情報サイトを立ち上げたところもある。

 2022年、札幌の便利な超高層マンションはますます注目度を高めそうだ。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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