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『仮面ライダー』シリーズのサブライダー役から飛躍した俳優は?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『こっち向いてよ向井くん』に出演中の赤楚衛二 (C)日本テレビ

 ドラマ『こっち向いてよ向井くん』で10年前に彼女と別れて以来の恋にチャレンジしながら、一向にうまくいかない主人公を演じている赤楚衛二。プライムタイムでは初主演だが、前クールの『ペンディングトレイン』と『風間公親-教場0-』の1・2話でも準主役。その前には朝ドラ『舞いあがれ!』でヒロインの幼なじみから結婚する役と活躍が目覚ましい。

 赤楚のブレイクのきっかけになったのは『仮面ライダービルド』での万丈龍我=仮面ライダークローズ役。『仮面ライダー』シリーズは登竜門と呼ばれているが、赤楚のように主人公でないサブライダー役からもスターは生まれているか。平成以降の作品から振り返る。

元格闘家の役柄からBLドラマなでステップアップ

 平成の『仮面ライダー』シリーズで新人時代に主役を張ったトップ俳優といえば、オダギリジョー、佐藤健、菅田将暉、福士蒼汰、竹内涼真と錚々たる顔ぶれ。令和でも高橋文哉が先陣を切って、すでに主役クラスのポジションになった。

 そんな中、赤楚が『仮面ライダービルド』(2017年)で演じた万丈龍我は、ビルド=桐生戦兎(犬飼貴丈)の相棒で、仮面ライダークローズに変身して共に戦う役。元格闘家で真っすぐな熱血漢というキャラクターだった。赤楚はトレーニングで大胸筋を付けて撮影に臨んだという。

 その後、深夜ドラマの『チェリまほ』こと『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』に主演して、町田啓太とのBL展開が話題に。『彼女はキレイだった』、『SUPER RICH』では主人公の三角関係に絡むなど、着実にステップアップを重ねて現在に至っている。今後も主役級を担っていくだろう。

初回から登場の女性ライダーがトーク番組MCも

 今クールのドラマでは、『紅さすライフ』でメンズコスメの起業に挑むヒロイン役の井桁弘恵は、『仮面ライダーゼロワン』(2019年)で刃唯阿=仮面ライダーバルキリー役だった。

 特務機関の技術者で戦闘能力にも長けた役どころで、スタートからレギュラーで登場した初の女性ライダー。170cmの長身もあってオーディションで選ばれた。

 この以前から「ゼクシィ」の11代目CMガールなどで注目されていたが、ゼロワンに変身する高橋文哉ら男性陣の中、スーツ姿で颯爽として、さらに人気を高めた。以後も『メンタル強め美女白川さん』、『私がヒモを飼うなんて』など深夜ドラマで主演を飾っている。

 一方、『おしゃれクリップ』のMCを山崎育三郎と務め、『ヒルナンデス!』で水曜レギュラーなどバラエティでも活躍中だ。「Honda Cars」などCM出演も続いている。

『ギーツ』と同時進行でいじられ役に

 『最高の教師』とクロスオーバーする『最高の生徒』では、畑芽育が演じる余命1年の主人公の友だちグループの1人が、先週終わった『仮面ライダーギーツ』(2022年)で吾妻道長=仮面ライダーバッファ役だった杢代和人。スタート時は掛け持ちの形で、『ギーツ』での攻撃的なキャラクターから一転、ナルシストながらいじられ役だ。

 畑の父親役の武田航平も『仮面ライダーキバ』(2008年)に出演していた。現在と過去が交錯する物語の中、紅渡=仮面ライダーキバ(瀬戸康史)の父親の紅音也=仮面ライダーイクサ役。キザな自由人の天才バイオリニストという役どころだった。

 赤楚が出演した『仮面ライダービルド』にも、3人目のライダーとなる猿渡一海=仮面ライダーグリス役で登場。ビルドやクローズへの刺客として32歳での変身を見せている。

 武田はドラマにはゲスト出演が多いが、昨年配信された『オールドファッションカップケーキ』では主演。上司と部下の男性同士のオフィスラブが話題を呼んだ。

『アギト』から一貫して主役でないが印象を残す

 朝ドラ『らんまん』で、植物学を志す槙野万太郎(神木隆之介)の人生に大きな影響を与えた東京大学の田邊彰久教授役の要潤は、平成『仮面ライダー』シリーズの2作目『仮面ライダーアギト』(2001年)でデビューしている。

 警視庁の未確認生命体対策班の刑事・氷川誠役で、特殊強化装甲服を着用して仮面ライダーG3となって戦った。真面目で責任感が強く、超越生命体アンノウンと生身で交戦しても引かず、全身の筋肉が断裂しても職務を続けていた。

 『アギト』の翌年には、令嬢と使用人の愛の激動を描いた昼ドラ『新・愛の嵐』でヒロインの相手役に。以後も『空飛ぶ広報室』、『カンナさーん!』、『TOKYO MER』など20年来、出演作が途切れない。『アギト』から一貫して、主役ではないが存在感を発揮し続けている。

 『らんまん』の田邊教授は、小学校も出ていない万太郎に東大の植物学教室への出入りを許す。しかし、実績を重ねる万太郎が自分の思い通りにならないと煙たがり、ついには大学への出入りを禁じた。

 海で溺死して、万太郎に植物学の未来を託す遺言が届けられ、最後には視聴者を涙させてもいる。単なる悪役でない人間味を醸し出す好演だった。

(C)NHK
(C)NHK

編入してきた国宝級イケメンが大河ドラマ主演に至る

 他にサブライダー出身者を辿ると、学園ドラマ風の『仮面ライダーフォーゼ』(2011年)には吉沢亮が出演していた。如月弦太朗=仮面ライダーフォーゼ(福士蒼汰)の高校に編入してくる朔田流星役で、仮面ライダーメテオに変身。

 人当たりの良さを装いつつ、親友を救うための取引からフォーゼを襲撃して瀕死にするが、その後に友情を築いて共に敵と戦った。

 後に「ViVi」の「国宝級イケメン」で殿堂入りする吉沢。茶髪だった『フォーゼ』当時から、美形ぶりは際立っていた。その後の俳優としての活躍は枚挙に暇がない。

 朝ドラ『なつぞら』では、広瀬すずが演じたアニメーターを目指すヒロインに絵心を教える役でイケメンぶりを発揮し、映画『リバーズ・エッジ』では屈折を抱えたゲイの少年、『ブラックナイトパレード』ではコミカルなザンネン男子など役幅は広い。

 2021年の大河ドラマ『青天を衝け』では渋沢栄一役で主演し、代表作となった。福士とは『フォーゼ』から6年後、映画『BLEACH』で再共演。また共闘する役だった。

吉沢亮
吉沢亮写真:つのだよしお/アフロ

さわやかそうで葛藤を抱える役の原点が『鎧武』

 戦国武将をモチーフにした『仮面ライダー鎧武/ガイム』(2013年)で、葛葉紘汰=仮面ライダー鎧武(佐野岳)のダンスチームの後輩、呉島光実=仮面ライダー龍玄を演じていたのは高杉真宙

 巨大企業の重役の御曹司で紘汰を尊敬していて、チームを守るために戦うが、現実が自分の思い通りに行かない中で裏切りを繰り返し、兄を葬るなど暴走。その果てに絶望に陥るという、闇の深い役どころだった。

 高杉はその後もドラマ、映画にコンスタントに出演し、『PICU 小児集中治療室』では吉沢亮が演じた主人公の親友の医師役。見た目はさわやかそうで葛藤を抱えるのは『鎧武』以来のハマるパターンのようだ。

 昨年は『ぐるぐるナインティナイン』の『ゴチになります!』のレギュラーも務め、知名度を高めた。

 主役を取り巻く1人といったポジションが多いが、今年の春クールの『わたしのお嫁くん』では、波瑠が演じるキャリアウーマンとルームシェアする準主役。家事力が抜群な“お嫁くん”として多くの見せ場があった。

ひとクセある役が続いて問題作にも挑戦

 『仮面ライダーゴースト』(2015年)では、磯村勇斗が異世界である眼魔世界の大帝の息子、アラン=仮面ライダーネクロム役で出演していた。

 地球を完璧な世界に導くための侵攻作戦に加担していたが、兄の策略で追放され、天空寺タケル=仮面ライダーゴースト(西銘駿)らと共に、地球と眼魔の世界を守るために戦った。

 磯村は人間ではないアランの謎めいた佇まいを体現。一方、人間世界で大好物になったたこ焼きを食べるシーンも多かった。その後も『SUITS』では中島裕翔に面倒を掛ける悪友、『サ道』では原田泰造らのサウナ仲間の経営コンサルタントなど、王道イケメンというよりはひとクセある役が多い。

 『持続可能な恋ですか?』では上野樹里と18年ぶりに再会する幼なじみ役で、海外生活の長い自由人ぶりで彼女の婚活に割って入り、スパイスとなった。

 映画では高齢者問題をテーマに海外でも評価された『PLAN75』で準主役、孤島で宗教団体のプログラムを実践する『ビリーバーズ』で初主演など、問題作にも果敢に挑んでいる。

磯村勇斗
磯村勇斗写真:ロイター/アフロ

ヒーロー色は薄めな分の個性を発揮して

 他には、藤田ニコルとの結婚を発表した稲葉友が、『仮面ライダードライブ』(2014年)でアメリカ帰りのカメラマン・詩島剛=仮面ライダーマッハ役。今年から純烈のメンバーになった岩永洋昭は、『仮面ライダーオーズ/OOO』(2010年)で世界を回る医師の伊達明=仮面ライダーバースを演じていた。

 近年では、『仮面ライダージオウ』(2018年)で未来から現れたウォズ=仮面ライダーウォズ役でドラマデビューした渡邊圭祐が、『推しの王子様』で比嘉愛未の相手役に。『チェイサーゲーム』ではゲーム会社の中間管理職役で初主演を果たした。

 『仮面ライダーリバイス』で主人公兄弟の次男、五十嵐大二=仮面ライダーライブを演じた日向亘は、今年『Get Ready!』、『ペンディングトレイン』、『どうする家康』と出演が続いている。

 全体的にサブライダーは、主役の仮面ライダーよりヒーロー色が薄い分、インパクトのある個性を発揮。それがその後の役者人生でも礎になっているように感じる。

 本日スタートの新作『仮面ライダーガッチャード』では、今のところ第2のライダーはいないが、『アギト』以降、ライダーが最後まで1人だった作品はない。現在の登場人物の誰かが変身するのか、途中で新キャラクターが現れるのか。仮面ライダーガッチャード=一ノ瀬宝太郎役の本島純政と共に注目したい。

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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