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中身が男子の役で恋愛ドラマ初主演の桜田ひより 「このままではダメ」と10代最後に自覚したこと

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『神様のえこひいき』より (C)小村あゆみ/集英社・HJホールディングス

数々の作品で観る者の心を揺さぶる演技を見せてきた桜田ひより。子役から活躍を続け、現在は19歳に。Huluで配信がスタートするドラマ『神様のえこひいき』では、男子の生まれ変わりで姿だけ女子という難役でW主演している。10代最後の年に、人として期するものもあるという。

演じ方の選択肢は増えた気がします

――昨年12月で19歳になりました。小さい頃からテレビに出ていると「大きくなったね」と言われがちですか?

桜田 そうですね。「今年でもう20歳になるんだ」とか。自分でもあっという間な感じがします。

――途切れることなく、いろいろな作品に出演が続いてきましたが、子役からの脱皮だったり、壁にぶつかることはありませんでした?

桜田 あったかもしれませんけど、記憶にはないです(笑)。

――ひよりさんは『祈りの幕が下りる時』で阿部寛さんに演技を絶賛されたりしながら、いつも「力みすぎないでナチュラルに演じています」と話していました。それは今も変わりませんか?

桜田 いろいろな考え方ができるようになった分、選択肢が増えた気はします。自分が持っている引き出しから、どれを開けるかという悩みは生まれてきました。

――役柄に関わらず、演技の軸にしているようなこともありますか?

桜田 「楽しもう」という精神は忘れないようにしています。躓くことがあっても、もともと楽しいからしているお仕事で、そこが変わらないからこそ、ずっと続けてこられたと思います。

『神様のえこひいき』より (C)小村あゆみ/集英社・HJホールディングス
『神様のえこひいき』より (C)小村あゆみ/集英社・HJホールディングス

18歳で人に興味を持つようになりました

――よく「演技がうまい」と言われることは自信になりますか? ハードルが上がるプレッシャーもありますか?

桜田 あまり気にしていません。一時は周りの評価や見聞きする言葉をすごく気にしていましたけど、そこはもう通りすぎました。自分のことを大切に思ってくれる人、応援してくれる人がいるなら、それだけでいいなと。

――気にしていたのは多感な高校生の頃とか?

桜田 はい。もちろん今も、何か言われたり目にした言葉で傷つくことはありますけど、自分の受け止め方次第だったりもするので。自分の心が広かったら傷つかないはずで、気持ちのゆとりは大事だなと思います。

――日々の生活で、演技力の向上のためにしていることはないですか?

桜田 人に興味を持つようになりました(笑)。前は全然興味なくて、それなのに人に言われたことで傷ついていたのは、たぶん自分が心を開いていなかったからなんです。心を開くようになってから、「この人はこういう考え方をするんだ」とか「こういうときはこんな行動を取るんだ」とわかって、人と接するのも楽しくなってきました。それが去年18歳の年からです。

――なぜ18歳で急に人に興味を持つように?

桜田 このままではダメだと自覚したんです。人格は18歳までに形成されると聞いて、私はやっと触りの部分に行けたのに「もう!?」となって(笑)。私の人格は19歳で形成しようと思っています。

『神様のえこひいき』より (C)小村あゆみ/集英社・HJホールディングス
『神様のえこひいき』より (C)小村あゆみ/集英社・HJホールディングス

華奢な体を大きく見せるようにしました

少女マンガ誌『マーガレット』人気作品のドラマ化シリーズ第3弾となる『神様のえこひいき』。同性の親友に告白してフラれた直後、交通事故で死んでしまった天野弥白(藤原大祐)は、神様のえこひいきで親友好みの女の子・天堂神楽(桜田)に生まれ変わった。「今度こそ恋をする!」と意気込むが、中身が弥白のままの神楽は女子としての振る舞いがわからない。

――今回の神楽は難しい役ではなかったですか?

桜田 中身が男の子という役は初めてではなかったので、そこに対しての態勢はできていました。ただ、恋愛ものの経験値が圧倒的に少ないので、撮っている最中も終わったあとも難しいなと思いました。

――「外出時は男性の仕草に注目しながら人間観察した」とのコメントがありました。演技に取り入れたこともありますか?

桜田 たとえば歩くときも、自分が考えた以上にガニ股にしないと、男の子に見えないことがわかりました。座るときの脚も飲み物を持つときの手もオーバーに広げて、自分の体が華奢な分、大きく見せることをすごく意識しました。藤原くんと「男の子だったら、これはどうする?」「女の子だったら?」と相談し合って、弥白と神楽を作り上げていった感じです。

――恋愛ものの難しさはどんなところで感じました?

桜田 自分がキュンキュンするのはもちろん、観てくださる方にキュンキュンしてもらわないと、成立しないと思うんです。見せ方も台詞の言い回しも、視聴者の方を第一に考えて調整するのが、すごく難しかったです。神楽はキュンキュンする側で、相手の返答次第で変わる表情とかで、同じ気持ちになってくれたらいいなと思って演じていました。

普段はホラー映画ばかり観てしまって(笑)

――ひよりさん自身は恋愛映画やドラマを観て、キュンキュンすることはあるんですか?

桜田 洋画や韓国ドラマだと、特にカッコイイですよね(笑)。映り方とか表情など、勉強になる部分もたくさんあります。

――この映画のこのシーンでキュンとした、みたいなものは?

桜田 女性同士のお話で、『17歳のカルテ』という映画がめっちゃ好きです。精神科病院が舞台で、アンジェリーナ・ジョリーが女性から見ても「なんてカッコイイんだ」と思ったり、共感したり、すごくキュンキュンしました(笑)。自分の演技の引き出しにも入れたいし、何回観ても良いなと思います。

――他のジャンルでも、映画はよく観るほうですか?

桜田 普段はホラー映画ばかり観てしまいます(笑)。ひとり暮らしの方におすすめしているのが、『ドアロック』という韓国映画です。心理的に怖い作品で、主人公と同じひとり暮らしの女性だったら、恐怖で絶対「気をつけよう」と思うはず。私はひとり暮らしをしている友だちの家に見せに行って、「危ないからね」と言って帰ることをしています(笑)。

――ひよりさんはそういう作品をどんな感覚で観ているんですか?

桜田 怖いのが楽しいです。スリルがあって。恋愛ものとは違うドキドキですね(笑)。

『神様のえこひいき』より (C)小村あゆみ/集英社・HJホールディングス
『神様のえこひいき』より (C)小村あゆみ/集英社・HJホールディングス

恋愛は自由だし人目は気にしません

――『神様のえこひいき』で描かれる同性の恋愛については、どんな考えですか?

桜田 自由だと思います。恋愛でいけないことは一切ないはず。もちろん不倫や浮気は良くないとしても、恋する気持ちはオープンでいい。そういうことが、この作品から伝わればいいなと思います。実際に悩んでいて踏み込めない人たちの火種となって、進んでもらえたら嬉しいです。

――同性に恋する感覚は自分でもわかると?

桜田 世の中にかわいい女の子はたくさんいますからね。憧れたり「こういう子になりたい」と思ったり、恋愛に発展するかは別にしても、吸収できることがあって。近くに女の子を好きな女の子がいても応援できますし、その恋を諦めることは全然ないと思います。

――恋愛に限らず、「自分は好きだけど人目を気にして表に出せない」ということもないですか?

桜田 私は人目は気にしません。でも、関わる人が自分をどう思ってくれるかは、気になりますよね。

頼る側から初めて頼ってもらえる側になって

――今回は藤原大祐さんとW主演でした。

桜田 久しぶりに同世代の方たちとお仕事して、大人の方々とご一緒したときは頼る側だったのが、自分が頼ってもらえる側に初めてなりました。引っ張る立場になって「私はこんなにしっかりしていたんだ」とか「こんな考えも持っていたんだ」とか、自分の新たな一面を知ることができて。何より共演した藤原くん、窪塚(愛流)くん、(新井)舞良ちゃんの顔つきが、最初に出会った頃とまったく変わったんです。撮影の中で成長していくみんなを見て、勝手に親心みたいになって(笑)、吸収スピードが本当に速いなと。私も追いついていこうと、刺激し合えました。

――他の現場ではしない振る舞いをしたりも?

桜田 実際に現場を引っ張ってくれたのは藤原くんで、私は後ろから支えることが多かったです。相談されたら乗ったり。同世代の方々と久々に会話して、みんな若いなと思いました(笑)。ちょっとの年齢差でも何かギャップがあったり、そういうのが楽しかったです。

――年齢は近くても、キャリアはひよりさんが断然長いですよね。

桜田 今年で15年目です。でも、私もまだ10代で、いろいろなことを吸収できる年齢なんだと、改めて気づけたのは大きかったです。

『神様のえこひいき』より (C)小村あゆみ/集英社・HJホールディングス
『神様のえこひいき』より (C)小村あゆみ/集英社・HJホールディングス

生まれ変わったらスポーツでプロになりたい

――今回は中身が男子と入れ替わる役で、ひよりさんは転生もののアニメも好きだそうですが、自分が何かに生まれ変わりたかったりもしますか?

桜田 生まれ変わるなら、自分ではない人になりたいです。人間でなくてもいいですし(笑)。男の子になって青春を謳歌して、スポーツに熱中してプロになります。私は運動は平均的にできるほうでしたけど、特化したものがなくて。

――どのスポーツでプロになりたいと?

桜田 カッコイイと思うのはバスケです。王道の野球やサッカーもいいし、球技でいきたいです。

――人間でなかったら、何になりたいですか?

桜田 私は泳げないので、イルカになりたいです(笑)。優雅に泳いでみたい。

――今月公開の映画『おそ松さん』でも、まさかのチビ太役で男の子を演じています。

桜田 人生で初めてツルピカのカツラをかぶって、あんな丸い頭があるのかと思いました(笑)。最初は鏡を見てビックリしましたけど、『おそ松さん』の世界に入ったら「こんな子いるな」という感じで馴染んでいて、安心しました。コメディも大好きで、いろいろなジャンルに挑戦したいです。

『神様のえこひいき』より (C)小村あゆみ/集英社・HJホールディングス
『神様のえこひいき』より (C)小村あゆみ/集英社・HJホールディングス

売れるより自分のペースで伸び伸びと

――『いい部屋ネット』のCMでは「ひより」と自分の名前を呼ばれていて、嬉しいものですか?

桜田 普通にYouTubeを観ていて、途中であの広告が入って「ひより」と言われると、ちょっとビックリします(笑)。不思議な感覚です。

――知名度もより上がっているでしょうね。

桜田 嬉しいですけど、知名度を上げたいとか売れたいというのは、まったくないです。自分のペースで伸び伸びできたらいいなと思います。

――「10代でいろいろ吸収」という話がありましたが、具体的にラストティーンで取り組みたいこともありますか?

桜田 やっぱり去年から人に興味を持ち始めて、引き出しがちょっとずつ増えてきたので、今年も続けたいです。人間観察はもともと好きでしたけど、前は興味がなかった分、浅かったんです。仲良くなりたい、もっと話したいという方たちとコミュニケーションを取って、いろいろな考え方を吸収できたらいいなと思います。

Profile

桜田ひより(さくらだ・ひより)

2002年12月19日生まれ、千葉県出身。

小学6年生のときにドラマ『明日、ママがいない』で注目される。主な出演作はドラマ『犯罪症候群』、『あなたには帰る家がある』、『トップナイフ-天才脳外科医の条件-』、『24 JAPAN』、映画『東京喰種 トーキョーグール』、『咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A』、『祈りの幕が下りる時』、『ういらぶ。』、『ホットギミック ガールミーツボーイ』など。『ミスセブンティーン2018』に選ばれ『Seventeen』専属モデルに。『ボキャブライダー on TV』(NHK Eテレ)に出演中。ドラマ『神様のえこひいき』(Hulu)が3月19日より配信。映画『おそ松さん』が3月25日より公開。4月4日スタートのドラマ『卒業タイムリミット』(NHK)に出演。

Huluオリジナル『神様のえこひいき』

3月19日から毎週土曜に新エピソードを2話ずつ独占配信(全8話)

公式HP

(C)小村あゆみ/集英社・HJホールディングス
(C)小村あゆみ/集英社・HJホールディングス

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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