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恋愛映画の「キュン」は女優の反応とセット。桜田ひよりの開眼と『交換ウソ日記』の現実味

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)2023「交換ウソ日記」製作委員会

不器用な女子高生がモテ男子と勘違いから交換日記を始める小説を映画化した『交換ウソ日記』が公開される。ヒロインを務めるのは桜田ひより。子役時代から抜群の演技力を評価されつつ、1年ほど前までは恋愛ものは少なかったが、最近はラブコメ系のドラマが相次いでいる。今作でも、もどかしい胸キュンを見事に体現。演技的な発見もあったという。

こんな青春を送ってみたいと思いました

活字離れの世代に支持され、累計65万部を突破した青春小説が原作の『交換ウソ日記』。高校2年の黒田希美(桜田)は、移動教室の机の中に「好きだ」と書かれた手紙を見つける。送り主は学校イチのモテ男子・瀬戸山潤(高橋文哉)。戸惑いながら返事を靴箱に入れて秘密の交換日記が始まるが、実は瀬戸山の手紙は親友・松本江里乃(茅島みずき)に宛てたものだった。希美は本当のことを言い出せず、やり取りを続けてしまう。

――去年の『神様のえこひいき』の頃の取材では、「恋愛ものの経験値が少ない」と話されてました。

桜田 そんなこともありましたね(笑)。

――その後、恋愛ドラマが増えました。今回の『交換ウソ日記』を撮ったのは、『彼女、お借りします』の後くらいですか?

桜田 今年の2月でした。わりと最近なんです。

――もう胸キュンの極意みたいなものは掴んだ感じでした?

桜田 学べる作品ではありました。原作を読ませていただくと、今どきのドキドキが詰まっていますし、学生ならではのシチュエーションが多くて。現実味もあって「こんな青春、送ってみたいな」と思いました。

――移動教室の机に入っていた手紙が、物語のきっかけになっていて。

桜田 瀬戸山くんや希美を始め、様々な登場人物の目線で描かれていて、発見がたくさんありました。「男の子はこういうところにキュンキュンするんだな」とか思いました。

ちょっとヘンテコになりつつ、かわいさを残して

――以前、こういう作品は見せ方もすごく考えるというお話もされていました。希美ならではの見せ方もありました?

桜田 恋愛映画は観てくださる方にキュンキュンしていただくのが、第一だと思っていて。瀬戸山くんの行動に対して、ちょっとした目の動きだったり、ワンアクションずれてしまったり、希美ちゃんの反応も込みでキュンキュンできるんだと、撮影中にすごく感じました。そこは貪欲に演じていこうという気持ちでいました。

――ほっぺたをむにゅっとされるところも、いろいろ考えたんですか?

桜田 はい。撮影に入る前の本読みのとき、どの角度が一番かわいいか、どんなやり方がキュンとするか、監督やプロデューサーさん、高橋さんと私で試行錯誤をしました。何かちょっとヘンテコになりつつ(笑)、かわいさを残したいと。

――単純に女子として、ああいうことをされるのは嬉しいものですか?

桜田 リアルでやられたら、キュンというよりビックリすると思います(笑)。瀬戸山くんは序盤から、いきなり胸キュンなことをするので、女子としては戸惑う部分もあって。希美ちゃん自身、むにゅっとかされたことはなかったと思うので、そのときの衝撃的な顔を、ぜひ大画面で観ていただきたいです。

――お団子頭をポフポフとかもありました。

桜田 あれも急にされたら、嬉しいよりビックリしますよね。されたことがないから、わかりませんけど(笑)。

じれったいところも良さだったりするので

――親友と勘違いされて交換日記が始まり、本当のことを言い出せないのは面白いストーリーですが、ひよりさん自身だったら、さっさと白黒つけたい感覚もないですか?

桜田 この作品は白黒つけないまま進んでいくところが、胸キュンに繋がっていくので。私自身はもどかしい気持ちもありつつ、それも含めて希美ちゃんらしいなと思いながら演じていました。俯瞰で見るというより寄り添っていたので、「私だったら」ということはあまり考えませんでした。

――なるほど。

桜田 じれったいなと感じても、そこが希美ちゃんの良いところでもあるので。観てくださる方の感じ方にお任せしたいなと思っています。

――希美はよく「何でもいいよ」と言います。

桜田 それは私もよく言っちゃいます。でも、適当に言っているわけではなくて、相手に合わせるのが好きなんです。その人のやりたいことを自分も一緒に楽しみたい。希美ちゃんもそういう思考だと思います。

――優柔不断なわけでなく、むしろ合わせたいと。たとえば友だちとごはんに行っても、同じものを頼んだり?

桜田 食べたいものをお互いにいくつか挙げて、たとえば五つ出たら、相手が四つに絞って、次はこっちが三つに……みたいなやり方で決めることが多いです。どうしても食べたいものがあるときは、1人で行きます。直感で「ここで食べたい」と思ったら、行ったりしています。

ヘッドバンギングのコツも探りました

――この作品では音楽もフィーチャーされています。希美が好きなマキシマム ザ ホルモンのようなハードコア系は、ひよりさん自身も聴きますか?

桜田 今回がきっかけで初めて聴きました。もちろんマキシマム ザ ホルモンさんのことは知っていましたけど、じっくり曲を聴いたことはなくて。ただ、自分の身近にホルモンさんのファンがいたんです。いろいろ話も聞いて、こんなテイストの音楽もあるんだなと、新たな発見になりました。

――劇中では、激しくヘッドバンギングをするシーンもありました。

桜田 撮影中は基本、曲が流れていなかったので、想像で演じていました。頭を回すのはすごく難しくて。きっとコツがあると探りながら、何回かチャレンジしました。

――音楽ジャンルとして、好みではありました?

桜田 私は幅広いジャンルを聴くんです。K-POP、J-POP、洋楽……。ヒップホップを聴いたりもするので、そこに新たなジャンルが加わった感じです。

音楽は生活の一部でプレイリストがあります

――交換日記の中で、瀬戸山が「落ち込んでるときに力をもらえる曲ってあるよな」と書いていました。ひよりさんにそういう曲はありますか?

桜田 私は落ち込んだら散歩に行くか、寝るかなので(笑)、聴く音楽はどんなときも一緒です。曲で勇気付けられるようなことはあまりないですけど、朝起きたら必ず音楽をかけて、移動中も聴いているので、生活の一部になっている感じですね。ここぞというときに聴くというより、日常に音楽が流れています。

――朝に必ず聴く曲があったりはしますか?

桜田 朝聴く曲のプレイリストがあります。ジャンルはごちゃ混ぜですけど、アップテンポが多め。私、アラームは1回しか掛けないんです。その1回に賭けているので(笑)。そこから準備をダラダラせず、テキパキ動きたくて。朝からスイッチを入れるために、アップテンポの曲をかけています。

――カラオケに行って自分で歌ったりは?

桜田 めったに行きません。この撮影で行ったのが結構久々でした。自分では歌わないですね。

ジェットコースターは2倍のテンションで

――青春の光景が盛りだくさんな映画ですが、早くから仕事をされていたひよりさん自身は、学校でそういう経験はあまりしなかった感じ?

桜田 やっぱり仕事と両立をしていたので、胸キュンがあったというより、穏やかな学校生活を送っていました。下駄箱前で待ち伏せとかはなかったですね。

――球技大会には参加しました?

桜田 中学生のときにやりました。何に出たかは忘れてしまいましたけど、ドッジボールだったかな。私、ドッジボールは外野から始める派で、当たらずにいきたいと細々とやっていました(笑)。

――希美が瀬戸山にバスケットボールのシュートを教わるシーンでは、最初はヘタそうに見せていたんですか?

桜田 そうです。希美ちゃんは運動が苦手な設定だったので。撮影前にバスケの練習をする時間もありましたけど、私の場合はへたくそにやる練習をしていました(笑)。

――かえって難しかったり?

桜田 そうですね。私は運動はそれほど苦手でもないので。でも、瀬戸山くんに教えてもらったシュートフォームだけは完璧にしようと、めちゃくちゃ練習しました。

――富士急ハイランドのシーンは、撮影とはいえ楽しめました?

桜田 楽しかったです。初めて富士急に行って、ジェットコースターにも乗れて。

――絶叫系は大丈夫なんですか?

桜田 全然平気です。でも、撮影では叫ばないといけなくて。音声を録るから、みんないつもの2倍くらいのテンションで、大声でキャーキャー叫んでいました(笑)。

返事が来るまでドキドキするのもいいなと

――他にはどんなシーンで、「こういう青春はいいな」と思いました?

桜田 球技大会の途中で、(希美の友だちの)優子ちゃんが男の子のサッカーを見に行くシーンがあって、あれは勇気がいるなと思いました。一人で応援に行くって、なかなかできませんよね。友だちと一緒にクラスメイトの応援に行ったりするのは、私もやりかったなと思いました。

――交換日記は友だちとしたことがあるんでしたっけ?

桜田 ありました。小学生の頃、クラスの女の子と3~4人でノートを買いに行ったんですけど、2週間くらいで自然消滅しました(笑)。

――今はメールの時代で、字を書くこと自体、少ないですか?

桜田 めったにないですね。書いた字は取り消しができないので、自分の言葉に責任を持たないといけないし、返事が来るまでの長いスパンのドキドキは交換日記でしか味わえません。SNSだったらすぐに返せますけど、交換日記だと待っている間に自分の言葉を相手がどう受け取ってくれたか、ワクワクするのも良いなと思います。

友だちとケンカした記憶はありません

――希美が入っていた放送部も良いと思います?

桜田 私、中学のときに放送部に入りたかったので、念願でした。お弁当を放送室で食べれるのがカッコいいという、それだけの理由でしたけど(笑)。

――お昼の校内放送を自分でやりたかったわけではなくて?

桜田 お弁当を食べているとき、流れていたのを聞いてましたけど、いいなと思うくらいだったのかなと。本気でやりたかったら、放送部に入っていたと思います。

――最初に「現実味」というお話がありましが、友だちとケンカや仲直りをするのは、リアルに感じました?

桜田 経験ある方も多いと思います。女の子同士でしかわからないケンカの感じとか、仲直りの仕方とか、通じるものがある方はいてくれるんじゃないかなと。

――ひよりさん自身もありました?

桜田 私は友だちとケンカした記憶はないんです。だから、仲直りも必要ないというか。

――人づき合いが上手なんですね。

桜田 友だちがそんなに多くない、というのもありますけど(笑)。

――希美は英語が得意なんですよね。

桜田 私はいちおう、ラジオで英語の番組(ボキャブライダー)をやらせてもらっているので、発音は良いほうだと思っています。めちゃくちゃ鍛えられていますから。学校のテストでも、英語は比較的、点数が高いほうでした。

10年後も大きな変化はなさそうです

――劇中の交換日記では「10年後の自分って想像できる?」というやりとりがありました。ひよりさんは想像できますか?

桜田 30歳ですよね。何となくは想像できます。絶対この仕事はやってそう。周りの友だちはあまり変わってない気がします。10代の頃から同じなので。大きな変化が起こっている気はしません。

――どうなっていたい、とかもないですか?

桜田 学生役はさすがにできなそうなので(笑)、会社での出来事に焦点を当てた作品とかに出ていられたら、いいなと思います。

――演じたい職業があったり?

桜田 OLさん役をちゃんとやったことがないので、演じてみたいですね。

――確かに10年後に学生役はないでしょうけど、これからしばらくはラブコメが増えるかも。

桜田 20代前半はそういう役が続く気がします。今回発見できたものを、次に活かしたいです。

女性がどう感じたかとセットで

――今回発見できたものは大きかったと。

桜田 自分の見せ方だったり、こうすれば観てくださる方がキュンキュンしてくれるということだったり。言葉にはできませんし、シチュエーションによっても違いますけど、直接キュンキュンさせるのは男性でも、女性がどう感じたかの演技もセットになっていると思うので。そこへの意識の持っていき方は、すごく学べました。

――いろんな作品に出演されている中でも、恋愛ものならではのやり甲斐は感じますか?

桜田 やり甲斐は観てくださる方の反応込みで感じるので、皆さんに鑑賞いただいて、どういう気持ちになってくれるか、すごく楽しみにしています。

――演技の中で、高校時代の青春や恋愛を疑似体験できる楽しみもないですか? 実際はたぶん仕事中心だっただけに。

桜田 私だけでなく、皆さんが憧れるんじゃないですかね。こういうことがあったらいいな……という物語だと思うので。自分では作品という意識のほうが大きかったので、疑似体験を楽しむ感じはなかったです。

今年の夏こそ手持ち花火をできたら

――1年ぐらい前の取材では、「10代最後の夏は手持ち花火ぐらいはしたい」と話されていました。できたんですか?

桜田 言ってましたね。でも、できなかったです(笑)。

――やっぱり仕事で忙しくて?

桜田 いえいえ。ただやる機会がなかったんです。今年こそ、チャレンジしたいと思います。20歳の夏は手持ち花火をしますと、書いておいてください(笑)。

――去年は去年で、夏の思い出もできました?

桜田 基本お仕事で、主演ドラマもやらせていただいて、がむしゃらに駆け抜けた気がします。

――手持ち花火もいいんですが(笑)、20歳になって、ちょっと大人な夏のお楽しみもありませんか?

桜田 今は仕事がすごく楽しいので、あまりそういう部分は考えていません。作品に恵まれているので、今後とも頑張っていきたいです。

自分の演技スタイルを混ぜて良いものができれば

――小さい頃から仕事をされてきて、ここにきて改めて楽しさを感じているんですか?

桜田 そうですね、今回も初めて胸キュン映画のヒロインをやらせていただいて、今後も役がどんどん広がっていく楽しみもあります。今年も来年もメディアに出続けて、ファンの人に元気な姿を見せられたらいいなと思います。

――伸びしろもまだまだありそうですね。

桜田 あります! 20歳とはいえ、まだまだひよっこなので(笑)。いろいろな方と関わって、演技スタイルも様々だと改めて感じています。そこに順応しながら、プラス、桜田ひよりとしての演技スタイルも混ぜて、良いものにしていきたいです。

――仕事以外のことも含め、今、自分磨きでされてることはありますか?

桜田 美髪をすごく頑張っています。髪を切ったので、傷んでいたところが全部リセットできたんです。だから、ドライヤーやトリートメントにすごく力を入れています。

――髪を切ったのは仕事の関係で?

桜田 はい。新たなお仕事へ気持ちを切り替える意味でも、すごく新鮮でした。短いとドライヤーがめっちゃ楽になったのも良かったです(笑)。

Profile

桜田ひより(さくらだ・ひより)

2002年12月19日生まれ、千葉県出身。

小学6年生のときにドラマ『明日、ママがいない』で注目される。主な出演作はドラマ『神様のえこひいき』、『卒業タイムリミット』、『彼女、お借りします』、『silent』、映画『咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A』、『祈りの幕が下りる時』、『男はつらいよ お帰り 寅さん』、『ホットギミック ガールミーツボーイ』、『おそ松さん』、アニメ映画『雄獅少年/ライオン少年』(吹替)など。7月7日公開の『交換ウソ日記』、来年公開予定の『バジーノイズ』に出演。

『交換ウソ日記』

監督/竹村謙太郎 脚本/吉川菜美 配給/松竹

出演/高橋文哉、桜田ひより、茅島みずき、曽田陵介、齊藤なぎさほか

7月7日より全国公開 

公式HP

(C)2023「交換ウソ日記」製作委員会
(C)2023「交換ウソ日記」製作委員会

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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