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リニア期待で東京在住者も注目 名古屋のマンションがコロナ禍でも最高17倍抽選の人気に

櫻井幸雄住宅評論家
高層ビルが立ち並ぶ名古屋駅。その徒歩圏で、複合開発のマンションが人気だ。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 10月中旬、名古屋市内で、注目すべきマンションの第1期販売が行われた。

 10月10日から17日まで第1期200戸の登録申し込みを実施。434件の申し込みが入ったため、18日に抽選が行われた「ザ・パークハウス名古屋」である。

 申し込みが入らなかった住戸もあるので、「第1期即日完売」とはいえないのだが、11月13日の時点でほぼすべての住戸に申し込みが入っていたので、短期間に全戸完売といってよいだろう。

 建物が完成しても販売を続けるマンションが多い名古屋市内で、200戸もの住戸が一度に売れてしまった……これは、名古屋市内はもちろん全国の不動産業界から注目される出来事となった。

名古屋駅徒歩圏の複合開発マンション

 「ザ・パークハウス名古屋」は全462戸の大規模マンションで、今年2月に物件ホームページが開設されたときは資料請求が殺到。名古屋で今年1番の人気マンションになる、と当初から不動産業界の注目度は高かった。

 が、3月以降、コロナ禍による外出自粛、緊急事態宣言によって販売活動は控えられ、いわゆる「販売センター」であるマンションギャラリーがオープンしたのは7月に入ってからだ。

 そして、10月、11月に第1期200戸が完売した。

 それほどの人気となったのは、リニア中央新幹線の期待が高まる名古屋駅から徒歩圏(徒歩12分で、出入り口によっては徒歩9分)に位置し、大規模複合開発で赤レンガの建物が残るノリタケの森に近接、新しいイオンモールに直結する計画であることが大きい。

大規模複合開発で誕生する「ザ・パークハウス名古屋」。写真の奥に同マンションが位置する。中央がイオンモール。事業主は、三菱地所レジデンス、三菱商事都市開発、野村不動産。写真は、三菱地所レジデンス提供
大規模複合開発で誕生する「ザ・パークハウス名古屋」。写真の奥に同マンションが位置する。中央がイオンモール。事業主は、三菱地所レジデンス、三菱商事都市開発、野村不動産。写真は、三菱地所レジデンス提供

 名古屋駅に近く、身近に緑が豊富で買い物便利なのだから、「住んでみたい」と思う人が増えて不思議はない。

 コロナ禍でも、同マンションの魅力は色あせなかったわけだ。

最高17倍の抽選になった住戸は

 「ザ・パークハウス名古屋」の第1期販売住戸は、約61平米から93平米の2LDK〜4LDKで、価格は4198万円から1億3500万円だった。

 そのなかに「最高17倍」という名古屋では滅多に聞かない倍率での抽選になった住戸があった。それは、どんな住戸だったのか。

 値段の高い大型住戸を連想しがちだが、じつは一番人気の住戸は「60平米台のコンパクトな2LDK」だった。

 最高倍率の住戸に限らず、「ザ・パークハウス名古屋」の第1期販売では、60平米台、70平米台の比較的控えめなサイズの2LDK、3LDKが人気を集めた。

 首都圏では、ウィズコロナで、ゆとりある広さの3LDKの人気が高まる傾向がある。が、名古屋駅徒歩圏の大規模複合開発となると、「ゆったり広さ」の住戸は価格も“大型化”するので、購入できる人は限られるのだろう。

 加えて、名古屋駅徒歩圏となると、投資目的やセカンドハウス目的の購入者が増える。投資やセカンドハウスでは、コンパクトな2LDK、3LDKの人気が高まる傾向がある。大型住戸より抑えた価格で購入でき、将来売却することも、賃貸に出すこともしやすいからだ。

 参考までに、今回「ザ・パークハウス名古屋」の購入申し込みを行った人の大半は愛知県の在住者。68.4%が愛知県内在住で、名古屋市内在住者は50.4%だった。

 一方で、東京都在住者も12.6%いた。

 コロナ禍の影響か、今の時期、福岡や札幌といった地方都市では「東京からの購入者はほとんど来ない」という声が聞かれる。

 しかし、「ザ・パークハウス名古屋」は、例外的に東京在住者の関心が高いマンションということになる。

 リニア中央新幹線が開通したときのことを見越し、東京在住者も投資やセカンドハウスの目的で、名古屋駅に近いマンションに熱い視線を注いでいるのだろう。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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