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おこげやレモン、新生姜…立ち食いそば大手4社の夏メニューが勢ぞろい。暑気払いにピッタリの一杯は?

坂崎仁紀大衆そば研究家・出版執筆編集人・コラムニスト
「しぶそば」の夏メニュー「温かい肉そばおこげ1枚付き」(筆者撮影)

 6月に入りうっとうしい梅雨の天気が続いている。ちょうどこの時期、立ち食いそば大手チェーンでは夏を乗り切るメニューを発表している。今年は各社どんなメニューを展開しているのか「しぶそば」「名代箱根そば」「名代富士そば」「ゆで太郎」の大手4社を調べてみた。

 今年の夏メニューのキーワードとしては、「レモン」、「新生姜」、「肉」などの充実ぶりが目立つ。「おこげ」など斬新な具材も登場した。一方、定番の「冷」、「辛味」、「茄子」なども健在だ。どんなメニューが考案されているのか解説していくことにしよう。

「しぶそば」は人気の「肉そば」を温か冷で提供開始

 東急沿線などで展開している「しぶそば」は6月に入り「肉そば」を新発売した。「しぶそば」を運営する株式会社東急グルメフロントの営業部の林直己さんに話を聞くと、これまでの肉メニューは豚バラ肉のみを使用していたが、今年は肉の歯ごたえや味の違いを楽しんでいただくためにバラ肉に加えてウデ肉も合わせて、店舗で煮込んでいるという。ボリューミーな薄切り豚肉と多めのネギがつゆとよくマッチするとのことである。冷と温の2つがあるとのこと。さっそく「しぶそば池上店」で「冷し肉そば」(550円)を実食してみた。

「しぶそば池上店」(筆者撮影)
「しぶそば池上店」(筆者撮影)

入口に「肉そば」のポップを発見(筆者撮影)
入口に「肉そば」のポップを発見(筆者撮影)

 お洒落な平皿によく冷えたそばと水でよくさらした白髪ネギ、そしてバラ肉やウデ肉がどっさりのって登場した。つゆは「しぶそば」独特の関西系に近い透き通ったスッキリした上品なタイプで、冷しでも十分パンチがある。そばはかなり冷たく締められていてコシも抜群。薄切りされた豚肉は下味のついたつゆで煮込んで温められていている。これはなかなかよいアイデアである。

「冷し肉そば」(550円)は涼し気な雰囲気(筆者撮影)
「冷し肉そば」(550円)は涼し気な雰囲気(筆者撮影)

 「温かい肉そば」はおこげ1枚付きでも提供されている。「しぶそば大井町店」で「温かい肉そばおこげ1枚付き」(600円)を食べてみた。「しぶそば」はこの上品なかけつゆが特徴的だ。しみじみうまい。白髪ネギと斜め切りのネギが入ってバラ肉やウデ肉もたっぷり。途中でおこげをかじるとアラレの様な雰囲気である。おこげをそば屋で目撃したのは初めてだ。「肉そば」はこの夏は発売を続けるということで何度か食べたいメニューである。

「温かい肉そばおこげ1枚付き」おこげはほぐれるとあられのようである(筆者撮影)
「温かい肉そばおこげ1枚付き」おこげはほぐれるとあられのようである(筆者撮影)

しぶそば

https://www.shibusoba.com/

株式会社東急グルメフロントが経営。主に東急線沿線に店舗を構えるファストそばチェーン。14店舗+系列1店舗を運営。エキナカだけでなく駅ビル内(池上店)、地下街フードコート(池袋店)などにも出店中。

(2022年6月17日時点のHPデータを参考に作成)

名代箱根そばは岩下の新生姜を使ったかき揚げと豆腐一丁そば

 主に小田急線沿線に店舗展開している「名代箱根そば」も6月に入り夏メニューの第一弾として「新生姜のミニかき揚げ天といか天そば」、「揚げ茄子煮びたしの冷しキーマカレーそば」に注力してきた。いずれも590円。「名代箱根そば新橋店」でさっそく「新生姜のミニかき揚げ天といか天そば」を食べてみた。

ニュー新橋ビル1階にある「名代箱根そば新橋店」(筆者撮影)
ニュー新橋ビル1階にある「名代箱根そば新橋店」(筆者撮影)

 「名代箱根そば」の冷しのつゆは出汁や返しの味がしっかりと染みわたるタイプで、つゆもそばも十分に冷されている。そこに岩下の新生姜のミニかき揚げとイカ天、大根おろしがのる。ミニかき揚げをかじると新生姜の梅酢の味がほんのりと香る。夏にはぴったりの商品だ。

「新生姜のミニかき揚げ天といか天そば」(筆者撮影)
「新生姜のミニかき揚げ天といか天そば」(筆者撮影)

ミニかき揚げをかじると新生姜の梅酢の味がほんのりと香る(筆者撮影)
ミニかき揚げをかじると新生姜の梅酢の味がほんのりと香る(筆者撮影)

 また、「揚げ茄子煮びたしの冷しキーマカレーそば」は冷たいキーマカレーがのるという斬新なタイプ。このキーマカレーにわさびを溶いて食べると、これが異次元の世界に誘ってくれる。茄子ときゅうりがキーマカレーとよくマッチしていて、食感も楽しい。これもこの夏何度か食べておきたいメニューだ。

「揚げ茄子煮びたしの冷しキーマカレーそば」は斬新だ(筆者撮影)
「揚げ茄子煮びたしの冷しキーマカレーそば」は斬新だ(筆者撮影)

 なお、「名代箱根そば」の夏を代表するメニューといえば「豆腐一丁そば」だが、こちらは7月20日頃には発売予定とか(箱根そば本陣では未発売)。

 6月7日には「箱根そば本陣新宿御苑店」が本陣2号店としてオープンした。平日の夜は立ち飲み感覚でから揚げとハイボールのセット「ハイカラ」などがいただける。おつまみも豊富でそばで〆ることももちろんできる。

6月7日には「箱根そば本陣新宿御苑店」がオープン(筆者撮影)
6月7日には「箱根そば本陣新宿御苑店」がオープン(筆者撮影)

名代箱根そば

https://www.odakyu-restaurant.jp/shop/hakonesoba/hakonesoba/

株式会社小田急レストランシステムが経営。主に小田急線沿線に店舗展開している立ち食いそばチェーン。名代箱根そば46店舗、箱根そば本陣2店舗。最近は小田急線以外の地域にも出店中(田町店、秋葉原店など)。

(2022年6月17日時点のHPデータを参考に作成)

「名代富士そば」は7月からドドーンと山盛りッそば2倍

 立ち食いそばの大手チェーン店「名代富士そば」では、近年、各店主の判断で新商品を発売していいシステムをとっており、いろいろな新メニューが乱立している状態だ。しかし、7月に全店舗で発売する夏メニューがあるという。それは「2玉もり・天ぷら付き」(650円)である。

7月に全店舗で発売する夏メニュー「2玉もり・天ぷら付き」(650円)(名代富士そば工藤寛顕氏より提供)
7月に全店舗で発売する夏メニュー「2玉もり・天ぷら付き」(650円)(名代富士そば工藤寛顕氏より提供)

 また、8月には徳島県の農林水産部との企画で「すだちおろしそば」を全店舗で販売予定とか。今年は一味違った夏メニューが展開されそうだ。

 一方、「名代富士そば北千住東口店」では7月限定で、映画『マーベラス』コラボ商品「MARVELOUSそば」(580円)を発売予定だという。また、「名代富士そば下北沢店」では「スーパーレモンチキンそば」を準備中らしい(下記写真はまだイメージとのこと)。いずれもレモンを食材に使っている。登場が楽しみである。

「名代富士そば北千住東口店」で発売予定の映画『マーベラス』コラボ商品「MARVELOUSそば」(580円)(名代富士そば工藤寛顕氏より提供)
「名代富士そば北千住東口店」で発売予定の映画『マーベラス』コラボ商品「MARVELOUSそば」(580円)(名代富士そば工藤寛顕氏より提供)

「名代富士そば下北沢店」の「スーパーレモンチキンそば」も楽しみだ(名代富士そば工藤寛顕氏より提供)(なお写真はイメージとのことです)
「名代富士そば下北沢店」の「スーパーレモンチキンそば」も楽しみだ(名代富士そば工藤寛顕氏より提供)(なお写真はイメージとのことです)

名代富士そば

https://fujisoba.co.jp/

ダイタンホールディングス株式会社が経営する大手立ち食いそばチェーン店。東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県などを中心に合計116店舗を運営中。

(名代富士そば工藤寛顕氏よりデータ提供、2022年6月20日)

ゆで太郎(直営店)では「冷辛味鶏おろしそば」がイチオシ

 信越食品株式会社(直営店)と株式会社ゆで太郎システム(FC店)が展開する大手立ち食いそばチェーン店「ゆで太郎」でも、夏そばのキャンペーンが開始されている。

 「ゆで太郎(直営店)」ではやはり6月から夏そば祭りとして、「冷がけ薬味どうふ」「冷がけ肉おろし」「冷辛味鶏おろし」を発売中だ。

 「ゆで太郎(FC)」では6月から「冷し薬味そば」「冷しぶっかけなめこそば」「冷しかきあげそば」「天ざる中華」を発売中である。

ゆで太郎(直営店)の夏そば祭り(筆者撮影)
ゆで太郎(直営店)の夏そば祭り(筆者撮影)

 そこで「ゆで太郎新橋赤レンガ通り店」にうかがって「冷辛味鶏おろしそば」(590円)を食べてみることにした。

いつもお世話になっている「ゆで太郎新橋赤レンガ通り店」(筆者撮影)
いつもお世話になっている「ゆで太郎新橋赤レンガ通り店」(筆者撮影)

 「ゆで太郎」の冷しのつゆは、キリっと味がまとまっていてうまい。そばはよく冷されていてコシも強い。そして、具沢山で彩もよい。柔らかくヘルシーな蒸し鶏とコチュジャン、豆板醤、甜麵醬をベースにした旨辛ダレが冷しそばに絡んでなかなかうまい。この旨辛ダレは相当のレベルだ。定番のなす天とおろしで今年の夏を演出するというのも納得できる。

「冷辛味鶏おろしそば」(590円)(筆者撮影)
「冷辛味鶏おろしそば」(590円)(筆者撮影)

 「冷がけ薬味どうふ」(590円)は野沢菜わさび昆布、みょうが、かいわれ、豆腐、のりなどが沢山のった野趣あふれる一杯である。「冷がけ肉おろし」もたっぷりの大根おろしが入っていて食欲をそそる。

「冷がけ薬味どうふ」(590円)(筆者撮影)
「冷がけ薬味どうふ」(590円)(筆者撮影)

 「ゆで太郎(FC)」の「天ざる中華」も是非チャレンジしたいメニューである。

ゆで太郎

http://www.yudetarou.com/

https://yudetaro.jp/

信越食品株式会社(直営店)と株式会社ゆで太郎システム(FC店)が展開する大手立ち食いそばチェーン店。関東を中心に23都道府県で205店舗を運営。近年はもつ次郎併設店が急増中。

(2022年6月17日時点のHPデータを参考に作成)

各社の夏の新メニューで暑い夏を乗り越えよう

 大手各社の立ち食いそばチェーン店も恒例の味や新たな食材を使って、各社工夫して新メニューを開発していることがよくわかった。しかも、あまり似ている商品がないことが大変面白い。withコロナの3回目の夏を、新メニューで無事に乗り越えたいものである。

大衆そば研究家・出版執筆編集人・コラムニスト

1959年生。東京理科大学薬学部卒。中学の頃から立ち食いそばに目覚める。広告代理店時代や独立後も各地の大衆そばを実食。その誕生の歴史に興味を持ち調べるようになる。すると蕎麦製法の伝来や産業としての麺文化の発達、明治以降の対国家戦略の中で翻弄される蕎麦粉や小麦粉の動向など、大衆に寄り添う麺文化を知ることになる。現在は立ち食いそばを含む広義の大衆そばの記憶や文化を追う。また派生した麺文化についても鋭意研究中。著作「ちょっとそばでも」(廣済堂出版、2013)、「うまい!大衆そばの本」(スタンダーズ出版、2018)。「文春オンライン」連載中。心に残る大衆そばの味を記していきたい。

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