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豪雪の徒歩移動の危険 生活の動きが止まりつつある中、この数日は細心の注意を

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
バス停は埋まり、バスを待つにも膝下まで埋まりながら(1月8日、筆者撮影)

 年明けから降り続く雪のため、日本海側の広い範囲で豪雪となっています。これは広域大水害と同じ状況です。人の動きが止まりつつあります。生活に必要な動きがままなりません。最後の手段は徒歩移動ですが、無理すれば命にかかわります。

 雪国の皆さん、命を守るために、徒歩中に雪に埋まらないように、酔った状態で外に出ないように、水路や池の周辺では細心の注意を。

 新潟県長岡市の豪雪は、今日現在小康状態となっています。ただ、流石の越後交通バス市内線はお手上げ状態、道が悪くてタンクローリーが入れず軽油が足りない、その上電力ひっ迫のニュースが飛び込んできて、この後大雪が降らないことを祈るばかりです。(1月12日17:17、筆者追記)

これまでも、そして続く降雪

 北日本から西日本の日本海側を中心に大雪となっており、北陸地方では3時間に25センチ前後の雪の降っている所がある。48時間降雪量は、富山市で48センチ、新潟県上越市高田で160センチ、山口県下関市で10センチなど観測史上1位となっている。(ウェザーマップ 最終更新:1/10(日) 5:40

 日頃から大雪に慣れている地域では消雪パイプが効いていて、まだ何とか道路は使えます。今回の降雪では、消雪パイプが設置されていない地域でも大雪となっています。

 YAHOO!ニュースのコメント欄には、雪国の皆さんからの悲痛な叫びが寄せられています。積雪2 mで安定してしまえば、恐怖はありませんが、降雪で50 cmが毎日続くと雪国の人でも流石に恐怖を覚えます。「いつかは終わる、必ず春は来る」と心で自分を慰めながら頑張るしかありません。

雪国の皆さん、ここは注意しましょう

徒歩中に雪に埋まらないように

 昭和58年から3シーズン続いた豪雪の経験を思い出すと、道路が埋まり車の運転がままならなくなると、歩行中の事故が増えていきます。生活しなければならないので、移動は徒歩となるからです。

 最も大変なのは、灯油の確保です。日頃からポリタンクに頼っているご家庭では、灯油がなくなりそうになると、車に灯油ポリタンクを載せて給油にいきます。車が使えなくなると、徒歩で給油にいくことになります。40年前は近所にガソリンスタンドがたくさんありましたが、最近は近所にはないお宅が増えたのではないでしょうか。

 普段歩く程度の距離であれば大丈夫かもしれませんが、慣れていないとどこかで埋まって動けなくなる確率が高くなります。歩道は雪に埋まっています。車道は狭くなって行き交う車を気にしながら、あるいは積雪で埋まっている道路であれば、積雪をかき分けながら進むことになりますが、一度動けなくなると雪がどんどん降り積もり、体が埋もれていきます。

 夜間の徒歩移動は絶対にしないようにしましょう。日中でもすぐに緊急連絡ができるように携帯電話を肌身離さずに。

酔った状態で外に出ないように

 雪下ろしの前にちょっと1杯飲んで体を温めてから。同窓会で飲んで、家まで運動のつもりで酔いさまし。これらは、春になって雪の下から発見された方々の直前の行動です。

 どういったプロセスで雪に埋もれることになったのかはわかりませんが、少なくとも運動能力は落ちますし、飲んだ後は皮膚近くの血行がよくなり、それだけ体の熱が放出されやすくなっています。激しい降雪の中では、ちょっとでも体のバランスを崩せば雪の中に倒れこみます。積雪の中に体が埋まれば、熱が急速に奪われます。

 「酒を飲んで泳がないように」と言われますが、雪の中では夏にはなかった低体温という危険が待っているわけです。

水路や池の周辺では細心の注意を

 積雪で、どこが縁か全くわからなくなります。そして、雪捨て場所としてはどうしても選ばなければならなくなります。積雪があると一度落ちたら上がれません。救助にも時間がかかります。

 すでに新潟で2人、富山で1人が除雪作業に伴い用水路や池にはまって命を落としています。日頃は落ちても上がれるくらいの場所でも、積雪があると上がれなくなります。水温はほぼゼロ度ですから、あっという間に低体温となります。たとえ携帯電話で救助を呼んでも、道路事情が悪く、到着までいつもより時間がかかります。降雪状況によっては近くの人が陸上から引き上げるしか助かる方法がない場合も生じます。助ける人にもかなりの危険が伴います。

雪国に家族のある人は

 すでに豪雪となっています。例えば新潟県内の在来線は1月10日10:28現在運行していません。新幹線で来ることができたとしても、そこから先に進むことが容易な状態ではありません。

【参考】緊急事態宣言下の新潟県直江津駅の現状(鳥塚亮氏)

【参考】続報 緊急事態宣言下の新潟県直江津駅の現状(鳥塚亮氏)

 車の移動でも、地元の運転に慣れている人でもスタックする状況です。実家が心配な方もおられると思いますが、もし除雪のお手伝いをと考えている方は、ぜひ実家とよく相談してください。数日中に降雪がおさまれば交通手段の状況は急速によくなります。そのチャンスを狙って、いっきに除雪作業を大人数で行うことを考えて手伝いの計画をお立てください。

 そして、毎日実家のお父さん、お母さんに電話をしてください。とにかく気にしてあげてください。行くことができなくても気にかけることによって、守れる命が必ずあります。

【参考】雪国新潟の現状 高齢者世帯では人手が足りない家庭も 命にかかわる問題なので来るなら家族でよく相談して

さいごに

 つぎの土日は、大学入学共通テストです。雪の多い地域の受験生とご家族はたいへん心配されていることでしょう。無事に進めることができるよう、会場となる大学も除雪作業など万全の体制で臨みます。受験生の皆さんは、ぜひ体調管理を万全にして、今週を過ごしてください。

水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

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