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教習所でヒロインと気づかれなかったのは成長の証。白石聖が合コンドラマで「話に入れないのはわかります」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)テレビ東京

人生の悩みや葛藤から、合コンを通じて成長する3人の女性を描くドラマ『とりあえずカンパイしませんか?』。白石聖が自己紹介が苦手で人見知りな主人公を演じている。恋愛ものの清楚なヒロインから、近年はコミカルな演技も目を引くが、今回も空回りぶりで笑わせながら、ハートフルな余韻を深夜に残す。特別な役作りは必要なかったという。

品定めをし合うことがないから楽しくて

――合コンは経験ないとのことですが、どんなイメージがありました?

白石 女性陣がトイレに行って「誰がいい?」みたいな(笑)、品定めをし合うイメージでした。でも、今回のドラマには、そういうシーンはまったくなくて。経験がない私にとっても取り組みやすい、やさしい合コンでした。

――劇中で白石さん演じる香山花火たちがする合コンには、楽しさを感じたと?

白石 そうですね。2話では怪談師の方と合コンして、みんなで座布団を並べて、まさかの怪談を聴いたり(笑)。今まで出会ったことがなかったような人と出会えるという部分では、合コンは面白いなと思いました。

――「ずっと続くわけじゃない関係が心地良い」という台詞もあります。

白石 その台詞は自分の中で、すごく腑に落ちました。もちろん続く人もいるでしょうけど、その場限りだからこその空気感や、あまり知らない人だからできる話もありますよね。それが花火にとって心地良かったと思いますし、私も楽しめました。

盗み聴きみたいになってしまいます(笑)

――合コンのことを事前に調べたりはしたんですか?

白石 特にしないで撮影に臨みました。演じる花火の役に関しても、自己紹介が苦手とか、私自身に通じるものがあったので。強く役作りをするより、「こういう悩みはありますよね?」という部分を観ていただく皆さんと共有できたらいいなと、監督とお話ししました。

――白石さんも自己紹介が苦手なんですか?

白石 こういう取材でも、たとえば「趣味は何ですか?」と改めて聞かれると、「エッ? 私は何が好きなんだろう?」とか、自分に向き合うことを難しく感じることが多いですね。それでうまく答えられないことは、わりとあります。

――花火みたいに話の輪に入れないことも?

白石 あります。撮影の現場でも、自分から話に参加したり、広げたりするほうではないので。私以外の人たちがしている会話を「盗み聞きみたいになっているな」と思いながら聞いていたりします(笑)。だけど、いざ話を振られたら答えられないといけなくて。花火みたいに様子をうかがっています。

役が抱えるコンプレックスを考えます

――花火役はあまり試行錯誤をせず、演じられたわけですか?

白石 私が花火と会ったら、たぶん第一印象は“つかみどころのない人”だと思います。でも、「ああ、わかる」という悩みを抱えていたので、遠い存在とは感じませんでした。私は他の作品でも、演じる役のコンプレックスは何だろうと考えることが多いんです。そこが観る人にとって、愛しさに変わったらいいなと。花火も空気を読みすぎて会話の波に乗れないとか、生き辛さみたいなものを抱えていて。そこを今回の作品のテイストに乗せて、ハートフルに捉えてもらえるように心掛けました。

――花火は1話から4話の間に、合コンを通じて変化していくようです。

白石 1話では、人の目を見て会話できないところを強く出しました。急に変に声が大きくなったり、動きが激しくなったり、コミュニケーションがスムーズにいかない部分を意識して。だけど2話、3話と、花火は怪談が大好きだったり、実はいろいろなこだわりを持っているのが見えてきて。人の目を見られないところを残すと成立しないので、そこは薄くしていったつもりです。一方で、好きなもののことはめちゃくちゃ語ったり、目を輝かせるようなイメージで演じました。

――花火は人見知りという役柄ですが、内気で引っ込み思案な感じではなく、ただ人とズレているのが面白い印象がありました。

白石 監督とも「決して根暗ではない」と話しました。たぶん花火自身、私は好きな言い方ではないですけど、自分を陰キャだと思っていて。でも、私から見たら、そんなことはなく、仲の良い人にはちゃんと向き合えるし、好きなものもたくさんある。だから、うまくお話ができない部分は1話に詰めてきて、2話からは楽しい人というところを出すように変わりました。

自由度が高い現場で作り上げていきました

――ふくだももこ監督と「ご一緒させていただきたかった」とコメントされていましたが、監督の作品をご覧になっていたんですか?

白石 はい。『君が世界のはじまり』が印象深いです。青春群像劇で登場人物をそれぞれの角度で切り取っていくスタイルが、とてもいいなと思いました。あと、ドラマの『深夜のダメ恋図鑑』も観てました。今回、合コンというテーマに当たって、女性目線で今っぽく演出してくださるのが楽しみでした。

――実際、独特な演出はありました?

白石 とってもよく笑う監督だなと感じました。私が「このアプローチの仕方でいいのかな?」と迷ったときも、監督が笑ってくれているとOKだと思えて助かりました。合コンのシーンは長回しをしてくださって。会話劇でテンポを崩さないためだったと思いますけど、空気感を大切にしてくださる方だなと。段取りで何気なくした動きを、「今のいいね」と取り入れてくださったり。生っぽく、その場で作り上げていく雰囲気が強かった気がします。

――他の現場ではないようなことも?

白石 ワンシチュエーションで、合コン相手の役で違う男性ゲストが来てくださるので、同じ空気は二度となくて。毎回新鮮な気持ちで、自由度が高くて楽しめました。

――即興劇的なところもあったり?

白石 話の流れや台詞は決まっていますけど、ストーリーを損なわなければ、誰かが話しているときに何をしても良かったので。花火もメガネを触る動作をしてみたら、監督が「その動きをしてほしい」とたくさん入れることになりました。

空回りしているところは振り切りました

――花火はコミカルなシーンも多いですね。自己紹介の練習を1人2役でしていて落語と間違えられたり、ドッジボールの話をしていて「シュッ、シュッ」と体を延々と揺らしたり。

白石 三浦(直之)さんの脚本の中で、花火が空回りをしている部分を出すのは、とても大事だと思いました。ト書きに「シュッ、シュッと身体を動かして」と書いてあるんです(笑)。そこは忠実にやりました。

――ちゅうちょなく振り切れた感じですか?

白石 そうですね。ここ数年、コミカルな作品に携わらせていただく機会が多かったこともありますし、今回はハートフルコメディで、監督がそういうものを望んでらっしゃる感じがしたので。私も楽しみながらやっていました。

――ふくだももこ監督の『おいしい家族』に主演した松本穂香さんは、「海辺のシーンで急に『でんぐり返しをして』と言われた」と話してました。

白石 私もでんぐり返しはしました(笑)。点描のシーンで何をしても良かったので、自分からやりました。

――1話冒頭の、1人の男に三股をかけられていた花火たちが暴れているシーンは、インパクトがありました。

白石 撮影初日があの修羅場のシーンで、私はクリスマスツリーを叩きつけて破壊しながら、ツリーに申し訳ないと思っていました(笑)。あんなふうに何かを壊したり、家を荒らした経験はありません。してはいけないことをして発散している部分もあって、不思議な気持ちでした。

好きなものに没頭するのは共感できます

――花火の好きなところはありますか?

白石 好きなものにはとことん真っすぐで、自分がやりたいと思えることを見つけようとしていて。何となくやり過ごして生活していくこともできるし、逃げようと思えば逃げられる。でも、そうはしないで、ちゃんと自分と向き合えるのは、すごく強い人だなと。

――花火に好きなものがいっぱいあるのは、白石さんと重なりますか?

白石 花火はオツマミーというマスコットが好きで、私はちいかわが好きです。花火みたいに持ち歩いてはいませんけど、家に飾っています。

――以前はアニメ好きという話をしていましたよね。

白石 今は花火ほどの熱量で語れるかわかりませんけど、没頭するところは共感できます。私は今だと、陶芸が好きになりました。何も考えずに土と向き合う時間は、本当にリフレッシュになります。ものを作ることも好きなので、いい趣味を見つけたと思います。

評価していただいても、まだ手探りな感じです

――2年前の『胸が鳴るのは君のせい』での取材では、傍からは女優活動が右肩上がりに見えていた中で、「自分が今どこにいるのかわからない」と話されてました。今は道が見えている感じですか?

白石 いえ、今もわからないんですよね。出演作が世に出て、皆さんの評価を受けて、やっと任務完了というか(笑)、最後まで終わった感じがするんです。でも、このお仕事はどうしても、撮影してから皆さんの元に届くまで、時間が空きますよね。自分がいくら頑張っても、観る人の反応はすぐわからない。『胸きみ』のあとにも何作かあって、その都度評価していただいたり「面白かった」と言ってもらえると、「自分のしてきたことが合っていた」と思えますけど、まだ手探りという感じです。

――演技は点数が付くものではないですが、自分が成長している実感はありませんか?

白石 いろいろな役をやらせてもらえて、「あの役とこの役が同一人物だとわからなかった」と言われる機会が多くて。それはすごく嬉しいです。

――『カナカナ』の元ヤンOLの役とか?

白石 そうです。今、自動車教習所に通っているんですけど、私の出演作を観てくださっていた指導員の方がいて。なのに『カナカナ』の沙和とも『しもべえ』のユリナとも、普段の私が結び付かなかったみたいで、「エッ?」とすごく驚かれました。自分の引き出しが増えたのかなと思えました。

家で「飲んじゃおうかな」という夜はあります

――『とりあえずカンパイしませんか?』について、「1日の終わりに、一緒にカンパイしながら観てもらえるような作品にできたら」とのコメントもありました。白石さん自身、1日の終わりにそういうことをするんですか?

白石 たまにします。お酒はあまり飲めないんですが、次の日がお休みだったり、観たいドラマがあったりすると、何となく「今日は飲んじゃおうかな」というときがあって。

――どんなお酒を飲むんですか?

白石 梅酒が好きです。あと今、ピーチティーのお酒がおいしいなと思っています。

――「観たいドラマ」というのは、最近だと?

白石 『100万回言えばよかった』は自分の中で、一番観なきゃという作品です。井上真央さんのお芝居が、恋人の遺体が見つかったときの憤りとか、本当にシビれました。怒る場面って単調になりがちですけど、井上さんを観ているといろいろな表現があって、すごいなと思います。

――自分磨きでしていることはありますか?

白石 去年、諸事情で急にスケジュールが空いた時期に、英会話教室に通いました。この機会に身になることをしようと思って。でも、最近は行けてなくて、全然しゃべれるようになっていません(笑)。

芸映提供
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Profile

白石聖(しらいし・せい)

1998年8月10日生まれ、神奈川県出身。

高2のときにスカウトされて、2016年にデビュー。主な出演作はドラマ『I’’s』、『恐怖新聞』、『推しの王子様』、『しもべえ』、『カナカナ』、映画『半径1メートルの君~上を向いて歩こう~』、『胸が鳴るのは君のせい』など。『とりあえずカンパイしませんか?』(テレビ東京系)に出演中。

水ドラ25『とりあえずカンパイしませんか?』

テレビ東京系/水曜25:00~

出演/白石聖、朝倉あき、北野日奈子ほか

公式HP

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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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