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愛されないこじらせ女子に「わかる感情はあります」。寺本莉緒に話題のドラマ出演が続く理由

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『サブスク彼女』より(ABC提供)

『サブスク彼女』や『サンクチュアリ-聖域-』など話題のドラマに出演が続く寺本莉緒。2018年に「ミスヤングマガジン」となり、グラビア界を席捲した後、近年は女優活動が充実している。かわいくてクセのある役どころが多いが、本人自身は明るくも理知的な印象。演技への地道な取り組みが実を結んでいるようだ。

私だけど私でない、という感覚が楽しくて

――ドラマ出演が続いていますが、演技への意欲が高まった時期があったんですか?

寺本 もともとお芝居は好きでしたけど、ミスマガジンからグラビアで波に乗れて、演技のお仕事は機会があまりなかったんです。でも、当時からワークショップに通っていて、改めてお芝居の面白さに気づいて、もう一度トライしてみようと。そこから、いろいろな作品に出会えた感じです。

――ドラマや映画は観るのも好きだったんですか?

寺本 幼少期から楽しんでいました。韓国映画の『The Witch/魔女』みたいな、ハートフルというより起伏が激しい作品が好きですね。あと、『ミッドナイトスワン』とか『37セカンズ』とか、幅広く観ています。

――自分で演技をして、壁に当たったようなことはありませんか?

寺本 ワークショップで「ヘタ! やめちまえ!」と言われたりもします(笑)。でも、好きだし面白いので続けていて。役に自分と共通点が見つからないことも結構ありますけど、うまく噛み砕いて少しでも近づくことを心掛けています。

――そこが演技の面白みでもあって?

寺本 自分と違う人のことを、「どういうふうに生きているんだろう?」と考えるのは楽しいです。その世界観に入って、「こういう音楽を聴いているかな。こんな場所が好きかな」とか、役に合わせて自分を変えたりもしていて。

――台本にはないことも含めて。

寺本 そうですね。その期間だけは私だけど私でない、みたいな感覚を楽しんでいます。

ABC提供
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明るい役を求められるなら合わせようと

――寺本さんが演じるのは、かわいくてクセのあるような役が多いですね。そういう役は自分との共通点も見つけやすいですか?

寺本 わかりやすくて、似ている部分は探しやすいです。明るい役が多いのは、普段の自分が根っから明るいからなのかなと思います。

――『サブスク彼女』のなーちゃんは、甘ったるい話し方とか笑い方とか、かなり作った感じですか?

寺本 マンガが原作なので、仕草とかは寄せにいってます。でも、本読みで監督から「あざとく甘くなりすぎないように」と言われました。あくまでマンガの世界でなく、現実にいそうな女の子に……ということで、いろいろ考えて組み合わせました。家で練習して何パターンか作っていって、現場で試して「これがいいね」みたいな。

――声も普段と違いますよね。

寺本 はい。パーンと高めの声を出しています。

サバサバしてますけど寂しがり屋です

――なーちゃんの内面的には「theこじらせ女子」のイメージだったと、コメントされていました。

寺本 愛されたいけど愛されない……という女性は今、世の中に結構いるみたいで、SNSで探ると赤裸々な文章もありました。「好きだから諦められない」とか刺さる部分も多くて、こんな気持ちなのかと勉強して作っていきました。

――そのこじらせぶりは、寺本さんにはないもの?

寺本 私はめちゃくちゃサバサバしていて、全然こじらせないです。

――恋愛でなくても、何かでグルグルしたりストレスが溜まったりはしないと?

寺本 ポジティブなので、たぶんストレスをストレスと感じないんです。落ち込んでも親に話したり、はけ口があってバランスを取っていて。

――なーちゃんがすぐ人を好きになるのは、寂しがりの裏返しのようですが。

寺本 私も寂しがり屋ではあると思います。1人でいると寂しくて、よく親に会いに行ったり、ペットと過ごしたり、すぐ友だちに電話して遊びに来てもらったり。上京した当時は泣きながら親に電話して、心配されたりしました(笑)。

都合よく扱われてもフラれるとは思ってなくて

――先ほど出た役の好みを想像するという部分では、なーちゃんについてはどう考えました?

寺本 フワフワしたスイーツが好きそうなので、そういうカフェに行って、かわいい女の子の観察をしました。あと、私は普段はパンツスタイルが多いんですけど、なーちゃんはいつもスカートなので私も穿くようにしたり、髪をちょっと巻いたりもしました。

――なーちゃんをセフレ扱いしているヨリくんは、ひどい男ですよね(笑)。

寺本 クズですね(笑)。たぶん、どんな女性から見てもクズ男です。なーちゃんは都合よく扱われて、愛情を搾取されていて。

――でも、なーちゃんも別れようとはしません。

寺本 言えないんですよね(笑)。そこが難しいところで、それだけ好きなんでしょうね。自分がフラれるとも思ってなくて、実は愛されてないことに気づくけど、同じことを繰り返してしまう。そういうところを考えながら演じました。

現場で役のテンションにスイッチが入ります

――家で声を上げて泣くシーンは、感情が入りました?

寺本 そうですね。自分と共通点がなくても、共通する感情はあるので。泣くシーンは緊張しますし、泣けなくて時間をいただくこともありますけど、今回は涙が出ました。

――普段は泣くことはありますか?

寺本 あまりないです。意外とメンタルが強くて。感情の起伏がそこまでないので、演じると今までにない気持ちになれて楽しいです。

――演技では感情の殻が破れて?

寺本 考えすぎて頭でっかちになって、うまく感情表現ができなかったり、課題はいっぱいあります。だから、これからもワークショップは通い続けたいと思ってます。でも、なーちゃんは悩むより、楽しむ感じで演じられました。

――1話から、あのハイテンションに持っていけて?

寺本 朝早かったりすると、ちょっとテンション低めなときもありますけど、基本的には、なーちゃんらしく現場にいました。テンションを上げるために音楽を聴いたり、ストレッチをして踊ったりもしていて。それで衣装を着てメイクをしたら、もうなーちゃんになれるというか、スイッチが入る感じがします。

ABC提供
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演じてる間は「間違ってる」とは考えません

――『サブスク彼女』で特に覚えているシーンはありますか?

寺本 最後のほうで、なーちゃんの本性が出たようなシーンがあって。そこはやっていて気持ち良くなりました。やっと言えた、みんなに知ってもらえる……という。力強さと弱さがどちらも垣間見えたのが面白かったです。自分の強みを活かしながら、うまく相手にすり寄っていく。小悪魔感がありつつ、かわいそうになりすぎないとか、いろいろなことを考えながら演じました。

――ドキドキする大人なシーンもありました。

寺本 確かに。でも、モノローグとかで「ヨリくんのことが好きだけど求められない」みたいな描写があって、悲しい顔をしていたり、涙を流していることが多かったですね。

――印象的だった台詞というと?

寺本 「もらえないなら会わせないでほしかった」というのは、彼女の本性そのものですよね。そういう考え方もできるんだなと。それが自分の中で重要なキーワードになって、なーちゃんを作っていけました。常にそう考えているから、男の人に結局は好かれないんだと噛み砕ける感じが、すごく楽しかったです。

――誰かの彼氏を好きになって、結局は都合のいい女になっているなーちゃんが、もし自分の友だちだったら、どんな言葉を掛けますか?

寺本 「今すぐやめなさい!」と言いたいけど、たぶんやめられない子なんですよね(笑)。だから、相談相手になりますかね。「今はどんな人が好きなの?」と聞いてあげる側に回ります。

――自分が演じた役だと、愛おしさも生まれるものですか?

寺本 そうですね。生きていたら、自分が間違っていると思って進むわけではないように、役を演じている間は「間違っている」とか余計なことは考えません。

ABC提供
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20歳前にお店でホステスの研究はできなくて

――Netflixで話題の相撲ドラマ『サンクチュアリ-聖域-』では、主人公の猿桜と親しくなるホステスの七海を演じています。撮影は2年前だったそうですね。

寺本 はい。19歳の頃でした。今観ると、ちょっと恥ずかしいです。若いなって(笑)。幼な気な感じがあります。

――逆に言えば、この2年で顔立ちが大人っぽくなりました。

寺本 そう言われることが増えました。気がついたら……って感じです。

――ホステスの研究もしたんですか?

寺本 本当なら、お店に足を運ぶところですけど、20歳前だったので行けなくて。YouTubeやそういう記事を見て研究しました。「こんな感じで合っているのかな」と思いながら、監督とすり合わせたり。「この行動はホステスはやらない」とか、いろいろな方の意見もいただきました。

――それで、リアルなホステス感が出たわけですね。

寺本 新鮮で楽しかったです。普段の3倍か4倍くらい、テンションを上げました(笑)。

――相撲に馴染みはあったんですか?

寺本 全然なくて、今回の脚本で勉強しました。相撲を取るまでの過程がたくさん描かれていて、その流れを知ったら見応えがまったく違いました。1回負けたら終わりということもあるシビアな世界に、惹かれるものがありました。

Netflix提供
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描かれてない裏の顔も意識しました

――七海のキャラクターはどう捉えました?

寺本 負けず嫌いで芯が強い女性で、そこはブレないようにしつつ、描かれてない部分も多いので。「何だろう?」と思わせるような、裏の顔を意識しました。七海は自分と似ているところが結構あったので、そこは全面的に活かしています。

――どんなところが自分に似ていると?

寺本 負けず嫌い、意志が強い、テンションが高い……。そういうところですかね。

――寺本さんの負けず嫌いはどんなときに出ます?

寺本 友だちとジャンケンをするときも発動します(笑)。負けて「別にいい」とはなりません。テレビゲームやトランプのスピードをやっても、熱くなります。

――仕事ならなおさら?

寺本 「負けないぞ!」という気持ちはあります。でも、人を蹴落としたいというわけではなくて。自分の実力を自分で止めたくない、というのが強いです。

イメージとは全然違うと言われます

――今までの芸能生活で悔しい想いをしたこともありますか?

寺本 全然あります。普通に悲しんだり苦しんだりしますし、「やめたい」と思った時期もありました。オーディションに落ち続けたり、お仕事が楽しめなくなったりして、「違う道もあるんじゃないか」と考えたりもしました。

――どう立ち直ったんですか?

寺本 特にこれということはないです。日々を過ごしていく中で、いろいろな人と出会って、いろいろなことを吸収して。うまく向き合ったら、また楽しめるようになりました。正解が明確にある世界ではないので、ずっと難しいと思っていますけど、今はそこを面白がってやっています。

――今回取材させていただいて、寺本さんは明るくはありつつ、よく演じる役柄のイメージより、落ち着きがあって知的な感じがしました。

寺本 「話してみるとイメージと全然違う」とはよく言われます。世間的には明るいところが定着していますけど、いろいろな面を見てほしいので、役は選り好みしません。どんな役でも、求められたことに応えられたらと思います。

ABC提供
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喜怒哀楽の感情を意識して生活してます

――女優としての将来像を見据えてもいるんですか?

寺本 いつか作品で賞を獲れたらいいなと思っています。日本アカデミー賞をテレビで観ていて、憧れます。

――いいなと思う女優さんもいますか?

寺本 満島ひかりさんはすごく好きです。きっかけは『愛のむきだし』で、満島さんにしかできないお芝居にすごく惹かれました。でも、満島さんみたいになれるとは思っていませんし、直接的に目指すというより、憧れの女優さんという感じです。蒼井優さんもそうですね。私もいつか「この役は自分にしかできない」と言えるくらいになりたいです。

――日ごろから、演技力を磨くためにしていることはありますか?

寺本 感情のコントロールを練習しています。自分があまり起伏がないだけに、喜怒哀楽を意識して生活していて。意外と「ここでこう感じるのか」と思ったりもしますし、最近は人の感情についてよく考えるようになりました。

ラーメンを好きなだけ食べてストレスフリー(笑)

――今後はより女優業に力を入れていくわけですね。

寺本 はい。ただ、そこだけにこだわりがあるわけでもなくて。お芝居は楽しませていただいてますが、ジャンルを問わず、求められるものは今後もやっていきたいです。

――雑誌グラビアを飾っていた頃、「ラーメンを好きなだけ食べる」と発言されてました。

寺本 今も全然変わりません。自分に制限は掛けずストレスフリーで過ごしています。ラーメンなら家系と二郎系。ニンニクがっつり、こってり系が好きです(笑)。袋麺やカップ麺も入れると週7日、毎日食べています。

――スタイルキープには、ラーメンは大敵とも言われますが……。

寺本 私はたぶん体に合っているのかなと思います。食べた分の運動をしたりもしません。羨ましがられますけど、好きなものを食べているだけなので(笑)。両親に感謝ですね。

――イチ女性としては、どう成長していきたいと思いますか?

寺本 20歳を超えてから「大人っぽくなった」と言っていただくことが増えましたけど、まだまだ10代の気持ちなので、ちょっと視点を変えたいです。24歳とか25歳の役もやらせていただくので、心も大人になれたら。一歩引いて周りを俯瞰してみるとか、そういうことですかね。引き続き精進していきます。

ABC提供
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Profile

2001年11月5日生まれ、広島県出身。

2021年にドラマデビュー。主な出演作はドラマ『女の戦争~バチェラー殺人事件~』、『恋に無駄口』、『自転車屋さんの高橋くん』、映画『別に、友達とかじゃない』など。ドラマ『サブスク彼女』(ABC)、『ショジョ恋。』(FOD/フジテレビ)に出演中。『サンクチュアリ-聖域-』(Netflix)が配信中。

『サブスク彼女』

ABC/日曜24:55~

公式HP

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『サンクチュアリ-聖域-』

Netflixで配信中

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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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