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自然豊かな北海道で、タワマン建設ゾーンが「本当に住みやすい街」になっている理由

櫻井幸雄住宅評論家
再開発で超高層マンションの建設が始まった新さっぽろ駅周辺。筆者撮影

 6月30日、住宅ローン専門金融機関「ARUHI」が主催する「本当に住みやすい街大賞2021 in 北海道」が発表された。

 北海道内の「本当に住みやすい街」で、10位までに入った街(駅で表示)は、以下のとおりだ。

1位:新さっぽろ(札幌市営地下鉄東西線)

2位:西28丁目(JR札幌市営地下鉄東西線)

3位:北広島(JR千歳線)

4位:新琴似(JR札沼線)

5位:真駒内(札幌市営地下鉄南北線)

6位:手稲(JR函館本線)

7位:千歳(JR千歳本線)

8位:帯広(JR根室本線)

9位:バスセンター前(札幌市営地下鉄東西線)

10位:苫小牧(JR室蘭本線)

 北海道の住宅地で、最も人気が高いのは大都市である札幌市内の街。今回も、北海道で本当に住みやすい街の1位から10位までのうち、1位新さっぽろ、2位西28丁目、4位新琴似、5位真駒内、6位手稲、9位バスセンター前の6地点が札幌市内だった。

 その札幌市内で全国的に知名度が高い街といえば、円山(まるやま)や大通(おおどおり)、そして札幌駅周辺がある。しかし、今回のランキングには、円山も大通も札幌駅周辺も入らなかった。また、北海道らしい、雄大な平原が広がる場所の地名も見当たらない。

 大賞となった新さっぽろ駅を代表に、再開発で生まれ変わる街、そしてタワマンと呼ばれることが増えた超高層マンションが建つ街が多くランクイン……それが、「本当に住みやすい街大賞 in 北海道」の特徴となった。

 第1位新さっぽろとは、どんな街なのか。そして、北海道で超高層マンションの街が評価を高める理由について、同賞の審査委員長を務めさせていただいている私から説明したい。

上位に入るのは、多くの人が住むことができる街

 「本当に住みやすい街大賞」は、2018年から始まった表彰で、その特徴は人気やイメージだけで街を選ぶのではなく、実際に家を新築したり、マイホームを購入した人が多い場所で、長く住み続けたい要素を備える街を選ぶこと。そのために、「ARUHI」の住宅ローン利用者データを活用し、直近1年間で、フラット35の利用者が多い街を選ぶことから街のノミネートが始まる。

 マイホームを新築した人、購入した人が多い街を、まず候補地とするわけだ。

 住宅ローン利用者の多い街が候補となるため、新築住宅の価格が非常に高い場所や、分譲件数が少ない場所は、上位に入りにくい。

 北海道で住宅価格が高い場所と言えば、北海道神宮に近い円山(なかでも、裏参道エリア)や大通駅周辺がある。JRの札幌駅周辺も近年住宅価格が上昇している場所だ。

 それら住宅価格が高い場所では、マイホームを購入できる人は限られる。当然、住宅ローン利用者も減る。それが、円山エリアの隣接地・西28丁目がランクインしただけで、円山や大通り、札幌駅周辺がランク外になった理由である。

 その点、再開発が行われ、大規模マンション(その多くは超高層マンション)が建設された場所や、これから再開発が行われることが決まり、注目を高める場所は、住宅ローン利用者が増える。結果として、再開発の街は、「本当に住みやすい街」としてランクインしやすい状況が生まれるわけだ。

北海道で、多くの人が住みたいと考える街とは

 ここ数年、北海道では、再開発で誕生する超高層マンションが高い人気を集めている。それは、北海道ならではの特殊事情……いうまでもなく、冬の豪雪が関係している。

 北海道の夏は、非常に快適である。

 一方で、苦難を強いられるのが冬。寒さが厳しいだけでなく、一戸建ての場合、屋根の雪下ろしや道路の雪かきをしなければならない。これは、重労働であるし、危険な作業でもある。

 雪かき以外でも、買い物や通院で、雪の中を歩かなければならない大変さもある。

 その点、マンションに暮らせば、屋根の雪下ろしから解放される。道路の雪かきは管理スタッフが行ってくれるし、再開発エリア内であればロードヒーティングが施されているところが多く、そもそも雪が積もりにくい。

 駅周辺再開発エリアのマンションならば、駅や買い物施設までの道が屋根付きのペディストリアンデッキになっていることが多い。その場合、駅にゆくときも、買い物にゆくときも、そして買い物施設内にあるクリニックにゆくときも雪に悩まされない。スニーカーや革底の靴で出かけることも可能だ。

北海道では再開発で超高層マンションの建設が進む駅が人気だ。写真は札幌駅も隣駅となる苗穂駅周辺の再開発で誕生する駅直結の再開発・大規模超高層マンション。筆者撮影
北海道では再開発で超高層マンションの建設が進む駅が人気だ。写真は札幌駅も隣駅となる苗穂駅周辺の再開発で誕生する駅直結の再開発・大規模超高層マンション。筆者撮影

 それは、冬の北海道において、夢のような出来事となる。だから、駅や商業施設と屋根付き通路で直結した超高層マンションはどこでも人気を高めている。

最新の「再開発タウン」が新さっぽろ

 「本当に住みやすい街大賞2021 in 北海道」で大賞となった新さっぽろ駅周辺では、今まさに、再開発マンションが販売されている。地上30階建て全220戸の大規模超高層となる「プレミストタワー新さっぽろ」だ。

 同マンションは再開発で誕生する新しい商業施設とホテル、医療施設などと屋根付き・ガラス張りのペディストリアンデッキで直結しており、地下鉄の新さっぽろ駅、JRの新札幌駅とも直結。北海道の冬を快適に安全に暮らす条件がそろっている。

「プレミストタワー新さっぽろ」の販売センターで公開されているモデルルーム。北海道なので、断熱性を高めた二重サッシを採用。超高層ならではの眺めのよさを満喫できる。筆者撮影
「プレミストタワー新さっぽろ」の販売センターで公開されているモデルルーム。北海道なので、断熱性を高めた二重サッシを採用。超高層ならではの眺めのよさを満喫できる。筆者撮影

 さらに、JRと地下鉄の両方を使えるため、大雪でJRの運行が乱れたときも、地下鉄で札幌の中心エリアに出かけることができる。そして、JRのホームは外気にさらされるが、地下鉄ホームは雪とも寒気とも無縁だ。地下鉄を利用できることに魅力を感じる道民も多い。

 じつは、北海道において、地下鉄とJRの両方を使えるのは札幌駅(さっぽろ駅)と新札幌駅(新さっぽろ駅)だけだ。

 この便利さが人気を呼び、「プレミストタワー新さっぽろ」は6月に行われた第1期1次販売において、販売された118戸がほぼ完売(6月30日時点で先着順販売となっているのが2戸のみ)する人気となった。

 3LDKの多くが5000万円台となる価格水準なので、価格の安さで人気になったわけではない。

 それどころか、札幌の周辺エリアとしては、むしろ高額といえる。それでも、驚くべき人気になっているところに、北海道における駅周辺再開発マンションの注目度の高さが現れている。

駅直結の再開発超高層マンションはシニアにも人気

 駅直結の再開発超高層マンションが分譲されると、50歳以上の購入者が多いのも北海道の特徴。購入者の半数が50歳以上になることも珍しくない。

 50歳以上は、それまで住んでいた一戸建てを残したまま、再開発の超高層マンションを購入。買い替えではなく、買い足しをするわけだ。

 それは、駅に近い超高層マンションであれば、中古になっても値下がりしにくく、子供に遺しても喜ばれることが分かっているから。貯金を崩し、新たにローンを組んでも損はない、と考えている。

 なにより、冬の間も快適に暮らせることの魅力が大きいという。

 大草原が広がる雄大な場所よりも、駅に近く屋根付き通路でつながる再開発の街、そして駅直結の再開発超高層マンションが大人気……それが、過酷な冬を乗り越えなければならない北海道の現実なのである。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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