Yahoo!ニュース

青春SF×政治で話題の『17才の帝国』で女子高生の総理補佐官に。山田杏奈が感じる「大人の難しさ」とは

斉藤貴志芸能ライター/編集者
NHK提供

AIにより地方都市の“総理”に選ばれた高校生らを描くドラマ『17才の帝国』。総理補佐官を務めるヒロイン役で山田杏奈が出演している。『未来への10カウント』のボクシング部員役に続き、今クールの連ドラ2本目のレギュラー。青春SF×政治ドラマという斬新な作品にどう取り組んだのか?

台詞にもキャラクター性が強くて

『けいおん!』や『ガールズ&パンツァー』などのヒットアニメを手掛けてきた吉田玲子の脚本による『17才の帝国』(NHK)。経済的に没落した日本で立ち上がった、地方都市再生の実験プロジェクト「ウーア」。AIに選ばれた閣僚は17才の高校生“総理”、真木亜蘭(神尾楓珠)ほか若者ばかりだった。女子高生の茶川サチ(山田)は憧れの真木から総理補佐官への就任を依頼される。

――『17才の帝国』の脚本は、数々の名作アニメで知られる吉田玲子さんのオリジナル。杏奈さんもアニメにハマった時期があるそうですが、吉田さんの作品を観たことはありました?

山田 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』を観ていました。なので、吉田さんの脚本でお芝居させていただくことは、すごく楽しみでした。

――脚本に独特なものは感じましたか?

山田 私が演じるサチが天真爛漫でキャラクター性の強い役なこともあって、台詞にいつものドラマや映画にないアニメっぽさがありました。「真木くん」と言い掛けて「真木総理」と言い直したりは、意外となかったなと。そういう表現がいろいろあって、サチを作る要素になりました。

――演技的にも今までにないアプローチに繋がったり?

山田 アニメのキャラクターとしてサチがいたら、どういう動きをするだろう? どんなふうにしゃべるだろう? ということは結構考えました。あまりやったことのない表現で、新しい感覚で面白かったです。

――女優として、意欲を掻き立てられる作品でしたか?

山田 賢くて落ち着いている若い閣僚たちの中で、サチはただ1人等身大で、静と動の動の役割を担っていて。サチの行動で物語が動いていくので、それだけの力を出さないといけないプレッシャーはありました。彼女の意志や信念の強さをどう表現するか、常に考えていました。

『17才の帝国』より
『17才の帝国』より

天真爛漫でひとつのことしか見えなくて

――1話でのサチはイノセントな感じがしました。真木たちと比べると、子どもっぽくもあるような。

山田 サチのイノセントな部分から今後いろいろな展開が起きて、サチ自身も変わっていくんですけど、最初のほうは本当に無邪気ですね。真木くんへの尊敬、政治に対する意欲、社会を動かしていきたい想い……。天真爛漫で、これと決めたらひとつのことしか見えなくなってしまう。そういう良い部分を1話では見せられたと思います。

――「ひとつのことしか見えなくなる」というのは、杏奈さんにもありますか?

山田 私はサチほど何かに熱中したことはないかもしれません。サチは意欲を持てるものがたくさん見つかる子で、「次はこれ、次は……」となります。お母さんに「また変わったの?」と言われる場面もあって、すごいことだなと思いました。私にはそんな熱意を持つものはないので。

――演技以外には、ということですよね?

山田 もちろん、お芝居は熱量を持ってやっています。仕事が自分の軸になって、そこを中心に好きなものが見つかります。

『17才の帝国』より
『17才の帝国』より

自分が大人側になると無責任になれません

――今回、政治ドラマの部分で難しいことはありました?

山田 サチは政治の知識があるわけでなくて、会議のシーンでも真木くんや他の閣僚の意見を聞いて、口をポカンと開けて見ている役なので。サチとして素直に驚いたり、尊敬したりするだけでした。

――事前に何かを勉強したわけでもなく?

山田 自分なりに政治にどう向き合うか、考える時間を持ったりはしました。

――サチの家族が抱えている高齢者介護、リストラ、いじめと不登校といった社会問題についても考えたり?

山田 ドラマの中だけの話ではまったくなくて、世の中にたくさんあることなので、自分がそういう環境に置かれたらどうなるかは考えました。

――真木が描いているような理想の社会があったりはしますか?

山田 難しいですね。こっちを取ったら、あっちができなくなる……みたいなことは何にしてもありますけど、そういうバランスがうまく取れた社会だといいなと思います。

――1話でサチは「大人はみんな世の中の問題より自分のことばかり考えている」と言ってました。ストーリー的にも、真木たちに守旧派の高齢者が立ちふさがる展開があるようですが、杏奈さんも大人に反発したいことはありますか?

山田 未成年の頃は憤りを覚えたこともありましたけど、今は自分が大人と呼ばれる側になって。もう自分の考えを表明しようと思えばできる立場だからこそ、1人で無責任に怒っているわけにはいかない。そこが難しいと感じることのほうが、最近は多いかもしれません。

自分の考えを怖がらず話せるのがすごいなと

――一方、サチの真木への恋心も描かれていくそうですが、杏奈さん目線でも彼に惹かれる感覚はわかりますか?

山田 楓珠くんご自身が「迷いながら演じていた」と言っていたのが、完成した映像で真木くんを観ると、あそこまで自分の考えを怖がらずに言える人はいないと思いました。総理大臣ということで前に立たされて、大人がいっぱいいる中でも、取り繕っていない彼自身の考えだから怯まずに話せる。そこは真木くんの素晴らしさですね。

――学園ものの恋愛とはだいぶ違うんでしょうね。

山田 もちろんです。サチの恋心が(実験都市の)ウーアの命運に関わってくるところもあるので。恋心といっても、尊敬や憧れに近い感覚を大事にしました。

――神尾楓珠さんとは4度目の共演でしたっけ?

山田 今度は総理大臣なんだと驚きましたけど、私は楓珠くんを好きでガヤガヤしている役ばかりで(笑)、面白いご縁だなと思います。すごく信頼感があるので、落ち着いてお芝居をさせてもらっています。

若さの感情を役と一緒に大きく出せるか

――現在21才の杏奈さんですが、このドラマに取り組むに当たり、自分の17才の頃を思い返したりもしました?

山田 高校生の頃の若さや勢い、自分の意志だけで動いて失敗するとか、そういうことは私にもあったので、記憶を膨らませて演じていたかもしれません。

――突っ走っていた頃の感覚で?

山田 でも、私は周りや仕事のことを考えずに……ということは、あまりなかったので。それができていたらどうなっていたか、というところから想像したりしました。

――杏奈さんは当時から精神的に大人びていた印象がありますが、振り返ると揺れていたりもしましたか?

山田 あったと思います。今のことでも数年後に振り返ったら、「考え方が幼かった」となる気がするので。過去のことは何かしら「こうすれば良かった」という感情が入ってしまうものだと思います。でも、そのときには他のことは考えていないので、17才のサチならどうするか、というほうを大事にしました。

――「常に役の一番の味方でいたい」という発言をされていたこともありましたが、そういう意味で、サチの味方にはなりやすかったですか?

山田 結構難しかったです。サチは若さが魅力の役で、味方になるというより、一緒に感情をワーッと大きく出すのが、大変なところがありました。あとは、アニメっぽさとリアリティのバランスをどうするかも考えました。

――『17才の帝国』の世界では、AIが大きな役割を果たしています。杏奈さんの現実の生活で、AIとはどう関わっていますか?

山田 テレビ(画面)で映画を観るときに、「○○を検索して」とリモコンに聞くくらいです。あとはゆで卵を作るときに、携帯のSiriでタイマーをかけたり(笑)。

ハマった海外ドラマを暇さえあれば観ています

――現在、この『17才の帝国』に『未来への10カウント』と、連続ドラマ2本にレギュラー出演しています。売れっ子感を味わっていますか(笑)?

山田 どうですかね(笑)。何も変わりませんけど、思い入れのある作品がいろいろな方に届くのは嬉しいです。毎週そのソワソワ感を、1人でより楽しんではいます。

――『未来への10カウント』のために、昨年10月からボクシングの練習をしていたそうですが、鍛えることで精神的な変化もありました?

山田 まだボクシングをやればやるほど、自分が強くないと感じるので、それはあまりないです。ただ、いざというときに自分の身を守れるようにはなりたいと思いました。

――ドラマは自分では日常的に観ていますか?

山田 海外ドラマのほうがよく観ます。今は『シカゴ・ファイア』という消防士のドラマにハマっていて。結構前からシーズン10まで続いているのを、最近観始めました。毎回、火災現場に行ってレスキューのアクションが繰り返されているのを、移動中とか暇さえあれば観ています(笑)。

――女性の救急救命士も出てますが、女優として刺激を受ける部分も?

山田 日本のドラマを観ていると、「こういう表現の仕方はすごいな」とか「私も頑張ろう」と思うことが多いですけど、海外の作品はイチ視聴者として観ています。息抜きという感じですね。

――ご活躍が広がる杏奈さんですが、最近プライベートでも良いことはありました?

山田 携帯を買い替えました。3年半使って、いつ壊れるかわからない状態だったので、ようやく諦めがついて(笑)。ひとつのものをちゃんと最後まで使って買い替えたのが嬉しかったのと、初めて自分で携帯を買って、大人になったなと思いました。せっかく自分で買ったので、また使えなくなるまで使うつもりです(笑)。

*写真はNHK提供

Profile

山田杏奈(やまだ・あんな)

2001年1月8日生まれ、埼玉県出身。

2011年に『ちゃおガール☆2011オーディション』でグランプリを受賞。女優デビューして、2018年に映画『ミスミソウ』で初主演。主な出演作は、映画『小さな恋のうた』、『ジオラマボーイ・パノラマガール』、『名も無き世界のエンドロール』、『ひらいて』、『彼女が好きなものは』、ドラマ『新米姉妹のふたりごはん』、『10の秘密』、『荒ぶる季節の乙女どもよ。』など。ドラマ『未来への10カウント』(テレビ朝日系)、『17才の帝国』(NHK)に出演中。

土曜ドラマ『17才の帝国』

NHK/土曜22:00~

公式HP

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事