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朝ドラとジャニーズ。『舞いあがれ!』の目黒蓮以前にヒロインの恋の相手を演じたのは?

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(写真:ロイター/アフロ)

NHK朝ドラ『舞いあがれ!』でパイロットを目指すヒロインに航空学校で恋心が芽生えた。その相手役を演じているのが目黒蓮。ジャニーズのアイドルグループSnow Manのメンバーで『silent』でも話題だが、近年までジャニーズ勢が朝ドラにメインキャストで出演することは意外と少なかった。ヒロインの恋の相手役はさらに稀だが、過去には誰が務めていたか振り返る。

平成では少なかった出演例

 『舞いあがれ!』で目黒蓮が演じる柏木弘明は、ヒロインの岩倉舞(福原遥)の航空学校の同期。航空一家で育ったエリートでプライドが高い。入学試験で舞と共に面接を受けた。

 舞が人力飛行機で飛んだ体験から「たくさんの人の想いを乗せて空を飛ぶパイロットになりたい」と話したのを、「お遊びと旅客機は違う。頭の中、お花畑か。もう君と会うことはないだろう」と見下して、第一印象は最悪だった。

 入学後、同じ班となって寮生活を始めてからも、柏木は舞らと距離を取っていたが、フライト課程に入ると、舞の苦手な着陸のイメージトレーニングを助け、模型の操縦桿に手を重ねたりも。逆に、スランプに陥った柏木を舞が励ましたりもしていた。

 そして今週、ついに柏木は消灯後の教室で「お前のことが好きだ」と告白した。「自分のダメなところを見せるのは恥ずかしいことだと思っていた。でも、岩倉といると不思議に素直になれるんだ」と。反発した出会いから惹かれ合っていくという、少女マンガ的な王道恋愛パターンになっている。

(C)NHK
(C)NHK

 こうした形で、朝ドラでジャニーズ勢がヒロインの相手役を務めた例は、昨年の『カムカムエヴリバディ』の松村北斗(SixTONES)や、相手はヒロインの妹だったが『おかえりモネ』の永瀬廉(King&Prince)が思い浮かぶ。

 しかし、それ以前となると、平成ではあまり例がない。『舞いあがれ!』には舞の兄役で横山裕(関ジャニ∞)も出演しているが、そもそもジャニーズは近年まで、朝ドラ出演にあまり積極的でないように見えた。

稲垣吾郎や堂本剛はCDデビュー前に脇役で

 振り返ると、『青春家族』(1989年)には当時15歳の稲垣吾郎が、清水美砂の演じたヒロインの弟役で出演していた。のちに国民的スターとなるSMAPが結成されたばかりで、CDデビューの2年前。メンバー全員がオーディションを受けて、稲垣が受かったという。

 『かりん』(1993年)では14歳だった堂本剛が出演している。こちらもジャニーズJr.内での堂本光一とのコンビ名がKinKi Kidsと決まったばかりの頃。細川直美が演じたヒロインの親友の息子という役どころだった。

 生田斗真は12歳で出演した『あぐり』(1997年)が俳優デビュー作。田中美里が演じたヒロインの長男の役だった。

 CDデビューしてからの例だと、TOKIOが1stシングルをリリースした1994年の『春よ、来い』の第2部に、国分太一が出演している。中田喜子が演じたヒロインの元彼の妹の息子という役どころで、メインのポジションではなかった。

 同じTOKIOの城島茂は『芋たこなんきん』(2006年)で、藤山直美が演じたヒロインの44歳で他界した父親役として、回想シーンに登場した。

大阪局制作で目につく関西ジャニーズ勢

 以前の朝ドラではこんなふうに、ジャニーズからヒロインと直接絡む役での出演は少なかった。民放の連ドラでは主役級にキャスティングされることが多いだけに、基本女性のヒロインがメインとなる朝ドラとは、距離を取っていたのだろうか。

 スケジュール的にも、半年以上を抑えられる朝ドラにメイン役で出るのは、グループでの活動や民放のドラマとの兼ね合いから、難しい面もあっただろう。それを考えたら、放送タイミングでは『silent』との掛け持ちとなっている目黒蓮は、どれほどタイトなのかとも思うが。

 NHK大阪局制作の朝ドラに関西ジャニーズの出演がわりとあるのは、スケジュールの部分で比較的調整しやすいことも理由かもしれない。

 『ごちそうさん』(2013年)では、現なにわ男子の西畑大吾が杏の演じたヒロインの次男役だった。当時は関西ジャニーズJr.のメンバーで、これが初ドラマ。丸刈りで母の血を引く食いしん坊という、明るい役柄が評判を呼んだ。『あさが来た』(2015年)でも、波瑠が演じたヒロインの姉(宮﨑あおい)の次男役に。

 『あさが来た』には桐山照史(ジャニーズWEST)も出演。ヒロインが嫁いだ両替屋の三男で家業を継ぎ、銀行の初代頭取になった。『スカーレット』(2019年)では、関西ジャニーズJr.の正門良規(Aぇ! Group)が、戸田恵梨香が演じたヒロインの妹の恋人役で出演している。

『てるてる家族』で錦戸亮が石原さとみの初恋の人に

 そうした中、平成に真っ向からヒロインの相手役を務めたのが、『てるてる家族』(2003年)の錦戸亮だ。当時18歳。関西ジャニーズJr.から関ジャニ∞(当初は関ジャニ8)を結成し、兼任するNEWSでのCDデビューを控える時期だった。

 石原さとみが演じた岩田冬子の初恋の人である桑原和人役。冬子の父親が営むパン店で共に働き始める。貧しい家で育ち暗い性格だったが、彼女と惹かれ合うように。なかなか進展しないもどかしい恋ながら、最終回の前に和人から告白した。

 ミュージカルふうの場面を挿入していた『てるてる家族』。和人は羽根の付いた白いタキシードを着て、『ラブ・ミー・テンダー』を歌いながらフライングで降り立ち、冬子に「ラブミーテンダーや!」と告げる前代未聞の告白シーンとなり、話題を呼んだ。

異色の『純と愛』で風間俊介が夏菜と結婚

 朝ドラらしからぬ救いのなさが物議を醸した『純と愛』(2012年)では、夏菜が演じたヒロイン・狩野純の夫となる待田愛(いとし)役を風間俊介が務めている。

 『3年B組金八先生』第5シリーズ(1999年)でメインの生徒役を演じてから、アイドルとしてCDデビューすることなく役者にシフトしていき、生田斗真と共にジャニーズでは異色な存在だ。

 愛は人の本心が見える能力を持っていて、人間不信状態で他者との接触を極力避けてきたが、裏表のない純に惹かれていった。

 結婚して2人でホテルの開業を目指すが苦難続きで、愛は脳腫瘍で倒れてこん睡状態に。そのまま最終回でも意識が戻ることはなかった。普通の恋愛ストーリーでなかった分、風間の演技派ぶりは際立った。

『おかえりモネ』で永瀬廉がヒロインの妹に告白

 2019年に創業者のジャニ―喜多川氏が他界し、ジャニーズ事務所の体制が変化した後、昨年の『おかえりモネ』に永瀬廉が出演した。King&Princeがデビューしたのは2018年で、当時すでにトップアイドル。

 個人でも2020年に映画『弱虫ペダル』に主演などしていたが、朝ドラにはオーディションを受けてキャスティングされたという。

 清原果耶が演じたヒロイン・永浦百音の幼なじみの及川亮役。“とにかくモテる”という役ではありつつ、東日本大震災で母を失い、父は自暴自棄に。高校を卒業して漁師となり、百音の妹の未知(蒔田彩珠)と親しくなっていく。

 終盤には、同じく震災で心に傷を負っていた未知に「俺なら、みーちゃんの抱えてるもん、想像できる。いつか笑えるようにしてやる」「嵐のとき、ひっくり返りそうな船の中で、みーちゃんに会いたいなって思ってた」などと告白。涙する未知を抱き締めた。ジャニーズのスターならではの、女性視聴者の胸をときめかせるシーンになった。

松村北斗は『カムカムエヴリバディ』の4週で印象を残す

 この『おかえりモネ』の次作で2021年後期の『カムカムエヴリバディ』には、松村北斗が出演。以前から『10の秘密』、『レッドアイズ』などのドラマに出ていて、2015年結成のSixTONESでは2020年1月にCDデビューを果たした。

 ヒロインを3人の女優がリレーした『カムカムエヴリバディ』では、1人目の上白石萌音が演じた橘安子と結婚する雉真稔役。地元の名家の長男で英会話を学んでいて、安子をラジオ英語講座に導いた。

 跡取りとして親の決めた相手と結婚するつもりでいたが、橘家を訪れ「安子さんと出会ってから目に映る景色が一変しました。安子さんに傍におってほしい」と訴える。出征前に結婚。戦争が終わったあと、戦死の知らせが安子らの元に届いた。

 登場したのは、回想シーンを除けば実質4週ほどだったが、学生服も似合う昭和の実直な好青年ぶりは、強く印象を残した。

 放送中の『舞いあがれ!』では、目黒蓮が演じる柏木が舞に対してのみならず、最初の印象と違ういい奴っぽい面を出してきている。舞と柏木がこれからどんな関係になっていくのかわからないが、目黒の繊細さも見せる演技には、朝ドラのヒロインとの絡みでかつてないほどの胸キュンをもたらす予感が漂う。

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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