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怖い女で注目された中村ゆりか。ラブコメ挑戦で社畜OLに。「役だと生き生きする自分にビックリします」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)テレビ東京

一昨年、『ギルティ~この恋は罪ですか?~』での怖い悪女ぶりが話題を呼んだ中村ゆりかが、オフィスラブコメディ『部長と社畜の恋はもどかしい』(テレビ東京系)に主演している。毎日残業ばかりの社畜OLが、必ず定時で帰る総務部長と一夜を共にして、好きになってしまうが「大人だからわかるよな?」と言われ……。今回は喜怒哀楽が顔に出るエネルギッシュなキャラクター。素では穏やかな佇まいの中村ゆりかの振り切る演技の裏側は?

自分と真逆の明るさで面白みを出せたら

――ラブコメディは好きなジャンルですか?

中村 はい。観るのも好きです。「それはやりすぎ!」とか「こんなことはないだろう」とか、勝手にツッコミを入れながら楽しんでいます(笑)。

――どんな作品を観ていたんですか?

中村 小池徹平さんの『ラブ★コン』の世代で、すごく面白いなと思っていました。今回の『部長と社畜の恋はもどかしい』のイメージを掴むために『ホタルノヒカリ』を教えていただいて、観たら綾瀬はるかさんが演じられた干物女の表情がコロコロ変わるのが、すごくかわいかったです。

――『部長と社畜の恋はもどかしい』は、今まで中村さんがやってきた恋愛ものにないところもありますか?

中村 オフィスラブというのが初めてで、会社で巻き起こる恋愛模様にドキドキしながら、臨ませていただきました。ラブコメディのコメディの部分が私の取り組んだことのない分野なので、現場で日々学んでいます。

――中村さんが演じるまるちゃんこと丸山真由美は「どうしよう。好き~」と1人で悶えたりもしますが、台本を読んで「これはどうやれば?」と思う場面もありました?

中村 まるちゃんは感情がすぐ顔に出る女の子で、部長とのすれ違いに悶々とするシーンもあります。こんなにエネルギッシュで明るいキャラクターは初めてで、普段の自分とは真逆ですけど、面白さを出せたらいいなと思いました。皆さんが初めて観るような熱血なところも出てくるので、楽しんで挑みたいです。

休みが取れたら「何をすれば?」となります

――OL役として参考にしたこともありますか?

中村 まるちゃんは周りに頼られているので、テキパキしたできるOLをまっとうしないといけないと、すごく感じました。契約書の作成とかいろいろな作業があって、同世代の会社に勤めている友だちに、パソコンを使う様子を見せてもらったりしました。

――まるちゃんは高速でパソコンを打つんですよね。

中村 前の現場でパソコンを使う役だったので、休憩時間に今回の作品のために、こっそり練習してました(笑)。

――主役としての責任感もありつつ?

中村 主役ということをあまり自分に突きつけると、キュッと萎縮してしまうので。クランクインの前日まではすごく緊張してましたけど、不安を抱えて現場に入らないようにしました。明るいドラマにしたいし、まるちゃんも楽天家な役なので、私も普段から明るい気持ちを持つようにしています。

――まるちゃんは社畜OLと言いつつ、仕事が好きで残業ばかりしているところがあります。中村さんも演技のことに没頭すると、時間が経つのも忘れたりはしませんか?

中村 休みが取れたら、「何をしたらいいんだろう?」と困ったりするほうです。仕事をしているときのほうが生き生きしている自分がいて、そういう自分が好きです。

――まるちゃんがエネルギーをチャージするために食べるブラックボンバーチョコのようなものは、中村さんにはありますか?

中村 ギュッと縮こまっていると体も頭も固くなってしまうので、リフレッシュがてら出掛けたり、親に会ったり、ほぐれることをするのが一番ですね。いったん視野をちょっと広げて、考えこみすぎないようにしています。

(C)テレビ東京 (C)志茂・ぶんか社/「部長と社畜の恋はもどかしい」製作委員会
(C)テレビ東京 (C)志茂・ぶんか社/「部長と社畜の恋はもどかしい」製作委員会

「そのままでいい」と言われるのが一番嬉しい

――中村さんは『家族狩り』の頃からインパクトのある演技を見せてましたが、この世界でやっていける確信もわりと早くから持ってました?

中村 学業にも真剣に取り組んでいて、高校を卒業するときに大学に行くか、お芝居だけでやっていくか迷いました。でも、日常的な生活も大事にしたい想いがあって、進学したんです。だから、役者で生きていく覚悟を持ったのは、大学を卒業してから徐々にですね。

――女優活動の中で壁に当たったこともありますか?

中村 あります。「この表現は自分にできるかな」という不安があって、何とか立ち向かって、周りの方に助けていただきながら乗り越えてきました。もっといろいろな表現を作り出したいですし、お芝居を介して少しでも観てくださった方の支えになったり、何かのきっかけを与えられる役者になりたいと思っています。

――周りの方から言われて、自分の支えになったこともありますか?

中村 一番嬉しいのは「そのままでいいよ」と言ってくださることですね。「もっと自信を持っていい」とか、前向きな言葉を掛けていただくと、変に凝り固まっていたものや要らない思考が崩れて、自然体を活かせます。

――要らないことを考えがちではあるんですか?

中村 何か無駄なことを考えているときがあります(笑)。それが邪魔して、伸び伸びお芝居できないと、すごく後悔しました。

(C)テレビ東京 ヘア&メイク/田中陽子 スタイリング/高木かなえ 衣装協力/CLANE、marina JEWELRY
(C)テレビ東京 ヘア&メイク/田中陽子 スタイリング/高木かなえ 衣装協力/CLANE、marina JEWELRY

演技中は頭の回転も血の巡りも速くなります(笑)

――今までのキャリアの中でも、『ギルティ』で背筋を凍らせるような悪女を演じたことは大きかったですか?

中村 そうですね。新しい引き出しをいただけました。あれがあったからこそ、自分の殻を破って、もっと前進してお芝居に取り組もうと心境が変化しました。

――“怪演女優”と言われたりもしました。

中村 怪演なのかはわかりませんけど(笑)、そういうふうに見ていただけるのは、ありがたい気持ちでいっぱいです。

――中村さんはおとなしい役でも、急に爆発するときの迫力がすごいですよね。役に入ると自然に出るものですか?

中村 日常では本当に役と違って、興奮したりテンションが上がることは少ないし、リアクションも小さいんです。お芝居をしているときだけ、頭の回転も血の巡りも速くなる感じです(笑)。自分でも、役を演じているときはこんなに生き生きしているんだと、毎回ビックリします。

――殻を破ることには、あまり苦労しません?

中村 毎回考えることは多いです。役の性格も、台本を読んですぐに察知できる能力はなくて。監督や脚本家さんと話さないと、わからないことはいっぱいあります。そこを解消できれば気持ちが作りやすいし、理解を深めて臨めば安心してお芝居できます。最初から殻を破って、自信を持ってできているわけではないです。

――今回のまるちゃんは、明るい方向に殻を破っているんですね。

中村 そうですね。今まで演じたことのない役柄で、エネルギッシュな部分をしっかり表現できるように頑張りたいです。

(C)テレビ東京
(C)テレビ東京

三谷幸喜さんの世界に入ってみたいなと

――日ごろから演技力の向上のためにしていることもありますか?

中村 ごはん屋さんに行ったり、街中を歩いたりしているときも、自然と人を観察しちゃいますね。もちろん、ドラマや映画もジャンルを問わず観ることが多いです。「こういうお芝居を自分もできたらいいな」と考えさせられたりもしますね。

――どんな作品で、そういう刺激を受けました?

中村 三谷幸喜さんの映画です。『ザ・マジックアワー』、『記憶にございません!』、『THE有頂天ホテル』……。ユニークなコメディ要素があって、この世界に入ってみたいなと羨ましくなります。

――そういう意味では、『部長と社畜の恋はもどかしい』でコメディをするのは願ったり叶ったりな?

中村 ずっとコメディをやってみたい想いはありました。お話をいただけて、すごく嬉しかったです。

――ラブシーンも多めのようですが、もう慣れました?

中村 慣れないです(笑)。必ず緊張します。でも、今回はストーリー的にもエロさというより、かわいらしくポップな感じで観ていただけると思います。

(C)テレビ東京 (C)志茂・ぶんか社/「部長と社畜の恋はもどかしい」製作委員会
(C)テレビ東京 (C)志茂・ぶんか社/「部長と社畜の恋はもどかしい」製作委員会

楽しんでもらいたい気持ちが強まってます

――まるちゃんは28歳の設定ですが、中村さんはこのドラマが佳境に入る3月に25歳になります。20代後半はどう過ごしていきますか?

中村 まるちゃんを演じていて、頼られる人間ってカッコイイなと思ったんです。私も20代後半は、もっとしっかりした大人になれたら。自分のやりたいことや「こうしていきたい」という主張をしっかり出せる、頼もしい女性を目指していきます。

――今でも10代の頃とは、女優としてだいぶ変わりましたか?

中村 出会った作品の中で心が成長したのは、すごく感じます。一緒にお芝居をするキャストの方に刺激を受けることも多いですし、監督にいただいたアドバイスを次の作品で活かそうと、前向きに態勢を整えられるようになりました。気持ちのコントロールが昔より遥かにできることが、成長と言えるのかなと思います。

――それは大きいでしょうね。

中村 これからも人とのつき合い方はちゃんとしていきたいですし、その中で演技にも柔軟性が出て、もっと新しい自分に出会えるんじゃないかと。見てくださる方に楽しんでもらいたい気持ちも、今は強くなっています。

(C)テレビ東京
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Profile

中村ゆりか(なかむら・ゆりか)

1997年3月4日生まれ、神奈川県出身。

中学1年生のときにスカウトされて芸能界入り。2012年に女優デビュー。主な出演作はドラマ『まれ』、『花にけだもの』、『ギルティ~この恋は罪ですか?~』、『痴情の接吻』、映画『ラーメン食いてぇ!』、『劇場版「きのう何食べた?」』ほか。放送中のドラマ『部長と社畜の恋はもどかしい』(テレビ東京系)に主演。

ドラマParavi『部長と社畜の恋はもどかしい』

テレビ東京系 水曜24:30~

出演/中村ゆりか、竹財輝之助、小野莉奈、永田崇人、佐野岳、丸山智巳ほか

公式HP

(C)テレビ東京 (C)志茂・ぶんか社/「部長と社畜の恋はもどかしい」製作委員会
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芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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