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深川麻衣が30代で見つけたタフな自分と豊かな時間。主演ドラマでは仕事で転落し結婚に焦り泥沼に

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)読売テレビ

“普通の幸せ”を願った3人の女性が犯罪に関わっていくドラマ『彼女たちの犯罪』。元乃木坂46の深川麻衣が主演し、元AKB48の前田敦子、元E-girlsの石井杏奈と共演している。近年、役幅を広げながらも各作品の世界観にナチュラルに溶け込む演技を見せてきたが、今回も、サスペンスの中で人生に行き詰まった葛藤をリアルに醸し出している。自身のライフスタイルにも変化があったようだ。

毎回これが最後かもと思いながら向き合って

――相変わらず出演作が相次ぐ中で、今回は連続ドラマ3作目の主演。女優として自信が付いてきた感じですか?

深川 自信はなかなか付かないですね。話をいただいて、すごく嬉しくて、頑張らなきゃと思いますけど、毎日「あそこはああしておけば良かったかな」みたいな反省をしています。たぶん仕事を続けていく限り、こうなんだろうと思います。

――努力していることが実を結んではいますか?

深川 特別な努力をしている感覚はありません。ただ1コ1コの作品に、これが最後かもしれないと思いながら、ちゃんと向き合おうとしていて。その気持ちが次の作品へ繋がっているとしたら、とても幸せなことですね。

――このところの深川さんは、闇のある役もコミカルな役もスッと入っている印象があります。

深川 台本を読んで、固めすぎないように気をつけています。今回の繭美だと感情表現がストレートで、気持ちを激しく人にぶつけるシーンが何度かあって、その怒り具合、感情をどこまで出すか。難しいところですけど、相手と面と向かわないと生まれない気持ちを大切にしたいです。1人で台本を読むだけでは感じられないものがありますし、日常生活では人に声を荒げることもなかなかないですよね。

――深川さんはバラエティ番組で、芸能界の「いい人王」にノミネートされるくらいですから。

深川 いえいえ。誰でもそうだと思います! 怒りをどれだけ相手にぶつけるかは、監督と細かく相談しながら気を付けています。

もがいている姿が人間らしくて愛おしくて

――序盤では、アパレル会社の後輩社員を「プレスとしての自覚がなさすぎる」と叱っていました。

深川 今の時代的にも、強く言いすぎるとリアルでないこともあるので。単なるパワハラに見えないように、トーンにはすごく気をつかいました。あくまで相手のことを思ったうえで掛けた言葉が、当人にはそう受け取られなかった。そんなお互いの気持ちのすれ違いに見えたらいいなと。

――大人としての態度を取って。

深川 繭美の人物像としても、単に怒りっぽい人やイヤな人に見えないようにしたくて。彼女なりの正義や理由があることが、視聴者の方に伝わるようにしたいと思っていました。

――他に、繭美を演じるうえで考えたことはありました?

深川 後半に向けて、徐々に泥沼にはまって落ちていく姿は、客観的に見ていても演じていても苦しい反面、もがいている姿が何より人間らしくもあって。繭美の愛おしい部分でもあったので、そこをどう表現しようか……ということですかね。

――アパレル業界のこととか、事前に調べたりは?

深川 スタイリストさんにプレスの仕事の雰囲気を聞いてリサーチしたり、スタッフの方にアパレル関係の会社の仕事の流れをまとめた資料をいただいたりしました。あと、以前お世話になった女性監督さんがアパレルで働かれていた経験があって、いろいろな疑問に答えてくださったので、安心感がありました。

仕事中心になりすぎると自分がブレると感じました

――3人の女性の中では、やはり繭美が自分に馴染む感じでした?

深川 私は専業主婦の由香里の人生も、刑事の理子の人生も経験なくて。もちろん繭美の人生も経験ありませんけど、大事にしているものにはすごく共感できました。

――1話で繭美は「仕事が楽しいし充実しているから、恋愛相手に余計なことを求めないでいられる」と話していましたが、仕事で転落すると急に結婚を焦り出しました。

深川 特に20代の頃の私は、仕事が中心になりすぎていたかもしれません。そうしていると、いざ仕事がうまくいかなくなったり、壁にぶつかって悩んだりしたとき、自分自身が一緒にブレてしまうと感じたことはあって。だから、繭美がそんな状況になって、すごく揺さぶられているような心情は、昔を思い出すとめちゃめちゃわかります。

――仕事と共倒れしてしまうような?

深川 それは気をつけないといけないと思ってから、私は趣味に充てる時間や好きな場所に行くことを大事にするようになりました。ずっとやりたいと思いながら、手を出さなかった陶芸を始めてみたり。今はそういう時間を、意識的に取るようにしています。

――仕事が絶対的な最優先ではなくなったわけですか?

深川 お仕事は好きなままなので、優先なのは変わりません。それでも、できる範囲で自分の時間を確保するようにはしています。

ホッとできる場は大事だと思います

――「会社では強くいたい」という台詞もありましたが、深川さんも仕事に対して、そう思っていますか?

深川 強くいようと考えたことはないです。ただ、主演をさせていただくうえで、今までいろいろな現場で見てきた座長の方のあり方に、私は到達できていない気がしていて。理想はあるので、そういう意味で強くなりたいとは思います。

――繭美にとっての大学時代からの友だちの優子のような、「弱みを見せられる存在」は必要ないですか?

深川 くだらないことから真剣な相談まで話せる気心知れた友だちは、とても大切だし必要だと思っています。ただ、最近、自分が思った以上にタフなのかもと知りました(笑)。「体力があるね」と5人くらいに言われたんです。

――やさしそうに見える深川さんですが、それだけではないと(笑)。

深川 確かに疲れにくくて、弱るタイミングはあまりないかもしれません。でも、仕事をするうえで、やっぱり緊張はしますし、無意識に肩に力が入ったり、考えることも多いですから。そこを離れてホッとできる場というか、自然の中で何も考えずに過ごしたり、友だちや家族とおいしいものを食べて他愛ない会話をすることも、すごく大事にしています。

おいしいものを探すことが楽しくて

――ドラマの紹介では、3人は“普通の幸せ”を追い求める、と謳われています。深川さんはどんなときに、そういう幸せを感じますか?

深川 仕事で幸せな瞬間はいっぱいありますけど、仕事以外だと、自分の大切な人たちとごはんを食べる時間ですね(笑)。

――特にどんなごはんを食べるときが幸せだと?

深川 和食はずっと好きなんですけど、最近はいろいろなお店を教えてもらって、おいしいものを探すことが楽しくなりました。あまりジャンルは問いません。ただおいしければいいです(笑)。

――最近のヒットはありました?

深川 以前共演した方に連れていってもらったイタリアンのお店が、何を食べてもおいしくて! ルッコラとプロシュートに削ったチーズを乗せたシンプルなサラダはとびきりで、それからルッコラに激ハマりしました(笑)。自分が普段行かないお店で「こんな料理があったんだ!」と発見できるのも、いいですね。

――10代、20代、30代と求める幸せが変わってきたりはしましたか?

深川 その時々の悩みはあって、求めるものも年齢によって変わってきている感じはします。今はよりシンプルになっているかもしれません。お話ししたように、大切な人との時間、好きな場所、おいしいごはんとか、衣食住の大切さに気づきました。

――若い頃は、意外とそういうことに目が向かないかもしれませんね。

深川 20代はとにかくガムシャラに仕事をし続けてきたので、悩みのほぼすべてを仕事のことが占めていました。その経験をしたからこそ、30代は仕事を大事にしつつ、他を豊かにすることにも時間を充てるようになって。それが結局、仕事に活きることも絶対あると思っています。

本心かウソか絶妙にあいまいなのが怖くて

――前田敦子さん、石井杏奈さんとは初共演とのことですが、どんなイメージがありました?

深川 前田さんは明るくてエネルギッシュ、石井さんは凛として着物が似合いそうな和のイメージを、一方的に持っていました。実際にお会いしても、そのイメージから掛け離れてはなかったです。素直で裏表がなくて、素敵なお2人でした。だから、今回共演できて、すごく嬉しいです。

――前田敦子さんは深川さんも身を置いていたアイドルの世界で頂点に立って、女優として独自の道を切り開いてきました。

深川 3人とも同じような境遇から、今は役者をしていて、地の部分の波長が合っている感じがします。メンタルの強さが通じていて、安心してお芝居ができます。

――繭美の大学の先輩で、由香里の夫ながら独身を装う智明については、どう思いますか?

深川 繭美的にはすごくチャーミングで、お医者さんという仕事も魅力的に映っていますけど、実は既婚者なのを隠されていたんですよね。演じている毎熊(克哉)くんの穏やかさが土台にあるから、智明の純粋な部分と計算している部分が絶妙なあんばいになっていて、ズルいなと(笑)。どこまで無意識で、どこでウソをついているのか。本心から言っているのか、取り繕うためなのか。グレーなところがすごく多くて。だから、繭美も翻弄されてしまいました。

――2話で忘れ物のネクタイを届けに、お弁当も作って智明の病院まで行って、受付で奥さんがいることが発覚しました。

深川 あのシーンはとても辛かったです。張り切ってお弁当まで作って、職場に届けに行ったら、そこでまさかの奥さんがいると知って、逃げるように去って。転んでお弁当が散らばった光景に、ものすごく切なくなりました。

外に出たくなくてジムもズームレッスンに

――細かいところだと、智明とバッティングセンターに行くシーンがありました。以前にもバッティングセンターのドラマにゲスト出演されていましたが、プライベートで行くことはないですか?

深川 何年か前に1回だけ、友だちと行ったことはあります。行けば楽しいですけど、なかなか「行こう」という話にはなりませんね。なぜか撮影でバッティングセンターに行くことは多くて、これが3回目。今回も教えていただきながら打てた……と言っていいのかわかりませんけど(笑)、当たった瞬間は気持ち良かったです。

――普段は体を動かすことはしていますか?

深川 ジムに通っています。そこでズームレッスンもあるのを利用して、家で運動することが多くなりました。今の時期、夜でも蒸し暑いので、あまり外に出たくなくて(笑)。

――ドラマの撮影も夏場は大変ですか?

深川 そうですね。ロケは暑さとの戦いです。スタッフさんは炎天下に重いものを持ったり準備をしたり、私たち以上に大変だと思います。熱中症にならないように、とにかく水分をこまめに摂ったり、声を掛け合って対策をして、日々の撮影に挑んでいます。

――「仕事以外の時間も大切に」とのお話がありましたが、夏に恒例でしていることはありますか?

深川 恒例ではないですが、ドラマの撮影が終わったら、旅行に行くのが楽しみです。久しぶりの海外旅行を計画中です。

――日常での夏の小さな幸せは?

深川 この時期は、桃を食べることですかね。何か今日は食のお話が多くなりました(笑)。

Profile

深川麻衣(ふかがわ・まい)

1991年3月29日生まれ、静岡県出身。

2011年に乃木坂46の1期生オーディションに合格。2016年に卒業して、本格的な女優活動を開始。主な出演作は映画『パンとバスと2度目のハツコイ』、『愛がなんだ』、『僕と彼女とラリーと』、『今はちょっと、ついてないだけ』、ドラマ『日本ボロ宿紀行』、『青天を衝け』、『特捜9』、『完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの』、『サワコ-それは、果てなき復讐-』など。ドラマ『彼女たちの犯罪』(読売テレビ・日本テレビ系)に出演中。11月3日公開の映画『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』に主演。

プラチナイト木曜ドラマ『彼女たちの犯罪』

読売テレビ・日本テレビ系/木曜23:59~

公式HP

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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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