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今がタイミング?コロナ禍で家を買うなら、損しない住宅ローンの借り方

坂本綾子ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士
(写真:アフロ)

コロナ禍でも家を買いたい人は多い?

新型コロナの影響で生活が大きく変わったにもかかわらず、私が受ける家計相談の半分以上は住宅購入に関するものだ。幼い子どもがいる30代~40代前半の夫婦が多い。人生のちょうど家を買いたい時期を、コロナに直撃されてしまったけど、どうしても買いたいということだろう。

また、コロナでリモートワークが増えたことが、改めて住まいや暮らしを見直すきっかけとなり、住宅購入や住み替えを検討する人もいるようだ。住宅購入の意欲が活発なことを裏付けるかのように、コロナ禍でも地域によっては土地や不動産の価格は上がっている。

一方で、住宅ローン破綻の報道も増えている。まだ破綻まではいかないものの金融機関に返済猶予を求める相談件数も増え続けていて、住宅ローン破綻の予備軍は数万人にのぼると言われている。

コロナ禍で家を買うときの注意点は? 今、買うことにメリットはあるのか? を考えたい。

コロナ禍でも家を買いたいなら、注意したいことは?

まず、コロナ禍での住宅購入の注意点から。

収入の確保

住宅を買おうとしている人は、今回のコロナでは収入に影響がなかったからこその判断だろう。しかし今回は大丈夫でも、今後もずっと大丈夫とは限らない。

コロナの影響で住宅ローンの返済に困っている人も、購入時には予想していなかったはずだ。冷静になって、勤務先の状況や働いている業界、自分の仕事の能力、年齢などから今後の収入について予測しておきたい。

無理のない予算

次に重要なのが、収入に対して無理のない価格の住宅を購入することだ。これは意外と難しくて、相談に来る方の多くは、私が考える適正な予算をかなり超えているケースが多い。日々の暮らしを楽しみ、子どもの教育費を負担しながら、住宅も購入するなら、予算はこれくらいですねと示すと、「えー、そんなに低いの?」と驚かれることが多い。ご本人が考えていた金額は、適正な予算の1.2倍から1.5倍程度。中には2倍もする住宅の購入を希望する人もいる。

なぜこうなるのかというと、住宅ローンの借入可能額から考えるからだと思う。家を買うときはほとんどの人が住宅ローンを組む。不動産会社などで、いくらまでなら住宅ローンを借りられそうかの試算をする際は、税込み年収をもとに、金利の低い変動金利で、なおかつ35年などの長期返済で試算することが多いようだ。これだと、かなりの金額を借りられる計算になる。

しかし、実際には、お金の使い方はそれぞれの家庭ごとに違う。借入金利は、勤務先などの属性や頭金の比率によって違ってくる。ネットなどで目にする最低金利で借りられるとは限らない。返済も、65歳までなど現役のうちに終わらせるのが理想だ。コロナ禍でなくとも高すぎる住宅の購入は避けたい。

頭金は1割超が原則だが、入れすぎない

ここ数年、頭金なしでも住宅を買えるなどと言われている。しかし、住宅購入時には住宅価格に加えて諸費用が必要で、この諸費用は原則現金払いだ。諸費用まで含められる住宅ローンもあるが、通常、諸費用部分は金利が高くなる。諸費用部分は高めの金利を払って借りることになるのだ。また、頭金を1割以上入れられるかどうかで金利が違ってくる金融機関は多い。せっかくの低金利を活かすには、やはり頭金を1割超は入れたい。

ただし、入れすぎには注意。頭金をたくさん入れれば、その分、借入額が減り、毎月の返済額も減るので家計収支はラクになる。なおかつローンの支払利息も減らせる。頭金は多い方がいいというのが過去のセオリーだった。だが、先行きが見通せない時期には手元資金をある程度残しておきたい。しかも、今は低い金利で借りられるので、住宅ローン控除が使える物件なら実質ほぼ利子なしで借りられる状況になる人もいる(借入金額、金利、住宅の種類、所得額による)。

以上の3つが注意点だが、今買うことのメリットはどうだろうか。

低金利と住宅ローン控除の恩恵を活かす

超低金利がずっと続いている。銀行にお金を預けてもほとんど増えないが、借りる場合は、払う利子が少なくてすむのでお得だ。変動金利なら0.5%前後、固定金利でも1%台の前半で借りられる。金利の面では住宅ローンの借り時であることは間違いない。

住宅ローン控除が使える物件なら、年末ローン残高の1%の税金(納めている税金の範囲内)が戻ってくるので、実質の金利負担はほぼなしのケースもある。住宅ローン控除は10年間(消費税率10%で購入した新築住宅は13年間)受けられるので累計の節税額はかなりの金額になる。住宅ローン控除は新築、中古ともに対象となり、条件は、自宅の購入で床面積50平方メートル以上、中古なら木造で築20年以内など。

住宅ローン控除については、見直しが検討されている。1%未満の金利で借りている人は、1%の控除を受けることで、支払った金利以上の還付を受けている可能性があるため、これを是正するというものだ。次の税制改正で見直されるかもしれない。

住宅ローンには団体信用生命保険がついているから、家族がいる人にとっては、自分に万一の時も家族の住まいを確保できるという保険としてのメリットもある。

総合的に考えると、自分にとって、あるいは家族にとって、今が住宅を買うのに適した時期だと思うなら、予算に合う住宅で気に入った物件を見つけることができれば、悪い時期ではないだろう。コロナの収束にはまだしばらくかかりそうだから、ワクチン接種を含めた健康管理やお金の管理をしっかり行うことは、もちろん前提条件となる。

ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士

雑誌記者として22年間、金融機関等を取材して消費者向けの記事を執筆。その経験を活かしてファイナンシャルプランナー資格を取得。2010年より、金融機関に所属しない独立した立場で、執筆に加えて家計相談やセミナー講師も行う。情報の取捨選択が重要な時代に、それぞれの人が納得して適切な判断ができるよう、要点や背景を押さえた実用的な解説とアドバイスを目指している。

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