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新型コロナによって、日本の映画館でしばらく、そしていつまで続く、ハリウッド大作の「不在」

斉藤博昭映画ジャーナリスト
ジョーカーの元カノ、ハーレイ・クインの主演作は何とか間に合ったが…

3月20日、DC映画の『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』が日本で「無事に」公開を迎えた。しかし今作の後しばらく、ハリウッド大作は日本の映画館で、その存在感を小さくしていく。

新型コロナウイルスの世界的蔓延によって、アメリカの多くのシネコンを含め、世界各国の映画館が営業を休止しているなか、日本はほぼ通常に近い状態、つまり「映画館に行けば何か映画を観られる」ことになっている。もちろん、この状況下で映画館へ行こうという人は限られているだろうが、それでも他の多くのエンタメやスポーツが中止や自粛を余儀なくされるなか、映画に息抜きを求める人もいる。

春休みは映画館にとって、一年間で最も集客を期待できる時期のひとつ。しかし今年は大ヒットを予感させる多くの作品が公開延期となった。春休み映画ではディズニー/ピクサーの『2分の1の魔法』や、多くの子供たちの動員も予想された『映画ドラえもん のび太の新恐竜』や『映画しまじろう しまじろうとそらとぶふね』、『劇場版ウルトラマンタイガ ニュージェネクライマックス』、『映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議の1日』、さらに『ソニック・ザ・ムービー』や『ドクター・ドリトル』といったファミリーエンタメ系は軒並み公開延期となった。

4月以降の予定も『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』、『ムーラン』、『クワイエット・プレイス PARTII』、『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』、『ブラック・ウィドウ』と次々と延期が決まった。これから延期になる可能性があるのが、全米6/5公開、日本6/15公開の『ワンダーウーマン 1984』。まだ2ヶ月先だが、この状況を見る限り、予定どおりの公開となるかは不透明だ。

『ムーラン』は当初、日本では4/17公開。それを5/22に変更したわけだが、その後、全米での公開も延期され、再公開日が決まっていない状態。同じディズニーで、5/1全米公開予定だった『ブラック・ウィドウ』の延期が決まったので、現実的に考えて、『ムーラン』の日本5/22公開は可能なのか? 全米公開の目処が立たない作品を、日本だけ予定どおり公開というのは、前例がないからだ。ただし、ワールドプレミアでの上映は3/9にロサンゼルスで行われているので、日本での先行公開はありえるだろう。

あの名作アニメーションの実写化『ムーラン』は、延期によって日本公開が5/22公開に決まっているが…
あの名作アニメーションの実写化『ムーラン』は、延期によって日本公開が5/22公開に決まっているが…

『ハーレイ・クイン』が無事に公開されたのは、この作品がすでに全米で公開済みだったから。まだ新型コロナがアメリカやヨーロッパで急拡大していなかった2/7に公開されていた。そうなると、これからしばらくハリウッドの話題の新作が、全世界的にしばらく観られない状況が続くのは間違いない。ロサンゼルスでは3/19(現地時間)から1ヶ月間の外出自粛令が出され、アメリカ各都市では少なくとも8週間くらいはシネコンの本格的営業はなさそうとのニュースもある。

『ハーレイ・クイン』と同じく、すでに全米公開済みの作品ということで、5/1公開『透明人間』、5/26公開『ランボー ラスト・ブラッド』などが控えるが、夏休みに向けて明らかに大作が少ない「寂しい」状況になるだろう。『ソニック・ザ・ムービー』、『ドクター・ドリトル』といった延期作がその合間に入るだろうが、超話題作というわけではない。

さらにこのままアメリカでの新作公開の停滞が長くなれば、夏休み映画にも影響が出てくる。「007」が今年の11月、「ワイスピ」が来年4月に公開延期を決めたということは、今年のサマームービー超大作はそのまま予定どおり公開したい、という意向もあるからだ。

そのラインナップは……

前作の熱狂的ファンも多く、日本でも大ヒットの期待がかかる

トップガン マーヴェリック

全米6/24公開、日本7/10公開

ディズニーランドのアトラクションの映画化

ジャングル・クルーズ

全米・日本7/24公開

なつかしの面々が再結集する

ゴーストバスターズ/アフターライフ

全米7/10、日本夏(予定)公開

こちらも日本で大人気キャラ、大ヒット確実の

ミニオンズ』新作

全米7/3公開、日本7/17公開 →完成間に合わず延期決定(3/20)

『モンスターズ・インク』監督による、ディズニー/ピクサー最新作

ソウルフル・ワールド

全米6/19公開、日本夏公開

じつに34年ぶりにトム・クルーズのあの勇姿が帰ってくる、『トップガン マーヴェリック』
じつに34年ぶりにトム・クルーズのあの勇姿が帰ってくる、『トップガン マーヴェリック』

今後の世界での新型コロナ感染の状況によって、これら夏のブロックバスターが一気に公開を断念する可能性は、なきにしもあらず。『ワンダーウーマン』や『トップガン』あたりの6月公開作の決断が重要なカギとなりそう。日本で今後、爆発的感染が起こらず、映画館がこのまま営業を続けた場合、日本映画の『るろうに剣心 最終章 The Final』(7/3公開)、公開延期が決まった『映画ドラえもん のび太の新恐竜』(8/7公開)などがあるにしても、かなり寂しい夏休み映画興行になってしまう。

そもそも、この世界的パンデミックの中で、映画などと呑気なことを言っている余裕もないかもしれないが、これら夏休み映画が予定どおり日本で公開されることになれば、状況は「落ち着いてきた」という証であり、そうなってほしいと祈るばかりだ。

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』

全国公開中 配給/ ワーナー・ブラザース映画

(C) 2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics 

『ムーラン』

5月22日(金)公開 配給/ウォルト・ディズニー・ジャパン

(c) 2020 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

『トップガン マーヴェリック』

7月10日(金)公開 配給/東和ピクチャーズ

(C) 2019 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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