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外出自粛で若者のテレビ視聴時間が増えている

境治コピーライター/メディアコンサルタント
(写真:アフロ)

自粛生活でテレビ視聴時間急増

4月7日に緊急事態宣言が発令され、多くの人びとが外出自粛を余儀なくされている。当然、テレビ視聴時間が伸びているだろう。これについて、独自の手法でテレビ視聴を計測する調査会社スイッチ・メディア・ラボ社が興味深いデータを発表しているので紹介したい。(関東1都6県の個人視聴データ5,602サンプル)

まだ新型コロナが縁遠いニュースだった2月17日週から、緊急事態宣言が出た4月6日週までの間でテレビ視聴時間がどれくらい変化したかがこのグラフだ。(以下、グラフと表はスイッチ・メディア・ラボ社作成)

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当初は平日200分、土日221分だったのが4月6日週ではそれぞれ242分と271分に増えている。どう見ても在宅時間が増えたからだろう。

性年齢別でも見てみよう。Aは2月17日から3月1日までの2週間の平均、Bは3月30日から4月12日までの2週間の平均値だ。

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驚くのが、テレビ離れが言われて久しい若者層(M1,F1:20-34歳)のテレビ視聴が大幅に伸びていることだ。

M1とF1の数字だけを取り出してみよう。

M1

平日 A:122分→B:146分(1.19倍)

土日 A:147分→B:183分(1.24倍)

F1

平日 A:160分→B:189分(1.18倍)

土日 A:156分→B:204分(1.30倍)

絶対数は上の世代の方が大きいが、伸び率で言うと上の世代より大きいのが興味深い。コロナ禍は若者とテレビの関係を変えている。

M1F1を年齢でさらに細分化すると、より興味深い。

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20-24歳にフォーカスしてみよう。

男性

平日 A:75分→B:87分(1.17倍)

土日 A:74分→B:116分(1.58倍)

女性

平日 A:103分→B:160分(1.56倍)

土日 A:99分→B:176分(1.78倍)

30-34歳より分数はずっと少ないが、その分変化率も高い。まさに”急増”している。若年層ほどコロナ禍の影響は高いようだ。

若者が見るのはニュースより映画や音楽

テレビをよく見るようになったのは、日々変化するコロナ情報をニュースや情報番組を追うからだろう。そう考えたくなるが、ちょっと違うようだ。下の図は20-34歳のジャンル別の視聴時間の変化を直前の2週平均(2/17~3/1)を「1」とした場合の指数で示したものだ。男性女性2つのグラフを続けて見てもらおう。

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男性で伸びているのは映画(紫)そして音楽(ピンク)だ。女性も音楽が目立っている。埋もれているが、よく見るとニュース(青)も少しずつ伸びている。

コロナで存在価値が高まるテレビ

若者層はもちろん、テレビだけでなくYouTubeやNetflixなどを見ているだろう。だが在宅時間が増えてテレビを見る時間も増えている。意外に気軽なエンタテイメントとして音楽や映画も重要のようだ。そしてやはり、変化するコロナ情報の入手源としてのテレビもよく見るようになった。

番組作りは大変になっているが、テレビの存在価値は高まっている。放送に携わる皆さんはうまく作業分担もしながら、継続して放送できる体制作りに勤しんでもらいたい。

コピーライター/メディアコンサルタント

1962年福岡市生まれ。東京大学卒業後、広告会社I&Sに入社しコピーライターになり、93年からフリーランスとして活動。その後、映像制作会社ロボット、ビデオプロモーションに勤務したのち、2013年から再びフリーランスとなり、メディアコンサルタントとして活動中。有料マガジン「テレビとネットの横断業界誌 MediaBorder」発行。著書「拡張するテレビ-広告と動画とコンテンツビジネスの未来」宣伝会議社刊 「爆発的ヒットは”想い”から生まれる」大和書房刊 新著「嫌われモノの広告は再生するか」イーストプレス刊 TVメタデータを作成する株式会社エム・データ顧問研究員

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