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令和の口裂け女ムービーでヤンキー女子高生に。黒崎レイナの昭和感を出す試みとは?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)2023 REMOW

70年代後半に全国に広まった都市伝説がモチーフの映画『先生!口裂け女です!』が公開される。ヒロインのヤンキー女子高生を演じるのは黒崎レイナ。『仮面ライダーエグゼイド』で人気を博し、今月には初主演ドラマも放送されるが、この映画では金髪で原付バイクも飛ばし、ノリの良さを発揮している。自身の好みでもある昭和チックな世界観にもハマったようだ。

ケンカに強い設定が最弱に変わっていました(笑)

――『先生!口裂け女です!』のアヤカ役は指名が掛かったのですか?

黒崎 オーディションでした。アヤカはヤンキー高校生でバイクに乗って、当初はケンカに強いという設定があったんです。それで合格させていただいて、完成した台本を見たら、“ケンカ最弱”に変わっていて「あれっ?」と(笑)。「アクション練習があると聞いたんですけど……」と聞いたら「アヤカはないです」と言われました。

――レイナさんはせっかくキックボクシングをやっているのに。

黒崎 主人公のタケシのお姉さんが格闘技をやっている設定になっていて、タケシと相棒のF1とアヤカは弱い役。やられるシーンしかありませんでした(笑)。口裂け女役の屋敷(紘子)さんはアクションが素晴らしい方で、不良集団と戦うシーンを間近で見させてもらうと、腕の可動域が広くて脚さばきもカッコ良くて。見入ってしまいました。

――口裂け女のことは知っていました?

黒崎 何となく話は聞いていました。学生時代に都市伝説を元にしたマンガも読んでいたので、どんな存在かはわかります。

――でも、今回は口裂け女の映画というイメージとは、だいぶ違っていませんでした?

黒崎 鎌を持って追い掛けてくるのかな、と思っていたら、ひとクセある映画でした(笑)。今回の口裂け女は鎌は持っていますけど、ポスターでもライダースーツを着ていて。ナカモト(ユウ)監督が『仮面ライダー』を好きで、アヤカの愛車はXRモタードという、平成ライダーがよく乗るバイクの原付バージョンなんです。

――言われてみれば、それっぽいですね。

黒崎 あと、私が好きな『刃牙』を連想させるネタもあったり。ホラー、バイク、格闘技といろいろな要素が詰まった作品になりました。監督が脚本も書かれていて、アヤカは私自身に当て書きされた部分もあります。感情表現がストレートなところとか。

ハッキリした顔立ちが合っていた気がします

――アヤカのヤンキーぶりは当て書きではないですよね(笑)?

黒崎 そういうわけではないと思いますけど(笑)、私の見た目がハッキリした顔立ちで強めの印象ではあるので、雰囲気は合っていた気がします。あと、オーディションのときに別の作品で金髪になっていたんです。

――『警視庁アウトサイダー』のキャバ嬢役ですね。

黒崎 その撮影のすぐあとにオーディションで、わざわざ染めなくて済みました。アヤカは小岩のヤンキーというイメージらしくて(笑)、高校生で髪にあまりこだわりがなく、根元が黒くなっていたのもピッタリかなと。衣装はスタイリストさんとお話しさせていただいて、室内でも上着を脱がないことになりました。MA-1を着たまま、冬の撮影で皆さんよりちょっと暖かく過ごさせていただきました(笑)。

――アヤカはギャルっぽい印象もありました。

黒崎 3人組がクラスでは不良ぶってますけど、周りはそんなふうに見てなくて。的外れでナメられている存在です(笑)。私は学生時代、内容もないことで笑ったり、はしゃいでいる感じだったので、この3人のノリはイメージしやすかったです。休憩中も常にタケシ役の木戸(大聖)さん、F1役の上野(凱)さんと一緒にいて、ズッコケ3人組のような関係性は心地良く感じました。

――参考に何かヤンキー映画を観たりはしました?

黒崎 監督が昭和チックなものが好きで、『クローズ』とかちょっと前の世代の不良マンガを参考にさせていただきました。「男女の差を感じさせない関係性を作ってほしい」とのご指示があって。アヤカはしゃべり方から男まさりで、ヤンキーマンガの男子同士のやり取りが面白い部分を、みんなで共有して作っていきました。

驚くシーンは『ホーム・アローン』を意識して

――アヤカは最初、教室にロリポップをしゃぶって現れました。

黒崎 飴をなめながら話したことがなかったので、第一声でよだれがペロリと出てしまって(笑)。すぐ戻したので、みんなは気づいてないと思って続けていたら、2人が笑っていて、監督もカメラを通して見てしまって、「これは無理だな」となりました(笑)。

――転校早々でグータッチしたり、「原チャリ窃盗? ウケる」と仲間になったり、ノリが軽い感じで。テンション上げめで撮ったんですか?

黒崎 無理のないテンション感でした。私自身、当て書きしていただいた通りで明るいので、その明るいところを保つだけ。とても演じやすかったし、楽しかったです。

――オーバーアクションにはしたんですか? 目をひんむいて驚くところとか。

黒崎 ビックリして「ギャーッ!!」と(笑)。あそこは何パターンか撮った記憶があります。どのタイミングで目を開けるか。ちょっとかわいさが欲しいということで、『ホーム・アローン』を意識して両手で頬を押さえたのが使われました。ホラー色が強めの作品ではないので、ユーモアもあるシーンにできたらいいなと。

――教室で立ち上がって「先生!口裂け女です!」と叫ぶシーンは?

黒崎 あそこも印象的でした。タイトルにもなるので、撮影前にリハーサルもさせていただいて。ビックリ寄り、ふざけた感じで言う、笑顔で……といろいろやって、ビックリ寄りになりました。

台詞を「がってん承知の助」にする相談を

――昭和チックという話が出ましたが、「がってん承知の助」という台詞もありました。

黒崎 もともと台本には「がってん」と書いてあったんです。私は言ったことがなくて、昭和生まれの父に聞いてみたら「言うね」と。それで、なぜか自分の頭の中に「がってん承知の助」という言葉はあったので、それも言うか聞いたら「どっちも言う」ということだったんです。監督に「がってん承知の助のほうがかわいいですか?」と相談して、最終的にそうなりました。

――レイナさんが提案したんですね。

黒崎 はい。昭和感もより出るかと思って。何回かシーンの中で使っていただいて、嬉しかったです。

――一方、レイナは熱いところもありました。

黒崎 友情を感じるシーンもありましたね。タケシがアヤカの身代わりで不良にボコボコにされる姿を見ると、自分が殴られるより痛みを感じてしまって。それはやっぱり友だちだから。タケシも怖さはあるのに「守らなきゃ」という気持ちが伝わりますし、涙を誘うかなと思います。

初めてバイクに乗るのはドキドキでした

――バイクは自分で運転したんですね。

黒崎 私自身、バイクに興味があって、乗ったことはなかったんですけど、免許を取ってすぐ、このオーディションをいただきました。そこでもご縁を感じて、もうアヤカは私がやるしかないと思っていました(笑)。

――運転したのは初めてだったわけですか。

黒崎 はい。普段は車に乗っていて、バイクはどんな感じかドキドキしました。練習もさせていただいて、原付でもこんなにスピードが出るんだと思ったり、用意していただいたのがマニュアルでギアとか難しかったり。でも、乗れるようになったら楽しかったです。

――飲み込みが早かったと聞きます。

黒崎 トンネルのシーンの合間に1人でビューンと走っていたら、姿勢がすごく良くなってしまって。それだと初心者に見えてしまう。アヤカはバイクに乗り慣れていて、運転もうまい設定なので、どうにか姿勢を崩すことを意識しました。

――危なかったようなことはなく?

黒崎 無事に終われました。口裂け女に追われるシーンでは3人並びで走って、トラックの上にカメラを置いて撮影していたので、スピード加減が遅めだったんですね。つい飛ばしすぎないように気をつけました(笑)。

久々の制服で足を出すのが新鮮な感覚で

――セーラー服を着る役は最後のほうになりそうですかね。

黒崎 そうかもしれません。最近、衣装でも制服を着ることがなくて、私服でも生足を出すことがなかったので、久々で新鮮な感覚でした。ルーズソックスを履いたのは初めてです。長さが1mあるのをクシュクシュさせていたんだなと。自分より前の世代のものと作品を通じて触れ合えたのは良かったです。

――全体的に楽しんで撮影ができたようで。

黒崎 監督も特撮や昭和の歌謡曲が好きで、私と共通点が多かったんです。ホラーは初挑戦でしたけど、スプラッターとか観るのは好きで、顔合わせのときから「どういう映画が好き? あれは観た?」という話で盛り上がりました。たぶん、その中で当て書きの方向を考えられていたんでしょうね。

――どんなホラーが好きなんですか?

黒崎 ジェイソンの『13日の金曜日』とか。あとは、韓国の『新感染』だったり、ゾンビ映画をよく観ています。撮影の合間も、みんなでそんな話をしていました。

夜な夜な練習したアクションを次に活かせたら

――今回の心残りとしては、やっぱりアクションがなかったことですか?

黒崎 最後にミット打ちのシーンがあったのが、せめてものアクション(笑)。私はキックボクシングもやっていますし、体型管理のためにシャドーボクシングもしていて。以前、ドラマの『ハイポジ(1986年、二度目の青春。)』でも、ハイキックとかしたんです。また活かせると思っていたら、見事に最弱な設定だったという(笑)。受け身もミット打ちも「極力弱々しく」と言われました。私としてはバババババーンとやりたかったのを、抑えました。

――やろうと思えば、口裂け女ばりのアクションもできたと。

黒崎 やってみたいですね。鎌を持って2階から飛び降りて、皆さんを斬りつけて、血しぶきが飛ぶ(笑)。私、きれいな回し蹴りに憧れていて、夜な夜な家の近くの公園で練習していたんです。弟に付き合ってもらって、きれいな足さばきを習得しようと。『先生!口裂け女です!』でできるかもしれないと思っていたら、私にアクションはなかったので、いつか何かの作品で活かしたいです(笑)。

Lucolort提供
Lucolort提供

Profile

黒崎レイナ(くろさき・れいな)

1998年11月11日生まれ、愛知県出身。

2011年にドラマ『ハガネの女 season2』で女優デビュー。主な出演作はドラマ『仮面ライダーエグゼイド』、『サイン-法医学者 柚木貴志の事件-』、『ハイポジ 1986年、二度目の青春。』、『ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵~』、映画『仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディング』、『世界でいちばん長い写真』、舞台『染、色』など。映画『先生!口裂け女です!』が7月7日より公開。主演ドラマ『無限オーディション』(TOKYO MX)が7月17日、24日に放送。

『先生!口裂け女です!』

監督・脚本・編集/ナカモトユウ 出演/木戸大聖、黒崎レイナ、上野凱、 里々佳、和田雅成、屋敷紘子ほか 配給/エクストリーム

7月7日よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、新宿シネマカリテほか全国ロードショー。

公式HP

高校生のタケシ(木戸大聖) と F1(上野凱) は、原付を盗んでは不良軍団に売るバイトをしていた。転校してきたアヤカ(黒崎レイナ) も仲間に加わり、寂れたアパートで原付を盗もうとしたとき、持ち主と思われるマスク姿の女に見つかる。慌ててバイクで逃げるタケシたちは、走ってくる女にすぐに追いつかれてしまう。この女こそ、頬まで口が裂けた伝説の口裂け女だった。

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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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