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駅徒歩10分以上の「大規模マンション」、ファミリー世帯に喜ばれる理由

櫻井幸雄住宅評論家
居住者専用の広い中庭があるのも、大規模マンションの魅力。千葉市内で、筆者撮影

 「リビオシティ・ルネ葛西」「TOKYOキラリスナPROJECT」、「幕張ベイパーク クロスタワー&レジデンス」……いずれも、昨年から今年にかけての人気マンションだ(リビオシティ・ルネ葛西はすでに完売)。

 それらの共通点は、「戸数の多い大規模マンション」であること。そして、「駅に近いマンションではない」ことも共通点となる。

 今は駅近マンションの人気が高く、価格が高騰。一方で、あまりに駅近マンションの人気が高いため、駅から離れた場所のマンションは価格が抑えられているという現象も生まれている。

 その駅遠・割安なマンションは、すべて不人気というわけではない。たとえ駅から離れていても、大規模マンションだけは以前からの人気が今も落ちない。そのため、「欲しかった大規模マンションが、今なら安く購入できる」という状況が生まれているのだ。

大規模マンションの目安は、総戸数200戸以上

 不動産業界では、以前から総戸数が200戸を超えるマンションを「大規模」と呼んでいる。総戸数が200戸以上であれば、共用施設や共用サービスを充実させやすいからだ。これは、全体として毎月どれくらいの管理費用を使えるのかを考えれば分かりやすい。

 仮に1戸あたり毎月1万円の管理費を集めたとき、総戸数50戸のマンションでは総額50万円。50万円では、エレベーターやオートロック、共用部の照明費用、最低限の掃除や植栽の手入れ費用などをまかなうと、残りが少ない。だから、管理員を常駐させることがむずかしく、「平日の昼間3時間だけ」「平日昼間、1日おきで常駐」ということになりやすい。

 総戸数が100戸であれば、全体で毎月100万円の管理費用が集まるので、管理員を常駐させやすい。管理サービスのレベルが上がるわけだ。そして、200戸になると、全体で毎月200万円の管理費用が集まるので、清掃や管理員業務に加えて、コンシェルジュを常駐させたり、いくつもの共用施設を維持できるといったスケールメリットが生まれる。

 広い敷地を活用して、住人専用のコンビニや保育施設を設置できるのも、大規模マンションならでは。それで、総戸数200戸以上のマンションを「大規模」と呼んで区別しているわけだ。

予定価格は、3LDKが2900万円台から

 首都圏で、最新の大規模マンションを探すと、神奈川県大和市つきみ野の「グランアリーナレジデンス」がある。その総戸数は604戸。大規模の基準「200戸」の3倍なので、文句なしの大規模マンションである。

グランアリーナレジデンスは、住人専用の中庭と全戸分の平置・自走式駐車場を備える大規模マンションだ。販売センターにて全体完成模型を筆者撮影
グランアリーナレジデンスは、住人専用の中庭と全戸分の平置・自走式駐車場を備える大規模マンションだ。販売センターにて全体完成模型を筆者撮影

 そのスケールメリットで、2つのゲストルームや読書と飲み物を楽しめるブックラウンジ、電動工具もそろえられたDIYベース、パーティラウンジといった共用施設が充実。「niko and…」とコラボレーションした広いグランドラウンジも設けられる。

 さらに、マンションの敷地内に全戸分の駐車スペースも確保される。その駐車スペースはすべて平置きと自走式で、機械式駐車場はない。維持費用が少なくて済む平置・自走式のため、月々の駐車場使用料は抑えられて月額500円から6000円の予定だ。

 同マンションは、商業施設、医療施設、保育施設とともに開発される複合開発地内の大規模マンションとなり、マンションの隣接地にはイオン系のスーパーマーケットが今年10月に開業予定。3つのクリニックと調剤薬局が入る医療施設もつくられる。さらに、マンション内に保育施設もつくられる予定……まさに、スマホのように何でもできてしまうマンションになるわけだ。

 それでいて、分譲予定価格は抑えられている。3LDK、4LDKが2900万円台から5500万円台の予定。平均専有面積が約73平米で、住戸内にディスポーザー(生ゴミ粉砕処理機)と食器洗い乾燥機が標準設置されるなど、設備仕様のレベルも高い。

 予定価格が抑えられているのは、「東急田園都市線つきみ野駅から徒歩12分」であるからだろう。もし、同マンションがつきみ野駅徒歩3分以内であったら、1000万円は高くなるのではないだろうか。

居住者専用のシャトルバスも運行される

 「グランアリーナレジデンス」は駅から徒歩12分だから、駅近とはいえない。そして、つきみ野駅には急行や準急が停まらない。急行と準急(朝の通勤時間帯は準急が最速)を利用できる東急田園都市線中央林間駅へは徒歩19分となる。

 この短所を解消するため、「グランアリーナレジデンス」では、マンション居住者専用のシャトルバスが用意される。これも、大規模だからこそ実現する工夫だ。

 シャトルバスはマンションのメインエントランスから出発し、中央林間駅まで朝の時間帯で「9分」の所要時間となる計画。加えて、シャトルバスはマンションの管理費で運行され、乗車時に運賃を支払う必要はない。マンション居住者専用のシャトルバスには、1回50円とか100円の利用料を払うケースもあるが、ここではその煩わしさがない。

 家族全員で通勤や通学に使えば、お得感が大きい。さらに、企業によっては管理費のうちシャトルバス分を通勤定期代として計上できるケースもある。そうなると、さらにお得感が高まるだろう。

 大規模マンションは、駅近でなくても魅力が大きく、人気物件になるケースが多い。マンション選びで覚えておきたいポイントである。

住宅評論家

年間200物件以上の物件取材を行い、全国の住宅事情に精通。正確な市況分析、わかりやすい解説で定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞に連載コラムを持ち、テレビ出演も多い。著書多数。

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