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『仮面ライダーリバイス』で変身するヒロインの井本彩花 「私にも覚悟を決めたことはあります」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/松下茜

波乱の展開が続く『仮面ライダーリバイス』で、仮面ライダージャンヌに変身するヒロインの五十嵐さくらを演じている井本彩花。劇中では自身の弱さを受け入れ、足りなかった覚悟にも気づき、どんどん逞しくなっている。井本自身がすでに1年に及ぶ撮影の傍ら、大学に進学したりと環境が変化する中、役に投影されたものがあったのだろうか。劇場版の公開を前に聞いた。

演技の葛藤と個人の悩みが重なったのを乗り越えて

――前回の取材は『仮面ライダーリバイス』が4話くらいまで放送された頃でしたが、さくらはその後、だいぶ逞しくなりましたね。

井本 ライダーとしても強くなっていますし、人としても成長を感じます。ウィークエンドに入る前は、代表の(狩崎)真澄さんたちに敬語も使わず「何でよ!」みたいに話していましたけど、組織の一員として上下関係もわかるようになりました。光くんに掛けた「血は繋がってなくても家族にはいろいろな形があっていいんじゃない?」という言葉も、なかなか言えないものだと思います。

――井本さん自身が撮影を通じて何かを乗り越えたことが、さくらに反映されていたりもしませんか?

井本 私はポジティブそうに見えて、メンタル的に落ち込みやすいタイプなんです。ライダーを1年撮ってきた中で、苦しくて気持ちがダウンしていた時期もありました。そこで(劇中の)五十嵐家のお兄ちゃんたちに話を聴いてもらって、助けられました。

――落ち込んでいたのは、演技的に行き詰まって?

井本 さくらを演じていて「どうしたらいいんだろう?」という葛藤がありました。それと私自身の受験とかプライベートでの悩みが混ざって、「ああダメだ」と自分を見失っていた時期が、短期間ですけどあったんです。それで「どうしたらいいかな?」と投げ掛けたら、いいアドバイスをいただけて、乗り越えられました。

――その後は壁にぶつかることもなく?

井本 ストーリー的に三兄妹がどんどん仲違いして、心が痛くなることはありますけど、お芝居は楽しんでやれています。「この台詞はこうしてもいいですか?」といったことも、自分から言えるようにもなりました。

無敵+JKというところを出せたら

――仮面ライダージャンヌに変身することは、最初から聞いていたんですか?

井本 聞いていました。初変身回の台本が来てから、ポーズをどうしようかと、監督やアクション監督、スーツアクターさんと一緒に考えました。

――ポーズは最初から決まっていたわけではなかったんですね。

井本 何も決まっていない状態でした。私からは(両腕で十の字を作る)五十嵐ポーズを絶対入れたいというのと、さくらが打ち込んでいる空手の要素を取り入れたいと要望しました。

――最初からカッコ良くキメられたんですか?

井本 実は初変身は前の映画版(仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ)で先に撮っていて、キレ良くできたので、本編では最初から自信を持ってできました。ただポーズに入るのでなく、反対方向に振ってから動くとか、いろいろ教わりました。

――変身するようになってから、アフレコも増えました。

井本 初めてのアフレコが、確か私の誕生日だったんです。録り始めた時間が遅かったんですけど、18歳になって22時の壁は越えて大丈夫になったので、よく覚えています。

――井本さんの声の演技は上手いですよね。すごく臨場感が出ています。

井本 よくそう言っていただけますけど、初めはどうしたらいいのか、わかりませんでした。初変身回は戦うシーンが長かったので、1回ここまで、次はここまで……と区切って録っていただいて。お兄ちゃんたちのアフレコを見て、すごいなと思っていました。私的には、さくらの無敵の精神とJKらしさを合わせて出せたら、という想いでやっています。

「自分がやる」と決意した場面で成長を感じました

――本編では、“悪の女王”だったアギレラを悪魔と分離させた32・33話が感動的でした。

井本 さくらとアギレラにあそこまでフォーカスを当てていただいて、ありがたかったです。撮影はあれこれあって、2話に1ヵ月くらいかかりました。遊園地のシーンは楽しめましたし、白背景の精神世界では、長めの台詞で気持ちをぶつけられたと思います。

――アギレラに対するさくらの感情は、どう捉えていましたか?

井本 初めは好きではなかったと思います。向こうは「さくらちゃん、さくらちゃん」と寄ってきましたけど(笑)、敵でしたから。でも、さくらが仮面ライダージャンヌに変身して、アギレラのほうはギフから見放されて、立場が逆転していって。「あんた自身で考えて戦いなさい」って、お姉さんのようになっていました。アギレラはさくらと戦って死ぬつもりだったけど、さくらはそうさせなかった。どう思われてもアギレラを救いたい想いはあったので、嫌いではなかったんだと思います。

――32話の最後では、仮面ライダーリバイのキックからアギレラを身を呈してかばって、「私がやらなきゃダメなんだ」と言っていました。

井本 さくらは迷っていたと思いますけど、アギレラの分離は一輝兄ではなく自分がやるんだと、そこで決意したんでしょうね。成長が見られました。

――2人の最後の対決の前に、アギレラに思い出を作らせるように「私と遊んで」と、遊園地に行くのも染みました。

井本 現場では久々の遊園地で、子どもに戻ったように楽しみました(笑)。アギレラ役の(浅倉)唯さんはジェットコースターは苦手で乗れなかったんですけど、私はバイキング船とか引きのシーンで、普通にはしゃいでいました(笑)。

自分が決めたことなので絶対に大学と両立させます

――戦いの最後に「さくらちゃん、大好きだったよ」とつぶやくアギレラに、さくらが「勝手に過去にするな!」と叫んだところは心底シビれました。

井本 白バックのシーンは台本上ではジャンヌとクイーンビー・デッドマンでしたけど、その台詞はアフレコではなく、お芝居でぶつけたいと思っていたんです。そしたら実際に素面で言えたので、すごく嬉しかったです。あそこは見せ場ですから、絶対にキメたいと心に誓って、さくらの感情やこれまでの過程を台本に書き込んで挑みました。

――さらに、悪魔から分離されて「私には居場所がない」と泣き崩れるアギレラを「ここにあるじゃん」と抱き締めるところで、涙腺崩壊でした。

井本 さくらとアギレラの名シーンになったと思います。私が抱き締めたとき、ちょうど良いタイミングで唯さんの目から涙が溢れて。お互い助け合って一緒に作り上げたので、思い出に残りました。

――さくらは「私は覚悟を決めた」とも言っていました。井本さん自身、そういう心境になった経験はありますか?

井本 最近だと、大学との両立は覚悟を決めました。「ライダーをやりながら受験するのは大変じゃない?」と周りに言っていただきましたけど、私は大学に行きたかったし、お仕事ももちろん続けたかったので。入学して、今は午前中が大学、午後から撮影という日が多いです。確かに大変だと感じますけど、忙しくなるのは承知のうえで自分が決めたこと。絶対にやり切ろうと思っています。

台本にないビンタを急にするように言われて(笑)

――他に井本さん的な名場面や、印象的な回はありますか?

井本 38話から大ちゃんと一輝兄、さくらで三兄妹の対立が続いて。初めて大ちゃんのことを「大二!」と呼びましたけど、さくらが一番イヤだったのは、兄たちがケンカしている姿を見ること。なのに、そこに自分も参戦してしまって、ライダーに変身までして戦うなんて、本当にどうしたらいいのか……。40話では初めて、大ちゃんにビンタをしました。台本にはなくて、本番前に監督から急に「やって」と言われたんです(笑)。

――初ビンタなんでしたっけ?

井本 お芝居でビンタされたことは何回もありますけど(笑)、したのは初めてです。しかも、練習なしの本番一発だから、緊張しました。スタッフさんにも私がビンタすることは言ってなかったそうですけど、いつも2台のカメラで撮るのが急に3台になって、周りがざわつき始めて。いざ本番でビンタしたら、普通はパチンと音がするのが、手のひらでなくて掌底で当ててしまって、ガンと鈍い音がしました(笑)。感情的になっている場面だから、そのままやり切って、カットが掛かった瞬間、大ちゃん役の日向(亘)さんに「ゴメン!」と謝りました(笑)。

――さっき出たアギレラ回では、水落ちのシーンもありました。

井本 あれも台本に書いてなかったんです。もうビックリ! まさか制服で川で倒れるとは。そこも本番一発で、根性で乗り切りました(笑)。そのあともお芝居を続けないといけないので「髪に水がかかりませんように。表情が見えますように」と祈って、良い経験をさせていただきました。

大食いは意外なシーンにならなくて(笑)

――小さいことだと、さくらが顔より大きいおにぎりを食べたり、たくさんのおにぎりを食べまくるシーンもありました。

井本 監督はさくらに意外なことをやらせたくて、ああいう演出になったそうですけど、実際の私は食べるほうなので。

――「食べるほう」どころか、バラエティで大食いチャレンジ担当でした(笑)。

井本 だからツイッターでも「中の人のまま」と話題になって(笑)、全然意外ではなくて。残ったおにぎりは全部お持ち帰りして、家で食べました(笑)。

――今でも食欲は落ちていませんか?

井本 高校生の頃とあまり変わってないと思いますけど、18歳にもなると、ちょっとお肉が付きやすくなったのを実感しています(笑)。食べることは好きなので、お弁当は普通に食べて、普段のカロリーを抑え気味にすることを、最近意識しています。

家族の笑顔が一番だと改めて思いました

――『劇場版 仮面ライダーリバイス バトルファミリア』では、より家族の絆が描かれているようですね。

井本 パパとママが乗った飛行機がハイジャックされるストーリーで、家族と命の大切さがメッセージになっています。感動シーンもあれば、コメディチックなシーンもあって、家族みんなで楽しめる映画になったと思います。

――ママさんも活躍しますね。

井本 ママ最強!! と思いました(笑)。五十嵐家で一番強いんじゃないかと。劇場版は坂本浩一監督で、三兄妹も普段と違う戦闘服でアクションをやっています。

――五十嵐家って、井本さんから見て、どう思います?

井本 本編では三兄妹がずっと対立していて、暗いイメージでしたけど、映画はその後のエピソードなので、仲良くなっています。8話で温泉旅行をして以来、久しぶりに家族が揃うシーンがあって、やっと一丸となって行動できました。

――井本家に通じるところもありますか?

井本 家族といるときが一番落ち着くし、家族が悲しむ顔は見たくない。家族みんなが笑顔でいられることが何より幸せというのは、私も改めて思いました。

運動は苦手だったのが新たな道を目指せました

――劇場版では、さくらに宿るかわいい悪魔のラブコフが怖い感じになっています。

井本 ビックリしました。ラブちゃんに手足が生えちゃって、怖かったです。三兄妹が悪魔たちにやられるシーンは本当に頑張りました。初日からアザだらけで、夏なのに腕が出せない状態になって。でも、アクションでアザができるのは仕方ないし、坂本監督曰く“勲章”なので。楽しみながら撮影できて、いい思い出になりました。

――前回、この『リバイス』でアクションに意欲を持ったというお話でしたが、さらに磨きをかけました?

井本 技術的に上がっているといいんですけど、どうなのかな(笑)? 私は運動は苦手なほうで、「アクションなんか絶対できない」と控えめだったのが、今は「もっとやらせてください!」と前向きになりました。五十嵐さくらをやらせていただいてなかったら、この新たな道を目指せなかったと思います。

母への恩返しで家を買ってあげたいです

――この夏もクライマックスに向けた撮影でお忙しいかと思いますが、そんな日々の支えになっているものはありますか?

井本 もちろん家族です。家族の支えがなかったら、私はここまでやってこられませんでした。母が何でもしてくれて、家に帰ればごはんがあるし、服も洗濯されている。おかげで私は疲れを取ることができます。だから、私は今後もひとり暮らしをすることはないと思います。

――そう決めるのは早くないですか(笑)?

井本 本当は自分でやらないといけないことも、頼っているのは恥ずかしいですけど。ライダーをやっていると、現場にいる時間のほうが長い日がほとんどで、私は疲れて帰ってくると、無言になるタイプなんですね。それでも、母はそっとしておいてくれます。話すときはとことん話して、相談にも全部乗ってもらいますし、助けてもらってばかりですけど、いつか恩返しができるようになりたいです。

――井本さんが女優として活躍することが、何よりの恩返しでしょうね。

井本 もっと活躍して、もっと大きな恩返しをするのが、今の目標です。

――国民的美少女から、国民的女優になるとか?

井本 それもありますし、家を買ってあげたいです。

撮影/松下茜

井本彩花(いもと・あやか)

2003年10月23日生まれ、京都府出身。

2017年に「第15回全日本国民的美少女コンテスト」でグランプリ。同年、ドラマ『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』で女優デビュー。主な出演作はドラマ『ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ』、『女子高生の無駄づかい』、『さくらの親子丼3』、『桜の塔』など。『仮面ライダーリバイス』(テレビ朝日系)に出演中。写真集『アオハル。』が発売中。

『劇場版 仮面ライダーリバイス バトルファミリア』

7月22日より公開

公式HP

(C)劇場版「リバイス・ドンブラザーズ」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映 (C)テレビ朝日・東映AG・東映
(C)劇場版「リバイス・ドンブラザーズ」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映 (C)テレビ朝日・東映AG・東映

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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