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“結婚”で話題を呼んだ川島海荷。お葬式コメディに「身近な人にほど意地を張るのはわかります」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
レプロエンタテインメント提供

モキュメンタリー番組『私たち結婚しました3』での期間限定の夫婦生活ぶりが話題になった川島海荷。お葬式の練習をする家族を描く舞台『きっとこれもリハーサル』に出演する。昨年から精力的に舞台に挑んでいるが、今回はユニークな設定のコメディの中で、親に秘密を抱えた役。「家族だから言えないことがあるのはわかります」と言う。

ムズ痒くても作らない自分を出しました

――『私たち結婚しました3』を自分で観ると、どう感じました?

川島 自分がテレているところを、あまり自分で観たくはないですけど(笑)、2人がワチャワチャしていたのをいい感じに編集してくださっていました。「こういうことをしたな」と思い出しながら、視聴者の方にはどう見えるのか、ちょっと不安で。でも、反響がたくさんあって、恥ずかしいし嬉しい……という感じでした(笑)。

――ご両親はご覧になっていたんですか?

川島 観ていません(笑)。身近な人には「海荷がテレているのを観ると、こっちがテレる」と言われて、観てくれた人もいたかもしれませんけど、誰からも連絡は来ませんでした(笑)。親は「知らないうちに観ておく」と言っています。

――娘がキスしていたりするのは、複雑かもしれませんね。

川島 私も父には観てほしくないです(笑)。でも、ウェディングドレスを着られたのは嬉しくて。今までも撮影で着たことはありましたけど、今回は本格的だったので、写真を見せました。そしたら、父がジーンとしていましたね。「いやいや、まだ早いから」という(笑)。

――出演することに迷いはありませんでした?

川島 結構悩みました。お話をいただいて「一度考えさせてください」と。こういう番組には出たことがなくて、ムズ痒い感じがして無理かもしれないと思ったんですけど、やろうと決めました。ありのままの自分を作らずに出そうとした感じです。

――出演したことで、自分の中で変わったことはありましたか?

川島 恥ずかしいものがなくなりそうです(笑)。でも、私自身というより、観てくれる人のイメージが変わったと思います。昔の作品を観てくれていた方から「大人になったね」というコメントをいただきました。

――海荷さんは中1でデビューして、最近も「若く見られる」と話されていました。

川島 自分自身は年齢を重ねて成長しても、世間でそういうイメージがあって。等身大に追い付いたかわかりませんけど、“結婚”がキーワードになる年齢になったんだと、知ってもらえたと思います。

稽古で模索する時間が楽しくなってきました

――『きっとこれもリハーサル』は8月末から稽古に入るそうですが、舞台の稽古期間は特別なモードになります?

川島 最近、稽古期間が好きになってきました。今までは皆さんがアイデアを出していって、私は付いていくのに必死だったんです。それが去年、今年とたくさん舞台をやらせてもらって、ようやく雰囲気に慣れてきて。みんなで模索する時間を、楽しいと感じられるようになりました。

――海荷さんもアイデアを出すように?

川島 そうですね。演出家の方に指導していただきながら作り上げていくのが基本ですけど、その中で自分たちもアイデアを出して、徐々にお芝居を突き詰めていくのが、舞台ならではという感じがします。稽古では遠回りもしながら、より良いものにしていきたい気持ちです。

――稽古期間中は何かを断ったりもしますか?

川島 決まった時間に起きて、決まった時間に寝るリズムができるのは好きです。普段は毎日スケジュールが違うので、明日が休みとなると寝るのが遅くなって、次の日は昼過ぎまで寝てたりしていて。稽古期間中は生活リズムがちゃんとして、自分自身を安定させられます。

――千秋楽までお酒を飲まない、みたいなことは?

川島 ないですけど、1人飲みは増えます(笑)。家で自分に「お疲れさま」という。稽古で体力を使うので出掛けることは減って、その代わり、家飲みを楽しみます。

悩みを家族に話すのは恥ずかしいと思っていて

――『わた婚』でのウェディングドレスの話が出ましたが、『きっとこれもリハーサル』で喪服を着るのは、初めてですか?

川島 お芝居で着たことはあったと思います。お葬式のリハーサルをするという設定だけ聞くと、しっとりしてコメディ要素がなさそうですけど、脚本が本当に素敵で温かくて。衣装に引っ張られず、楽しくやりたいです。

――お母さんが「喪主の練習をしたい」と言い出したというお話で。

川島 家族の関係性で、リアルなところが結構ありました。親と子も、姉と弟も。お葬式のリハーサルの中で、いろいろ気づきがあって、自分も家族のことを考えさせられました。そういうメッセージをちゃんと届けられたらと思います。

――家族関係のリアルというと、海荷さんもご両親に言えないことがあったり?

川島 私は何でも話したいんですけど、心配はさせたくなくて、その狭間ですかね。みんな、そうなんだと思います。この物語の家族もお互いちょっとした壁があるのは、共感してもらえそうです。

――海荷さんが演じる泉美はお父さんとずっと口をきいてなくて、そこは実際と違うわけですよね?

川島 20代後半になってから、親とより話すようになりました。思春期の頃は自分の悩みを話すのが恥ずかしかったりもして、言えないことが多かったです。でも、親って当たり前ですけど昔から知っている人で(笑)、絶対に味方でいてくれるから安心して話せるし、繕わずにアドバイスをくれる。そう気づいて、相談することが増えました。

――じゃあ、本当に結婚したい相手ができたら、すぐに話すとか?

川島 それは結構テレくさいかな(笑)。『わた婚』に出ることもなかなか言えなくて、情報解禁になる直前に「あさってくらいに出るんだけど」と話しましたから(笑)。

感情を表現するコンテンポラリーダンスが難題です

――劇中では「親子で頑固で不器用」という言葉も出てきます。

川島 それは私もあると思います。反抗“期”というより、反抗してしまう部分があって、頑固なんですよね。腹が立つと強く当たってしまったり、考えていることの逆を言ってしまったり。大人になって減りましたけど、今でもムキになってしまうときがあります。普段は感謝を伝えるようにしていても、ふとしたすれ違いで言いすぎてしまったり。家族とか近い相手ほど、意地を張ってしまうかもしれません。そこは演技にもちょっとずつ出して、役を作っていこうと思っています。

――さっき出た脚本を読んでの「気づき」とは、どんなことですか?

川島 お葬式の所作って、知らないことが本当に多いんですよね。いろいろな手順とか、うちの親も「知っておけば良かった」と話していて。そういうことも大事なので、稽古をしながら勉強したいと思いました。その辺もリアルですけど、脚本自体はテンポが良くてハートフル。お葬式の話でも、どうやって暗くなりすぎず、ポップさも加えて演じていくか。考えながら楽しみにしているところです。

――あと、泉美はコンテンポラリーダンスを踊るんですよね?

川島 台本を読んで、一番不安だったのがそこです(笑)。実際にどの程度踊るかは、稽古で決まっていきますけど、コンテンポラリーダンスはやったことはありませんし、芸術的な体の動きを見せないといけないと思うので。プロのダンサーという設定ではないとはいえ、ちゃんとまっとうできるようにしないと。

――昔、グループで踊っていたのが、多少は活きるのでは?

川島 ヒップホップはやったことがあっても、コンテンポラリーだとリズムに合わせて踊るというより、感情を全身で表現するイメージで、難しそうです。ちょうど前回の舞台で、ダンサーさんたちがコンテンポラリーダンスを踊っていて。途中で今回のお話が決まったので、「どう踊るんですか?」と聞いたんです。「大丈夫。すぐできるよ」と言われましたけど、絶対そんなわけありませんよね(笑)。

舞台ではもの作りの職人になった感じがします

――“リハーサル”に関しては、今まで特に大変だったこととか、ありますか?

川島 若い頃、ドラマのリハーサルで怒られすぎて、本気で行くのがイヤになったことがありました(笑)。反抗期でもあったし、怒られるのは嫌いだし、何が何だかわからない感じになって。今もリハーサルはめちゃめちゃ緊張する時間です。何なら本番のほうが落ち着いてやれます。1回でもリハーサルをしていたら、段取りがわかって緊張も薄れますけど、リハーサルは本当に一発目なので。

――本番直前まで、リハーサルでドタバタしていたことは?

川島 グループをやっていたときはそうでしたね。リハーサルと本番を1日でしていましたから。立ち位置や流れを確認して、修正点があれば、その場で直す。そんな繰り返しでした。でも、リハーサルがないまま本番に行くのが一番怖いので。失敗していい場所がリハーサル、というイメージです。

――じっくり稽古をして臨む舞台は、合っている感じですか?

川島 その過程が面白くて、職人みたいな気持ちになります。ドラマや映画はスピード感を持って、どんどん撮っていく。舞台はじっくり稽古してきたものを、本番の何日かに集約させる。もの作り、という感じがするんですよね。

――今回はコンテンポラリーダンス以外では、どんなことが課題になりそうですか?

川島 家族の関係性をリアルに、丁寧に演じたいと思います。出演者が5人だけで、初めましての方ばかり。最初は緊張しそうで、うまくしゃべれるか不安もあります。でも、家族という設定なので、皆さんとコミュニケーションを取って近くなれたら。

――弟役が鈴木福さんですね。

川島 ずっとテレビで観てきたので、「福くん」と言っちゃいそうですけど(笑)、お会いする前から、私の中で勝手に弟みたいな感じがしています。私も「大人になったね」と言われますけど、福さんも大人の階段を上っているところですよね。テレビではわからない面もあると思うので、きょうだいを演じるのが楽しみです。

稽古期間は夜10時にパスタを食べても大丈夫(笑)

――まだ暑い中で稽古に入るかと思いますが、夏バテ対策はしていますか?

川島 夏バテはしたことないんです。でも、稽古に慣れるまでは気も張ると思うので、リラックスする時間も作って、切り替えをうまくしたいですね。いつも舞台の稽古に入ると痩せるんです。いいダイエットになると思います(笑)。

――はっきりわかるほど痩せるんですか?

川島 というか、舞台のときはいくら食べても太りません(笑)。体力も精神も使うからか、普段だったら絶対ダメでしょうという、夜10時にパスタを食べるのも大丈夫。それくらい動いているんでしょうね。今回はダンスもあるので、ちゃんと食べて体力を付けておいて、体調を崩さないようにしたいです。

――公演が行われる秋の楽しみはありますか?

川島 ごはんですね。食欲の秋でしょう(笑)。栗やイモ系がめっちゃ好きです。特に焼きイモ。夏でもスーパーで売っているのを買って、主食にするくらいです(笑)。

――ドンキの焼きイモも買います?

川島 レジ横に置いてあると、つい買ってしまいますね(笑)。一時、自分でイモを取り寄せて、家で焼きイモを作っていましたから。オーブンでじっくり焼いて、アルミホイルに包んで食べていました。それくらい好きなんですけど、ほどほどに楽しみつつ(笑)、まず舞台に集中したいと思います。

*写真はレプロエンタテインメント提供

Profile

川島海荷(かわしま・うみか)

1994年3月3日生まれ、埼玉県出身。

2006年にドラマ『誰よりもママを愛す』で女優デビュー。主な出演作はドラマ『アイシテル~海溶~』、『怪物くん』、『ヘブンズ・フラワー』、『花燃ゆ』、『いだてん~東京オリムピック噺~』、映画『Life 天国で君に逢えたら』、『私の優しくない先輩』、舞台『あたらしいエクスプロージョン』、『ブライトン・ビーチ回顧録』、『こどもの一生』など。『アイ・アム・冒険少年』(TBS系)にMCとして出演中。

『きっとこれもリハーサル』

脚本/赤松新 潤色・演出/土田英生

出演/石野真子、鈴木福、川島海荷、しゅはまはるみ、羽場裕一

9月29日~10月13日/新国立劇場 小劇場 10月22日/COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

公式HP

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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