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24年パリ五輪は「コンパクト五輪」に。エッフェル塔、ヴェルサイユ宮殿などを有効活用

斉藤健仁スポーツライター
3年後のパリ五輪に向けて、すでに盛り上がりを見せていた(写真:ロイター/アフロ)

東京からパリへとバトンが渡された。

8月8日(日)、国立競技場で東京五輪の閉会式が行われて、東京都の小池百合子知事からフランス・パリのアンヌ・イダルゴ市長へ五輪旗が手渡された。

3年後の2024年にはパリで夏季五輪が開催されるため、BMXの選手たちがパリの観光地を巡り、エッフェル塔の前ではパリ五輪からの新競技であるダンス「ブレイキン」を披露する映像が流され、印象に残った人も多いのではないだろうか。

閉会式で五輪旗を手にしたパリのイダルゴ市長
閉会式で五輪旗を手にしたパリのイダルゴ市長写真:西村尚己/アフロスポーツ

◆野球・ソフト、空手が外され、ブレイキンが加わる

100年ぶり3回目となるパリ五輪は2024年7月26日から8月11日までの17日間の日程で開催される。

33競技が行われた東京五輪から野球・ソフトボール、空手が外される一方で、ブレイキンが追加されるため32競技が実施される予定だ。

東京五輪から追加され、日本人がメダルを獲得したスポーツクライミング、サーフィン、スケートボードは引き続き行われる。スポーツクライミングは「スピード」が種目として独立、「複合」はボルダリングとリードで行われる。

またIOCは男女平等の観点から、規模を拡大せずに男女同数になるように取り組みを進めている。

そのためパリ五輪から陸上競技・50km競歩にかわって混合競歩となり、セーリングで男女の470級が混合種目に統合、カヌーはスプリントの枠が減り複数選手が同時に競うエクストリームスラロームが採用され、ボクシングでは男子の階級を8から1つ減らす一方で女子を5から6に増やす予定だという。

パリ五輪ではブレイキンが新競技に。ユース五輪にも出場した半井重幸選手
パリ五輪ではブレイキンが新競技に。ユース五輪にも出場した半井重幸選手写真:森田直樹/アフロスポーツ

◆パリ五輪は「コンパクト五輪」に

パリ五輪が謳うのは、東京五輪よろしく「コンパクト五輪」である。

32競技中24競技がパリ中心部から10km以内の会場で、29競技が30km圏内で行われ、95%が既存の施設を利用するという。

メイン会場で開会式、閉開式、陸上、ラグビー(7人制)が行われるのは、パリ郊外にある「サン・ドニ」こと「スタッド・ドゥ・フランス」で、東京のように新たなオリンピック競技場は建設されない。

選手村とメディアセンターなどもパリの中心部から7km、メイン会場のスタッド・ドゥ・フランスから2kmにある空港跡地に設置される予定で、現在、建設中だという。

新型コロナのワクチン接種会場にもなったスタッド・ドゥ・フランスがメイン会場に
新型コロナのワクチン接種会場にもなったスタッド・ドゥ・フランスがメイン会場に写真:ロイター/アフロ

◆パリの名所が各競技の会場に

パリ五輪では、都市全体が世界遺産に指定されているパリ市内や郊外の名所を有効活用し、各競技会場となっているのも特徴だ。

例えばパリ中心部にあるコンコルド広場には仮設で会場を設置し、新競技のブレイキンを筆頭に、スケートボード、BMX、バスケットボールの3×3といった若者の間で人気のある競技が実施されるという。

他にも1900年のパリ万博の会場として建設され美術館として名高いグラン・パレでフェンシングとテコンドー、エッフェル塔の下でビーチバレー、エッフェル塔の前にあるシャン・ド・マルス広場に新設された仮設アリーナで柔道とレスリング、アンバリッド(旧廃兵院)でアーチェリーが開催予定だ。

セーヌ川にかかっているイエナ橋を中心にマラソン、トライアスロン、自転車(ロードレース)、水泳のオープンウォーター、テニスの全仏オープンの会場であるローラン・ギャロスで当然テニスとボクシング、そしてパリから少し離れた世界遺産のヴェルサイユ宮殿でも馬術、近代五種が行われるといった具合だ。

サッカーはパリにあるパリ・サンジェルマンの本拠地のパルク・デ・プランス以外にも、ナント、ボルドー、ニース、マルセイユ、サンテ・ティエンヌ、リヨンで開催される。ハンドボールがリール、ヨットがマルセイユ、そしてサーフィンは南太平洋にある海外領邦のフランス領ポリネシア・タヒチで実施される。

バドミントンと新体操の会場はパリ北部に建設中で、仮設の射撃会場もパリ郊外に建設中だ。飛び込みと水球とアーティスティックスイミング用のプールと、スポーツクライミング用の会場はメイン会場の近くに新設される。

(東京五輪の閉会式で流されたパリ五輪のトレイラー)

◆チケットの販売は23年秋頃の予定

東京五輪は競技全体の97%が無観客で開催されたため、チケットを入手したものの、会場で生観戦することができず残念に思ったファンも多かったことだろう。

カヌーで4大会に出場し3大会で金メダルを獲得したオリンピアンである、2024年パリ五輪の組織委員会のトニー・エスタンゲ会長は「(東京五輪の)閉会式の間、責任の重さと重圧が高まるのを感じた。それは私にとって心地よいもので、パリ2024に向けていい準備はできています。まだまだ残りの3年で、やることはたくさんありますが、私たちの強い意志で大会を成功させることができると信じている」と意気込んだ。

3年後ということでコロナ禍がどこまで影響を与えるかは未知数だが、2年後の2023年にフランスではラグビーワールドカップが開催される。ラグビーのワールドカップが通常通り開催することができれば、その翌年のパリ五輪には大きな問題は生じないはずだが……。

なおパリ五輪のチケット販売開始は2023年の秋頃から予定されている。

開催に強い自信を見せる、オリンピアンのエスタンゲ会長
開催に強い自信を見せる、オリンピアンのエスタンゲ会長写真:ロイター/アフロ

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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