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年末から2017年にかけ、ハリウッド大作に日本人が続々。ローラ、窪塚、イッセー尾形、たけし…

斉藤博昭映画ジャーナリスト
アンデッド軍団にマシンガンをぶっ放つローラ

渡辺謙を筆頭に、ハリウッドや海外の映画に出演し、活躍を続ける日本人俳優たち。この年末から来年にかけては、いわゆる「ハリウッド大作」に絡むケースが目立ち、例年以上にその動向が話題になりそうだ。

ミラからは「スイート」との賛辞が

12月23日に世界最速で日本で公開される『バイオハザード:ザ・ファイナル』。シリーズ6作目にして最終章となるこの新作には、日本からローラが参加している。日本生まれのゲームを原作にしたシリーズなので、これまでも渋谷が舞台になり、中島美嘉が出演するなど、日本の観客に向けたサービスがあった『バイオハザード』。とはいえ、日本でも演技経験の少ないローラが、なぜ!? と思うかもしれない。しかし彼女がオーディションを受けて役をつかんだのは事実。ミラ・ジョヴォヴィッチが演じるヒロインのアリスとともに戦う、女戦士のコバルト役のローラは、たしかに出演シーンはそんなに長くないものの、英語のセリフや過激なアクションも違和感なくこなしている。日本のTVとはまったく違うイメージの彼女を、スクリーンで目にすることができるだろう。

筆者がミラ・ジョヴォヴィッチにインタビューしたとき、ローラの印象を聞くと、次のような答えが返ってきた。

ローラが日本ではポップスターのような存在であることを聞かされていた。でも現場にやって来た彼女は、とにかくまじめ。衣装やメイクアップ、ヘアスタイルについて自ら意見を出して、積極的に取り組んでいた。本当にスイートでやさしく、才能がある。誇りに思っているわ

多少、社交辞令的なコメントではあるが、ミラも共演を楽しんだようだ。

アカデミー賞にも、どれだけ絡むのか!?

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続いて1月21日に公開される『沈黙 -サイレンス-』。遠藤周作の「沈黙」を原作に、江戸時代の長崎を舞台にした作品なので、日本人キャラクターが多数出てくる。監督は巨匠中の巨匠、マーティン・スコセッシ。本年度のアカデミー賞レースにも絡む、ハリウッド大作である。この点は、2006年のクリント・イーストウッド監督『硫黄島からの手紙』に似ているかもしれない。

主人公の宣教師はスパイダーマン役でスターになったアンドリュー・ガーフィールドだが、陰の主役と言ってもいいキチジローを任されたのが、窪塚洋介。最初のオーディションから約2年もかけて役をつかみ、彼にとってのハリウッドデビューとなった。宣教師のロドリゴを裏切りつつも、自らの行為に苦悶し、彼に赦しを乞おうとする難役のキチジローで、英語のセリフにも挑んでいる。ちなみに窪塚は本作の後にも一本、アメリカ映画に参加した。

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そして、すでに『マイティ・ソー』や『バトルシップ』などハリウッド大作を何度も経験している浅野忠信が通辞(通訳)役。本人曰く「お笑いのボケとツッコミで分類すれば、これまで演じた役はボケ側が多かった。この通辞の役は徹底的なツッコミ役。初めての経験」ということで、その新境地は必見である。浅野は、1月7日公開の主演作『壊れた心』もフィリピンとドイツの合作。

さらに注目なのが、すでに本作でLA映画批評家協会賞の助演男優賞で次点になるなど、アカデミー賞助演男優賞ノミネートも有力視される、イッセー尾形。ロシアのアレクサンダー・ソクーロフ監督の『太陽』では昭和天皇を演じた彼が、井上筑後守を名演。長崎のキリシタン弾圧を指揮する奉行で、一見、柔和そうな雰囲気ながら、とことん嫌らしく物事を推し進める。セリフ以外の仕草も見事で、スコセッシ監督もうならせたという。オスカー候補となれば、俳優としては『バベル』の菊池凛子以来、10年ぶりとなる。

その他、小松菜奈(別人のよう!)や加瀬亮塚本晋也らが共演。今後の賞レースも含め、世界的に注目が集まりそうだ。

ビートたけし、桃井かおりにも期待

4月には『GHOST IN THE SHELL ゴースト・イン・ザ・シェル』が公開(全米は3月31日)。あの「攻殻機動隊」のハリウッド実写版で、主演はスカーレット・ヨハンソン。ビートたけしが荒巻大介を演じるほか、桃井かおり福島リラが共演する。香港やニュージーランドで大がかりな撮影が行われた。

GHOST IN THE SHELL〜』のスカーレット・ヨハンソン
GHOST IN THE SHELL〜』のスカーレット・ヨハンソン

メル・ギブソン監督で、第二次大戦の沖縄戦を描いた『Hacksaw Ridge』も2017年、日本公開予定。主演は『沈黙〜』と同じくアンドリュー・ガーフィールド。日本人キャストも少しだけ出てくるが、メインではなく有名どころは出演していない。

『沈黙〜』も『GHOST〜』も、原作が日本であり、日本人キャラクターが多数出てくるので、日本人俳優がキャスティングされるのは当然といえば当然。しかし、これだけ立て続けに日本人キャストが活躍する世界的話題作が公開されるのは、ちょっと珍しいかもしれない。

その一方で、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』にはドニー・イェン、『マグニフィセント・セブン』にはイ・ビョンホンと、中国系や韓国のスターたちもハリウッド大作でいつものごとく大活躍中。日本とは関係な作品での、日本人スターたちの飛躍に期待したい。

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『バイオハザード:ザ・ファイナル』 12月23日公開

配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

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『沈黙-サイレンス-』 2017年1月21日公開

配給/KADOKAWA

(C) 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

『GHOST IN THE SHELL ゴースト・イン・ザ・シェル』 2017年4月公開

配給/東和ピクチャーズ

(C) 2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、ヤングマガジン、クーリエ・ジャポン、スクリーン、キネマ旬報、映画秘宝、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。

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