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ラグビーU20日本代表 ポルトガルに勝利し「U20トロフィー」優勝。1年で「トップ12」に復帰!

斉藤健仁スポーツライター
歓喜の選手たち(Photo:Frankie Deges/World Rugby)

 ヤングジャパンが、地球の裏側で歓喜に沸いた!

 ラグビーU20日本代表は、9月10日(日)、ウルグアイ・モンテビデオで行われていたラグビーのU20の2部相当の世界大会である「ワールドラグビーU20トロフィー2017」の決勝で、ポルトガル代表と戦って14-3で勝利。来年、スコットランドで開かれる、世界の「トップ12」で争われる1部相当の「ワールドラグビーU20チャンピオンシップ」への再昇格を決めた。

◇昨年降格し、今年は2部相当の「U20トロフィー」に参戦

 U20日本代表は、2014年に昇格し、2015年、2016年は世界の「トップ12」にあたる1部相当の「U20チャンピオンシップ」に参戦。しかし、2016年は最下位の12位となってしまい2部相当の「U20トロフィー」に降格していた。

 2019年に日本で開催されるワールドカップのためというよりも、その先の2023年、2027年ワールドカップに向けた若い世代の強化のためには、「U20チャンピオンシップ」で戦い続けることが必要不可欠であり、U20日本代表は1年での再昇格を目指し、南米ウルグアイの地に降り立った。

 

 今年の「U20トロフィー」でU20日本代表はチリ代表、カナダ代表、ナミビア代表と同じプールAに入った。初戦のチリ代表戦こそ28-22と苦戦したが、カナダ代表には50-12、ナミビア代表には33-13で勝利し、プールA首位に立ち、決勝に進んだ。

◇決勝はポルトガル代表と対戦!

 決勝戦は、プールBの首位に立ったポルトガル代表との対戦となった。ポルトガル代表はウルグアイ代表、香港代表、フィジー代表と、3試合とも7点差以内の接戦を制し3連勝でプールBを勝ち上がってきた。ただ、U20日本代表とは違って「U20トロフィー」で初の決勝進出となった。

 日本のメンバーを見ると好調の日本代表2キャップを持つ天理大3年のFLファウルア・マキシ、明治大1年のLO箸本龍雅、東福岡高3年の本来はバックローのWTB福井翔太らが先発。ただしSOのキャプテン眞野泰地(東海大2年)が欠場となり、早稲田大で10番を付ける岸岡智樹がインサイドCTBからSOに上がった。インサイドCTBには松岡祐斗(筑波大2年)が入り、ゲームキャプテンはHO武井日向(明治大2年)が務める。また右PRは中野幹(東海大2年)ではなく藤井大喜(大東文化大2年)がスターターとなった。

◇前半はFLマキシのトライで7-0で折り返す

 雨が降り続き、ところどころに、まるで「田んぼ」のような水たまりがある悪条件の中、ポルトガル代表のキックオフで試合が始まった。

 当然ながら、互いにキックを多用する展開となり、ポルトガル代表のFWに押されつつも、U20日本代表はSO岸岡の素晴らしいタッチキックでどうにかピンチを防ぐという展開が続く。

 劣勢の中、先制したのはU20日本代表だった。前半25分、FLマキシが相手のキックをチャージし、そのままボールを拾って右中間に滑り込んでトライ。SO岸岡のゴールも決まって7-0とリードする。

 その後はU20日本代表に反則が目立ち始め、自陣でモールを軸に攻め込まれる時間が続いたが、FW陣を中心とした粘りのディフェンスとSO岸岡のタッチキックが冴えて、どうにか失点を許さない。試合はそのままU20日本代表が7-0でリードして前半を折り返した。

◇後半25分、雷雨のため一時中断。そのまま14-3で優勝!

 後半も雨が降り続く中、U20日本代表のキックオフで始まった。5分、相手のミスや反則で敵陣5mのスクラムを得た。そのスクラムで反則を誘っても、再びスクラムを選択して押し込む。7分、ペナルティートライの判定となり、U20日本代表が追加点を挙げて14-0とリードを広げる。

 

 相手のモールを軸としたFWの攻めに手を焼いて、16分、PGを決められて14-3とされる。その後は互いにキックを使ってテリトリーを意識した戦いが続いていく。だが、雨が強くなり、雷が光り出した25分、選手の安全面を考慮されて14-3のまま一時中断。試合はそのまま主催者であるワールドラグビーの判断により終了が決定、U20日本代表14-3で勝利し、見事に「U20トロフィー」優勝を飾った。

 日本から地球の反対側のウルグアイと移動距離も長く、連戦でケガ人も多く出る中、遠藤哲HC(ヘッドコーチ)が大会前に「大きなプレッシャーがありますが、その壁を跳ね返したい」と言っていた通り、チーム一丸となって見事に優勝を果たし、1年での「U20チャンピオンシップ」の復帰を果たした。

◇「根幹である部分を大切にして戦った」(SO眞野主将)

試合後の遠藤HC、SO眞野キャプテン、HO武井バイスキャプテンのコメントは下記の通り。

遠藤哲HC

「決勝戦の前に、アンストラクチャーアタックの原点に戻ることを選手たち伝え、ポルトガル代表戦に臨んだ。悪天候の中、ハンドリングを駆使したアタックは封印せざるを得なかったが、有効的なキックや、ディフェンスを武器とした、ゲームを展開できたことが勝利につながった。まず、選手たちが勝ちたいという想いを体で表現し、激しくプレーすること。そして、試合前に掲げたゲームプランを遂行すること。決勝戦のプレッシャーの中で試合終了までその2点を貫けたことは、今年の U20 日本代表チームが結成されて、最大の進化と言える。そのことを心から嬉しく、誇りに思う」

SO眞野泰地キャプテン

「今大会の目標であった優勝を達成することができ、嬉しい気持ちでいっぱい。日本国内の合宿から始まった今大会へ向けた準備を確実に実行できたことで、優勝という結果が得られた。今日の試合はU20日本代表のラグビーの根幹である部分を大切にして戦ったので、荒天の中でも勝利することができた。このチームのキャプテンを任されたこと、全員が協力して最後まで成長できたことをキャプテンとして誇りに思う」

HO武井日向(ポルトガル戦のゲームキャプテン)

「チームの目標であった優勝を手にすることができ、とても嬉しい。決勝戦はタフな試合になり、思い通りのプレーができないこともあったが、一人ひとりが仲間のために体を張り続けた結果が勝利につながった。バイスキャプテンとしては、眞野キャプテンを支えたり、チームをまとめることが十分にできたかという反省も有るが、チームスタッフに支えられここまで来られたことに感謝している。今年の U20 日本代表のバイスキャプテンを務められたことを幸せに思う」

◇U20日本代表 ポルトガル戦の先発メンバー

1 安昌豪(明治大2年/大阪朝高出身) 

2 武井日向(明治大2年/國學院栃木高出身)◎ゲームキャプテン

3 藤井大喜(大東文化大2年/黒沢尻工高出身)  

4 堀部直壮(同志社大2年/筑紫高出身)  

5 箸本龍雅(明治大1年/東福岡高出身)  

6 ファウルア・マキシ(天理大3年/日本航空石川高出身)  

7 土谷深浩(筑波大2年/福岡高出身)

8 フェインガ・ファカイ(京都産業大2年/日本航空石川高出身)  

9 末拓実(帝京大2年/長崎北陽台高出身)  

10 岸岡智樹(早稲田大2年/東海大仰星高出身)  

11 福井翔大(東福岡高3年/箱崎清松中&かしいヤングラガーズ出身)

12 松岡祐斗(筑波大2年/明和高出身)

13 山本悠大(関西学院大2年/東海大仰星高出身)  

14 古賀由教(早稲田大1年/東福岡高出身)

15 中孝祐(関西学院大2年/東海大仰星高出身)

リザーブ

16 新井望友(東海大2年/深谷高出身)

17 鎌田慎平(筑波大2年/東福岡高出身)

18 中野幹(東海大2年/東海大仰星高出身)

19 杉原立樹(関西学院大2年/尾道高出身)

20 粥塚諒(流通経済大2年/流通経済大柏高出身)

21 原田健司(同志社大2年/修猷館高出身)

22 侭田洋翔(中央大1年/東京農大二高出身)

◇来年の「U20チャンピオンシップ」はスコットランドで開催

 来年2018年の「U20チャンピオンシップ」はスコットランドで開催される。2017年大会に優勝したニュージーランド、イングランド、南アフリカ、フランス、スコットランド、オーストラリア、ウェールズ、イタリア、アイルランド、ジョージア、アルゼンチン、そして日本の12チームで優勝が争われる(2017年はサモアが降格した)。

 2018年だけでなく、その先もU20日本代表が「U20チャンピオンシップ」で戦い続けて、徐々に順位が上がっていくよう、早め早めに準備をしてほしいところだ。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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