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五輪後に生まれる「第2の表参道」はどこ? 最有力候補は「新虎通り」か

櫻井幸雄住宅評論家
表参道は、前回東京五輪まで住宅エリアだった。表参道ヒルズに残る同潤会青山アパート(写真:アフロ)

 残り1年を切った東京五輪。ラグビーW杯でこれだけ盛り上がったので、五輪ではどんなことが起こるのか今から楽しみだ。

 その五輪は、東京の街に変化を及ぼすことが考えられる。というのも、前回、1964年の第18回東京五輪をきっかけに、東京の街にはいくつかの変化が生じたからだ。

 たとえば、「大人が楽しめる夜のプレイスポットをつくろう」と白羽の矢が立てられたのが、港区の赤坂。それまで、黒塀の料亭が集まり、しっとりとした風情があった(半面薄暗かった)赤坂にディスコやクラブがつくられ、現在のような華やかな場所に変わった。

 もうひとつ大きくムードを変えた場所が、「表参道」だ。1964年まで、原宿から地下鉄銀座線の表参道駅に通じる参道は、地元の人が犬の散歩に出かけるような場所だった。その歴史を伝えるように、参道から一歩奥に入れば、今も一戸建てが集まる神宮前アドレスの住宅地だ。そして、表参道に面して昭和初期に建てられた旧・同潤会青山アパート(現・表参道ヒルズ)もあった。

 表参道が銀座や日本橋のように賑やかな場所だったら、大通りに面してマンションなど建設されなかったろう。静かな参道だったので、ケヤキ並木がつくる日陰にマンションが建設された。

表参道が賑わいだしたのは、前回東京五輪の後

 表参道が、世界的に有名なファッションストリートになったのは、1964年の東京五輪がきっかけだ。山手線原宿駅近くに国立代々木競技場がつくられ、競技場から地下鉄銀座線表参道駅に向かうルートになって人通りが増えた。五輪が開かれた翌年の1965年、表参道の原宿側の入り口部分に高級マンションの「コープオリンピア」が完成し、その下層部にスケールの大きな中華料理店が開業して文化人や芸能人を集めるようになった。

 明治通りとの交差点近くにセレクトショップの「クルーズ」(若い方はご存じないだろうが、カリスマ的存在だった)や、原宿セントラルアパート(現在、東急プラザ表参道原宿が建っている場所にあった)の「ゴローズ」など人気ショップが次々に誕生。表参道は大きく変身してゆくことになる。

シャンゼリゼのようにテラスが並ぶ新虎通り

 今回、2020年東京五輪をきっかけに、第2の表参道になりそうな場所はないか。私は五輪招致が決まった2013年から気になっており、15年に出演したラジオ番組では、選手村が設置される晴海エリアかもしれない、と発言したこともある。しかし、五輪までに残り1年を切った今、第2の表参道となりうる最有力候補がみつかった。

 それが、「新虎通り」だ。

 シントラという和のムード漂う名称の通りは新たに建設されている環状2号線の一部で、港区の虎ノ門から新橋駅近くまで約1.4キロメートルの部分が該当する。この環状2号線は、東京五輪開催時に晴海の選手村から都心の中心エリアまで先進の交通機関「BRT」が試験運用され、選手、スタッフを運ぶルートとなる。いわば、2020年東京五輪で脚光を浴びる“メインストリート”である。

 「BRT」は五輪の後、本格的に運行される。そして、新虎通りの沿道にはオフィスビルやマンションが並び、建物低層部には多数の店舗が設けられることになっている。幅広の歩道に面したテラス席もつくられて、パリのシャンゼリゼ通りのような場所になる計画である。

 東京五輪で注目を集め、その後、店が増えて、全国、全世界から人が集まる……新虎通りは、表参道のように注目スポットに成長する可能性が大なのである。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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