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念願の続編がついに始動。17年前、キアヌが語った『コンスタンティン』への熱い思い

斉藤博昭映画ジャーナリスト
2005年『コンスタンティン』公開時のキアヌ・リーブス(写真:ロイター/アフロ)

大ヒットをとばした作品は、すぐに続編の企画が浮上するが、そこまでのヒットにならなかったにしても、公開から時間をかけて「もう一度、あの世界に会いたい」と続編を望まれる作品もある。

キアヌ・リーブス主演の『コンスタンティン』は、そんな一作かもしれない。9/17、続編の製作が正式に決まったというニュースが流れた。

2005年に公開された『コンスタンティン』は、北米興行収入でその年の29位。大ヒットの基準である1億ドルにも達しなかった。世界興収のランクでも年間15位。日本でも27.2億円で年間17位。アクション大作としては、そこそこのレベル。キアヌ主演では、『スピード』(年間ランキング北米7位、世界8位、日本2位)、『マトリックス』(年間ランキング北米5位、世界4位、日本3位)と比べると、かなり見劣りする。1999年から2003年にかけた『マトリックス』3部作は、日本で興行収入が85億円110億円67億円という記録で、その勢いを『コンスタンティン』に受け継いでほしかったのが、ワーナー・ブラザース映画の目論見でもあった。

『コンスタンティン』は、たしかに内容がややダークなので、冷静に考えれば数字としては、こんなものだったのかもしれない。DCコミックスを原作に、異界の者を見極めることができる探偵が、相手を地獄に送り返す。いわゆる“悪魔祓い”を行う主人公、ジョン・コンスタンティンだが、肺がんで余命を宣告されながら、タバコや酒は止められず、命を削って悪魔たちと闘う姿は、悲壮そのもの。

演じたキアヌ・リーブスも、深い闇を背負いながら、無為に長生きしようなどとは思わず、どこか諦念の哀しみをたたえたキャラクターに恐ろしいまでにハマっていた。得意のアクションもこなしていたし、シンプルなスーツ姿もカッコよく、アイテムへの偏愛などの細部……と、ここからだいぶ後の当たり役、『ジョン・ウィック』につながる味わいもある。いま改めてキアヌ・リーブスのフィルモグラフィーを振り返った時、じつは『コンスタンティン』は彼の魅力を最大限に輝かせた一作だと実感する。だからこそ、こうして17年ぶりに続編が本格始動したことで、映画ファンのリアクションも上々なのかもしれない。

そしてキアヌ自身も、このコンスタンティン役が復活することを心待ちにしていたという。

2005年、『コンスタンティン』で取材した際、キアヌはこのキャラクターに関して「コンスタンティンが暗黒から一筋の光を見つける。そんな旅路に何かを感じてくれたら、僕はうれしい」と語っていた。

肺がんを患っているコンスタンティンの役作りに関しては、減量に加え、医師のアドバイスも受けたキアヌ。「医師からの話はインパクトが大きかった。肺がん患者の不快感を把握でき、それがコンスタンティンの投げやりな態度、肉体の不安感を表現することに大いに役立った」という。

タバコを止められないコンスタンティンに重ね、自身の喫煙に関しては「僕もスモーカー。この役を演じて禁煙しようとは思わず、今も吸ってる。最悪だよね」と笑っていた。

ちなみに劇中でのタバコの吸い方は、どこかぎこちないというか、カッコいい感じに見えないのだが、それはキアヌにとっても意外な結果だったようで……。

「監督のフランシス(・ローレンス)は、僕がクールにカッコよくやってるのを気に入ってたのに、なぜか使われたカットはクールじゃない方だった(笑)。たぶんコンスタンティンが自分を完全にコントロールできない弱さを表現したかったんだろう。結果的に病んでる脆さにつながったから、まぁカッコ悪いのは良しとしよう」

そしてキアヌのコンスタンティン役への思い入れは、いくつものシーンで自分のセリフを、自分の感覚に従って変えたという点からも伝わってきた。

「監督や脚本家が、僕の意見を歓迎してくれたからなんだけど、もちろん僕の提案でうまくいかない部分もあった。ただ、クライマックスの屋上シーンでのコンスタンティンのスピーチは、僕がすべて書いたものだよ。あのシーンこそ、コンスタンティンがどんな男なのかを表現する“基盤”だと信じたからさ」

このように前作でも信頼感を育んだ、監督のフランシス・ローレンスと、脚本/プロデューサーのアキヴァ・ゴールズマンは、続編でも再集結する。キアヌにとっても最高の条件が揃ったわけだ。

地獄の世界も登場する『コンスタンティン』に絡めて、キアヌにとっての「天国と地獄」は何か聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

天国は、オートバイに乗ってる時。あとは……友達と一緒に過ごす時間。そして地獄は、後悔する瞬間かな

17年を経た今も、おそらくキアヌの返答は同じであるような気がする。

『マトリックス』のネオも復活させたキアヌ・リーブスが、コンスタンティン役をどのように再生させるのか。今後の展開を見守りたい。

『コンスタンティン』の日本公開時に、監督のフランシス・ローレンス、共演のレイチェル・ワイズと来日したキアヌ
『コンスタンティン』の日本公開時に、監督のフランシス・ローレンス、共演のレイチェル・ワイズと来日したキアヌ写真:ロイター/アフロ

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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