ディズニーが世界のエンターテイメント市場を寡占化しはじめた

ディズニーとフォックスの興行収入は2010年以降明らかに増加している

ディズニーがフォックスに続いてHuluを買収

昨日(5月15日)、ディズニーが米国Huluを100%傘下におさめたことが報じられた。もともと持っていた7割の株式に加え、Comcastが持っていた残り3割も買い付け権を獲得したのだ。(日本のHuluは日本テレビによって子会社化されており名前は同じだがまったく別の事業体)

ディズニーは今年3月に 20世紀フォックスも買収を完了している。映画を中心にコンテンツの幅を増やした。Hulu買収はネット配信の出口を新たに獲得したわけで、誰もがわかる通りNetflixへの対抗策だ。この秋には満を持してNetflix同様の定額配信(SVOD)サービス「ディズニー+」をスタートさせる。

こうした買収でディズニーがどれだけ寡占的状況を作り出しているか。なかなかグローバルな数字は把握しにくいので、日本国内市場で捉えてみた。それが最初のグラフだ。

日本の映画興行市場の中で、ディズニーとフォックスを合わせるとどれくらい大きな存在になるかを計算してみたものだ。数値は日本映画製作者連盟の映画産業統計のページのデータを使っている。大ざっぱに見ると、2000年代はディズニー+フォックスで10%台にすぎなかったのが、2010年代は大きくシェアを伸ばしているのがわかる。

ディズニー+フォックスで日本の洋画興行の3~4割を占める

上のグラフではわかりにくいので、この10年に絞ったグラフを見てもらおう。

青=ディズニー オレンジ=フォックス
青=ディズニー オレンジ=フォックス

洋画興行全体の中で青がディズニー、オレンジがフォックス、グレーがそれ以外の作品を示している。2000年代には両者合計しても10%台のシェアが普通だった。それが2010年以降、30~40%に大きくシェアを高めている。昨年は興行収入のほぼ半分をこの2社で占めていた。洋画興行1004億円の中で、ディズニー286億円、フォックス208億円で合計494億円。もちろんフォックスが日本で「ボヘミアンラプソディ」をヒットさせたことが大きく寄与している。

ただディズニーは「基礎数字」がどの年も大きいことがわかる。そこにフォックスが去年のようなヒット作を出すとシェアが半分近くになるのだ。

ディズニーが持つ基礎数字とは何だろう?ゴールデンウィークの映画興行を席巻したマーベルスタジオの「アベンジャーズ」シリーズの最後の作品「エンドゲーム」。そこに至るまでの「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」と呼ばれるプロジェクトの作品群はその最たるものだ。また「スター・ウォーズ」シリーズも今やディズニーのものだ。ピクサーとはその誕生以来配給してきた仲のディズニーだが、そのピクサーも子会社化している。そして元々のディズニースタジオのアニメーション映画や実写もすごいラインナップだ。ディズニーはそういった「大玉」作品群の集まりになっている。「軍団」と言ってもいいくらいだ。

各年ごとに見ていくと、2010年には「アリス・イン・ワンダーランド」(118億円)「トイ・ストーリー3」(108億円)がダブルのミリオンヒットになったディズニーと、「アバター」(156億円)のメガヒットが出たフォックス。2014年には「アナと雪の女王」(255億円)がそれだけでディズニーを王座に押し上げた。2016年には「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(116億円)がディズニーの軸となり、「オデッセイ」(35億円)などのフォックスと合わせるとシェアが50%を超えた。

マーベル、スター・ウォーズ、ピクサー、ディズニーアニメ、それぞれのスタジオが数十億円規模のメガヒットを連発できるディズニーと、時に大きなヒットを飛ばすフォックスが一緒になり相乗効果を発揮すれば、30~40%は40~50%に拡大する可能性もある。乱高下する映画市場の半分をコンスタントに占めるなんて、驚愕だ。

そのディズニーがSVOD界にも乱入してNetflixに対抗しようというのだが、次々に各スタジオを買収して傘下に収めてきた姿は、「アベンジャーズ」で次々に星を滅ぼしてきた強大な悪役サノスのようでもある。Netflixを恐れるあまり、自らを最強の存在にしたディズニーは、世界中を滅ぼしてしまうのではないかと思いたくなる。

スタジオを吸収し新陳代謝してきたディズニー

ただ、サノスが自らの娘の命を捧げて力を増大させたように、ディズニーも身を切りながら新陳代謝を進めてきた。2000年代前半のディズニーは伝統を持つものの新しい時代への対応力を見出せず、しぼんでしまいかねなかった。2006年にピクサーを買収し、傘下に収めたというよりそのピクサーの力を借りて自らを変えていった。古くさいセルアニメのスタジオだったディズニーアニメが、伝統に新しい技術と発想が加わった新鮮なスタジオに生まれ変わり、近年では「アナ雪」や「シュガーラッシュ」「ズートピア」などピクサーに劣らないヒット作を生み出すようになった。これに続いて、2009年にマーベルスタジオを、2012年にはルーカスフィルムを子会社化し、ヒットシリーズをいくつも持つ、力強い総合スタジオになっていったのだ。身を切る改革を、外の力も借りて行った革新の成果が、今の強さにつながっている。フォックスの買収はその仕上げなのだろう。もはやディズニーの野望を妨げる力を持つ他者はいない。

日本でもディズニーに対抗しアベンジャーズが結成される時

ただそうした努力の成果にしても、ディズニーには本当にサノスのように見えてくる恐ろしさを感じてしまう。日本でも彼らのSVODサービス「ディズニー+」がスタートすると、サノスが指をパチンと鳴らして起こしたような、「住民の半数が消えてしまう」惨劇が起きかねない。つまり、日本の映像配信事業者が半分になってしまうことも起こりうるのではないか。というのは、日本ではテレビ局ごとに配信サービスが存在し、どれもほどほどに面白いコンテンツを保持している。そこにサノス=ディズニーが攻め込んできたらどうするのか。

私は、日本のサービスが一つの大きなサービスになるべき時が来ていると思う。アベンジャーズのように力を合わせてサノスに対抗しないと生き残れない。半分が死に絶える。逆に一つになることで、国内に限っては十分に対抗できる存在になると思うのだ。アベンジャーズのように、一度敗退しても巻き返す可能性が出てくる。今、日本の事業者は考えるべきではないか。

そんな思いもあって、5月29日にSSK新社会システム研究所のセミナーを企画した。「【令和時代の日本のコンテンツ輸出】テレビ局海外展開の最新動向と将来像」と題して、日本の放送コンテンツの海外展開に詳しい3人のパネリストをお招きし、最新動向と将来像を議論してもらう。

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それにしても、ディズニーの動きは気になる。サノスのような存在にならないか、今後の動向には注目していきたい。