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より宇宙を体感するために。『ファースト・マン』をIMAXで観るときの留意点

斉藤博昭映画ジャーナリスト

まだまだ大ヒット中の『ボヘミアン・ラプソディ』は、リピーターに支えられて記録を更新中だが、音響に特化したドルビー・アトモス、よりスクリーンの迫力が味わえるIMAXなど、公開当初から上映形式を比較して楽しむ人も多かった。その楽しみ方は現在もキープされ、とくにIMAXの「近さ」はリピーターに熱く支持され、現在も多くのシネコンで『ボヘミアン』IMAX上映が続いている。

ただし、2月8日からは『ファースト・マン』『アクアマン』という2本が公開され、IMAX上映もあるので、『ボヘミアン』の上映回数はやや減少する。

IMAXの映画体験がさらに定着してきた

今から10年前、『アバター』などの革新作が生まれ、一大ブームの兆しをみせた3Dだが、ここ数年、3D上映の超大作がそれほど大きな話題になることはなくなった。4DX、MX4Dといった新たな形態も爆発的ブームには至っていない。そのような状況で堅調に数字を伸ばしているのがIMAXで、2018年には世界総興行収入が初めて10億ドルを突破した。

2018年のIMAX映画興収トップ10のうち、IMAXならではの映像、つまりIMAXカメラで撮影した作品やIMAXのスクリーン比率に拡大した作品は6本を占める。これらは「IMAX DNA」と呼ばれるが、2月8日公開の『ファースト・マン』も、まさにそんな作品。1969年、人類で初めて月面に降り立ったニール・アームストロング飛行士の苦闘を描く作品で、宇宙のシーンがIMAX65ミリカメラで撮影されている。しかしメインとなる地球上では、アームストロングと家族のシーンなどは16ミリ、NASAでのシーンは35ミリと、カメラが使い分けられているのだ。つまり、地球上と宇宙のシーンの「違い」をIMAX版で「体感」できるのである。それがどんな感覚になるのかは、ぜひIMAXスクリーンで確かめてほしいのだが、ここでちょっと注意してほしい点がある。

操縦席の密閉感、窓外の美しさ、振動やスピード感などは、通常のスクリーンでも異様なレベルで体感できる。
操縦席の密閉感、窓外の美しさ、振動やスピード感などは、通常のスクリーンでも異様なレベルで体感できる。

『ファースト・マン』をIMAXで観る際の、劇場と座席の選択である。IMAXは基本的に巨大スクリーンが売りなのだが、劇場によってその大きさの「体感度」は異なる。IMAXはほとんどの劇場でスクリーンサイズを公表していないので、数字での判断は不可能。つまり、自身の体験や口コミが頼りになる。『ファースト・マン』の場合、できるだけ「大きい」と感じる場所で観てほしい。

ひじょうに大切なスクリーンとの位置関係

というのも、筆者が1回目に観たのは、トロント国際映画祭のIMAXシアターで、中段の席でも視界がスクリーンでいっぱいになる作りだった。IMAXフォーマットがカギとなるあるシーンの仕掛けに、まさに宇宙に吸い込まれるような感覚を味わったのだが、2回目にTOHOシネマズ日比谷のIMAXの中段で観たときは、明らかにこの感覚が少なかった。2回目だったからではなく、実際に近くの席で観た人たちに感想を聞くと、そのIMAX効果に「気づかなかった」と口を揃えていた。

東京のIMAXシアターを例にすると、TOHOシネマズ日比谷のように、大きさの「体感度」が少ないスクリーンでは、できるだけ前方で観た方がいい。TOHOシネマズ新宿109シネマズ木場の場合は、前方〜中段あたりでも効果を体感できるし、座席に対してスクリーンが大きいと評判の109シネマズ二子玉川T・ジョイ PRINCE品川あたりなら、中段でも十分にその効果を味わえるのではないか。

もちろん、それぞれの人の好みや体感度に違いはあるにせよ、『ファースト・マン』のような作品は、とくに各IMAXシアターの口コミなどを参考に、劇場や座席を選択してほしいと思う。最高のシチュエーションで鑑賞すれば、アームストロング飛行士が月に降り立つ瞬間を、おそらく五感で追体験できるのだから……。

『ファースト・マン』

2月8日(金)より、全国ロードショー

配給:東宝東和 (C) Universal Pictures

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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