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「おっさんずラブ」がツイッターでも「天気の子」を追撃中!勝負は次の週末か?

境治コピーライター/メディアコンサルタント
画像はデータセクション社のInsight Intelligence Q より

「劇場版おっさんずラブ」好スタートながら興行収入3位

昨年テレビ朝日系列で放送され、視聴率は高くはなかったがツイッターで沸騰し、最終回で世界トレンド1位を獲得したドラマ「おっさんずラブ」。ネット上でコミュニティが一気に膨らみ、映画化も発表された。その「劇場版おっさんずラブ LOVE or DEAD」が8月23日(金)に公開され、土日を含めた三日間で5億5400万円の興行収入を叩き出して好スタートを切った。ただ、ランキングでは3位で上には1位に「天気の子」、2位に「ライオン・キング」がいる。夏休みでファミリー向け作品が人気な上に、「天気の子」は「君の名は。」で空前のヒットを飛ばした新海誠監督の新作、「ライオン・キング」はディズニーがアニメ版で世界的ヒットを記録したタイトルの"超"実写版。メガヒットが見えていた2つの作品のすぐ後ろにつけたのだから、映画界に初めて躍り出たタイトルとしては大善戦と言っていいだろう。

「おっさんずラブ」は昨年ツイッターで驚くべき盛り上がりを示したが、「君の名は。」も3年前にやはりツイッターが信じられないほど沸騰した。その辺りは、拙著「爆発的ヒットは想いから生まれる」で詳しく分析したところだ。

そこでこの記事でも「おっさんずラブ」のツイッターを見ていきたい。今回も、ツイート数の分析にはデータセクション社のInsight Intelligence Qを使っている。

公開前に「あなたの番です」のツイート数を超えていた

まず「おっさんずラブ」の8月のツイート数をテレビドラマと比べてみよう。いま、ツイート数が多いのは何と言っても「あなたの番です」だ。そんな中に「おっさんずラブ」も早くから食い込んでいたが、8月5日〜11日のツイート数集計ではまだまだ「あな番」に遠く及ばなかった。

グラフ画像:データセクション社Insight Intelligence Q
グラフ画像:データセクション社Insight Intelligence Q

ただ、すでに「凪のお暇」より高い。放送してない段階で、放送中のけっこうツイッターで盛り上がっている「凪のお暇」を超えている時点で異常だ。

グラフ画像:データセクション社Insight Intelligence Q
グラフ画像:データセクション社Insight Intelligence Q

ところが翌週(8月12日〜18日)にはあっさり「あな番」のツイート数を抜き去った。1日平均ツイート数が5万というのは、なかなか見たことのない数値だ。公開を待ちきれないOL民(おっさんずラブファンの自称)がワクワクしているのがよくわかる。

グラフ画像:データセクション社Insight Intelligence Q
グラフ画像:データセクション社Insight Intelligence Q

そしてその翌週がこれだ。23日の公開日を中心にツイート数が大爆発しているのがわかるだろう。「あな番」を完全に突き放した格好だ。

ドラマと比べた中では「おっさんずラブ」のツイート数がダントツで多いことが示された。

「天気の子」にはツイート数でもかなわなかった

今度は、他の映画とツイート数を比べてみよう。何と言っても、「君の名は。」でも空前のツイッターでの盛り上がりを示した新海誠監督の新作「天気の子」との対比が気になる。

グラフ画像:データセクション社Insight Intelligence Q
グラフ画像:データセクション社Insight Intelligence Q

まず8月5日〜11日だが、「おっさんずラブ」のツイート数は他の映画に比べると低い。9日に「劇場版ONE PIECE STAMPEDE」が公開されており同作品のツイートがかなり盛り上がった。ワンピースファンにお断りしておくと、このツイート数は「ワンピーススタンピード」もしくはその英字を含むもので、「ワンピース」では抽出していない。一般名詞の「ワンピース」と区別できないからだ。あくまで参考数値で、実際は映画についてのツイートはもっと多かったのだと思う。

グラフ画像:データセクション社Insight Intelligence Q
グラフ画像:データセクション社Insight Intelligence Q

翌週(12日〜18日)には「おっさんずラブ」のツイート数が2位に躍り出ている。「ライオンキング」の数が少ないが、ファミリー映画は興行収入に対してツイート数が少なくなる。小学生はまだツイッターを使ってないからだ。

グラフ画像:データセクション社Insight Intelligence Q
グラフ画像:データセクション社Insight Intelligence Q

そして公開日の週末までの一週間で「おっさんずラブ」はツイート大爆発となったものの、「天気の子」には追いつけなかった。毎週話題沸騰の「あなたの番です」は軽く抜き去ったのに「天気の子」を抜けないのは、このアニメ映画がいかに桁外れな盛り上がりとなっているかの証。興行収入100億を超えてもなお動員が続いているモンスターヒット作だからだ。

ただ、上のグラフをよくよく見ると、23日の公開日だけは瞬間風速で「天気の子」より「おっさんずラブ」の方がツイート数が多い。公開当日、いかに大爆発したかがよくわかる。

2月の記事「映画興行をSNSが左右する時代?」でも書いたが、いまの映画興行はかなりSNSの盛り上がりと比例する傾向が見えてきた。これには2つあり、ヒットしているから多くの人がツイートする側面と、ツイッターの盛り上がりを見て映画館に足を運ぶ人が増える側面と、両方だ。だとしたら、「おっさんずラブ」も今後の興行収入はツイッターの盛り上がりにかかっているかもしれない。

Insight Intelligence Q では影響力の高かったツイートを抽出することもできる。8月の「おっさんずラブ」に関するツイートでは、これがかなりの影響力を発揮したようだ。

「徹子の部屋」にこの3人が並ぶ画像にはインパクトがある。プロモーションとして、こうしたツイートをどれだけ発信できるかもポイントになりそうだ。

また、直近数日間に絞ったデータを見ると気になることがある。

グラフ画像:データセクション社Insight Intelligence Q
グラフ画像:データセクション社Insight Intelligence Q

「おっさんずラブ」公開前日の22日(木)から昨日27日(火)までを見ると2つの映画のツイート数はほぼ互角なのだ。そして両方とも月火となよなよと数値を下げてきている。さすがの「天気の子」も力が尽きてきたのか?だが「おっさんずラブ」も公開日がピークで下がっていくだけかもしれない。普通の映画はみんなそうなので仕方ないのだが、この週末に勝負が決まるのではないか。

ひょっとしたら「おっさんずラブ」が再び爆発したりして、などと想像しながら週末も観察したいと思う。

コピーライター/メディアコンサルタント

1962年福岡市生まれ。東京大学卒業後、広告会社I&Sに入社しコピーライターになり、93年からフリーランスとして活動。その後、映像制作会社ロボット、ビデオプロモーションに勤務したのち、2013年から再びフリーランスとなり、メディアコンサルタントとして活動中。有料マガジン「テレビとネットの横断業界誌 MediaBorder」発行。著書「拡張するテレビ-広告と動画とコンテンツビジネスの未来」宣伝会議社刊 「爆発的ヒットは”想い”から生まれる」大和書房刊 新著「嫌われモノの広告は再生するか」イーストプレス刊 TVメタデータを作成する株式会社エム・データ顧問研究員

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