Yahoo!ニュース

子役から見た『ちむどんどん』の世界。四兄妹の末っ子を演じた布施愛織が振り返る沖縄での日々

斉藤貴志芸能ライター/編集者
撮影/S.K.

沖縄を舞台にした朝ドラ(連続テレビ小説)『ちむどんどん』。序盤ではヒロインら4兄妹の子ども時代を演じた子役たちの熱演が光った。末っ子の歌子役を上白石萌歌にバトンタッチしたのは、9歳の小学4年生・布施愛織(あいり)。本格的なドラマ出演は初めてだった彼女に、子役目線から『ちむどんどん』の世界を振り返ってもらった。

お父ちゃんと三線を弾いたシーンが楽しくて

「『ちむどんどん』の放送は『ここはこうすれば良かった』と反省しながら観てました。泣くシーンで自分が猿みたいな顔になっていたりしたので(笑)」

 4月に小学4年生になったばかりの布施愛織さん。「七五三で写真を撮られるのが好きになって」というきっかけで4歳から事務所に入り、子ども雑誌のモデルやCM出演をしてきた。本格的なドラマ出演は『ちむどんどん』が初めて。

「オーディションでは、ニーニー(兄)とネーネー(姉)がケンカを始めて泣くシーンをやりました。ちょっとはうまくいって、半分は反省でしたけど、家族にサブライズで受かったと教えられて、うれしくて大泣きしました。今でも思い出すたびにウワーンとなります(笑)」

 演じた比嘉歌子は音楽が大好きな女の子。家の縁側で三線を弾きながら歌うシーンもあった。

「昔ウクレレをちょっとだけ弾いたことがありました。三線は初めてでしたけど、練習は楽しくて。結構すぐ弾けるようになって、先生に誉められました(笑)。お父ちゃんと一緒に三線を弾いたシーンは一番思い出に残っています。今も(『ちむどんどん』主題歌の)『燦燦』を練習していて。歌も大好きで、いつも家の廊下で大声で歌ってます(笑)」

 歌っているのは、9歳にして意外にも「昭和の曲」とのこと。

「『上を向いて歩こう』とか。お母さんが昭和の曲を好きで、私も一緒に聴いていて好きになりました。(台詞で出た)ザ・ピーナッツも名前は知らなかったんですけど、曲は聴いたことがありました」

『ちむどんどん』より (C)NHK
『ちむどんどん』より (C)NHK

家族で真顔対決をしてました(笑)

 『ちむどんどん』の子役パートの撮影は、昨年10月から沖縄ロケと東京のスタジオで20日余りにわたり行われた。愛織さんは実際には妹が1人いるが、劇中では四人きょうだいの末っ子。

「普段もニーニー、ネーネー、のぶネーネーと呼んでいて、私は“歌子”と呼ばれていました。ネーネーたちとはすぐ仲良くなって、ニーニーとは最初あまり話さなかったんですけど、だんだん慣れました(笑)」

 撮影現場は和やかな雰囲気だった様子。

「お父ちゃん(大森南朋)がいるときは一緒に真顔対決をしました。真顔でジーッとにらめっこをするんです。私は耐えられなくて、1秒で笑っちゃいました(笑)。お母ちゃん(仲間由紀恵)には『昔はこういう遊びをしていた』という話を聞きました」

 演技に関するアドバイスももらったそう。

「泣く演技をするとき、お母ちゃんが『泣けなくてもいいよ。自分がそのときにそういう気持ちだったら、それでいいから』と言ってくれました」

『ちむどんどん』より (C)NHK
『ちむどんどん』より (C)NHK

走るシーンはニーニーたちに追い付くのに必死で

 『ちむどんどん』はヒロインの比嘉暢子(稲垣来泉→黒島結菜)が沖縄料理に夢を賭ける物語。ラフテー、ジーマミー豆腐、沖縄そばなどが家族での食事シーンを彩っていた。

「ソーミンチャンプルーを初めて食べて、すごくおいしかったです。普段もゴーヤチャンプルーを食べたりしてました。私はブルーベリーとかイチゴとかサクランボとかフルーツ系が好きですけど、嫌いなものはなくて。ゴーヤも(見た目は真っ黒な)イカスミジューシーも大丈夫でした」

 歌子は体が弱く、走るのも苦手。運動会で万年ビリを卒業しようと、きょうだいの幼なじみで豆腐店の息子の智に、走り方を教わる話もあった。

「私も走るのはクラスで最下位です(笑)。運動会でも毎回ビリですけど、私は楽しくて。でも、(暢子が東京に行くことになって)バスを追って走るシーンは大変でした。ニーニーたちがすごく速くて、私が必死に追い付こうとしても、どんどん先に行っちゃって(笑)」

 川できょうだいたちが水を掛け合ったりして遊ぶシーンは楽しそうだった。

「普段できませんし、すっごく楽しくて、普通に遊んでいる感じでした(笑)。撮り終わったら水がすごく冷たかったけど、遊んでいるときは全然感じませんでした」

『ちむどんどん』より (C)NHK
『ちむどんどん』より (C)NHK

沖縄のゆっくりしたペースが私に合ってました

 神奈川出身の愛織さんにも、沖縄は過ごしやすい場所だったようだ。

「ずっといたかったです(笑)。海が透き通っていて、すごくきれいで。みんなゆっくりなのが私のペースに合っていました」

 というと、普段の愛織さんのペースは……。

「行動が全部ゆっくりで、朝はいつもお母さんに『早くしなさい!』と怒鳴られてます(笑)。妹はせっかちでパパパと用意するんですけど、私は顔を洗うのも遅くて」

 『ちむどんどん』では現在、成長した歌子を上白石萌歌さんが演じている。直接会ったことは?

「あります。すごくやさしかったです。私がヘアメイクさんに『跳び箱を跳べなくて』とお話したら、萌歌さんがそれを聞いたらしくて、その部屋のホワイトボードに『私も跳べないよ』と書いておいてくれました。私がお手紙を書いたら、お返事をくれて『またお手紙交換しようね』と言ってくれて。最近は萌歌さん(adieu)の曲をよく聞いていて、『よるのあと』を口ずさんでいます」

撮影/S.K.
撮影/S.K.

授業で手を上げるのが好きです

 学校での愛織さんはどんな小学生なのだろう?

「クラスでは1・2時間目に黒板を消す係です。きれいに消すのが楽しくて、背が低くて届かないところは友だちに消してもらってます(笑)。遊びの担当では占いの係になりました。自分で占いを見るわけではないんですけど、面白そうだなと思って」

 勉強も「楽しいです」と言う。

「国語と理科が好きです。国語では今『白いぼうし』という文章を読んでいます。理科ではセットを組み立てて電球がつくようにするのが楽しかったです。授業で手を上げるのが好きなんですけど、先生が全然当ててくれなくて(笑)。1日何回上げたか数えてます」

 歌子と違って活発なタイプ?

「友だちは多いです。外に行くより、折り紙をしたり自由帳に絵を描いて遊んでます。2歳下の妹とも仲良くて、家で宿題をやらないで遊んでいると怒られます(笑)」

 妹さんとはどんな遊びを?

「お母さんが手作りしてくれたお人形で遊びます。あみぐるみが20体くらいあるんです。一度それをお父さんに踏まれたことがあって。ビックリして大泣きして、怒って『何なのよ!』と言いました(笑)」

撮影/S.K.
撮影/S.K.

お芝居が一番好きになりました

 趣味には“読書”も挙がっている。

「『はたらく細胞』の小説が好きで、赤血球や白血球や血小板のことをお母さん、お父さんに話そうとすると、『朝からそんなのわからないよ』と言われて、誰にも話せません(笑)」

 特技には“絵を描くこと”も。

「アニメのキャラクターの女の子の絵をよく描いてます。折り紙も好きで、リースを作って部屋に飾ったり、女の子を作ったりしています」

 テレビではあまりドラマを観ることはなかった。

「観るのはほとんどアニメです。『(キラッと)プリ☆チャン』とか『アイカツ!』とかアイドルのアニメが好きでした。でも、『ちむどんどん』に出て、今はお芝居が一番好きです」

 では、大人になっても女優をやりたいと?

「1位は女優さんで、2位で声優さんもやってみたいし、歌もやりたいです。いつかは朝ドラの主役をやるのが夢です」

 『ちむどんどん』では、自分が演じたあとの歌子がどうなっていくかも気になるところ?

「そうですね。でも、ニーニーが将来どうなるかが、何だかもっと気になります(笑)。最後まで観ようと思います」

撮影/S.K.
撮影/S.K.

Profile

布施愛織(ふせ・あいり)

2012年10月15日生まれ、神奈川県出身。

子役モデルとして『おともだち』(講談社)の表紙レギュラー、バンダイ『HUGっと!プリキュア』のスチールモデルなどを務める。ミュージカル『ランの宝物2020』、『逆転人生』の再現ドラマなどに出演。連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK)に出演。

撮影/S.K.
撮影/S.K.

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事