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敬老の日のプレゼント、防災リュックはいかが? 災害頻発の今、おじいちゃんおばあちゃんを助けるために

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
ねえ、敬老の日のプレゼント、何がいい?(提供:ayakono/イメージマート)

 今年の敬老の日は9月21日です。家族として大切なおじいちゃん、おばあちゃんへのプレゼントを考えている最中かと思います。皆様の中では、今年はどんなものが候補に挙がっていますか?筆者からは防災リュック等を提案します。でも筆者の提案ですから、そのリュックは当然、洪水時におじいちゃん、おばあちゃんの命を守れなければなりません。

大切なおじいちゃん、おばあちゃんの命を守りたい

 今年の夏の豪雨災害は酷かったです。7月3日から7月31日にかけて熊本県を中心に九州や中部地方など日本各地で発生し、令和2年7月豪雨と命名されました。この豪雨の死者は63人、浸水は1万棟超、 熊本県で氏名が公表された死者の平均年齢は78歳で、高齢者の避難の難しさが改めて課題となりました(朝日新聞7月10日)。

 もちろん、洪水が襲ってくる前の早期の避難がもっとも理想的ですが、「まさか、こんなにすぐに来るとは思わなかった」「ひどい雨で避難をためらった」はもちろんのこと、「避難途中に道路が冠水してきた」などに至っては、当たり前のように起こります。

 大雨災害時には、このような「まさか」に対応して、襲ってきた水によって、すぐに命を失わないように呼吸を確保する手段を備えたいところです。防災リュックは、いいものを選べば安全に避難できるばかりでなく、図1のようにいざというときの緊急浮き具になります。そして、ライフジャケットがあればさらに安心です。次の台風が来る前に、おじいちゃん、おばあちゃんへのプレゼントにいかがでしょうか。

図1 防災リュックと、万が一の活用方法(筆者撮影)
図1 防災リュックと、万が一の活用方法(筆者撮影)

洪水を想定した防災リュックの選び方

 基本は容量は15 L前後あること、防水がしっかりして気密性が高いこと、前に担いでも視界を遮らないこと。例えばYahoo!ショッピングにて「防災リュック」と検索すると、様々な製品が表示されます。相当な種類があって、選ぶのも一苦労です。

 緊急浮き具になるようなリュックは、中身がしっかりと詰まっていれば、15 Lの容量があれば十分です。背浮きになって少々の波や流れの中でも安定して浮くことができます。ただし、中身にはタオルや衣服といった空気をたくさん含むものが詰められてなければなりません。洪水の恐れがある中で避難所に向かうことを考えれば、缶詰や大きなライトのように水にに沈む製品を入れるスペースは必要ありません。

 緊急浮き具になるリュックの中身は大きなポリ袋に入れてリュックにしまいます。ところが、いざという災害時にその大切なことを忘れることもあります。そのため、リュックには防水がしっかりしていて気密性が高い製品を予め備えておきます。一目見て、水が浸入してこないような製品を選ぶことが重要です。大雨の中の避難になるかもしれないことを考えれば、びしょびしょに水を含んでしまうリュックは最初から避けたいところです。

 緊急浮き具になるリュックは、前に担ぐことを想定します。そうすると足元が見えなければなりません。あまりにも分厚いリュックだと歩く前方がよく見えなくなります。もちろん、避難時には杖になるような長い棒をもって歩くのですが、それでも足元がよく見えるのは大事です。適切なリュックは、比較的薄くて見た目が長方形に近い形状だとか、肩口にかけて薄くなっていく形状だと好ましいです。

 防災リュックとして販売されている製品の中には、すでに中身としていろいろなグッズが入っている場合があります。これは地震だとか、野宿だとか、いろいろなことを想定して入れてあります。洪水を想定するのであれば、中身は入れ替えて、衣服やタオルを中心にします。リュックの浮力になるばかりでなく、濡れた衣服を避難所にて直ちに乾いた衣服に変えなければなりません。これからの時期、もっとも重要なことは、身体の保温です。さらに笛をリュックの外側につけておきます。

防災リュックだけでは心配になった方へ

 ライフジャケットが備わっていれば、さらに安心です。こちらも例えばYahoo!ショッピングにて「ライフジャケット」と検索すると、様々な製品が表示されます。プレゼントされる方のことを考えて種類を選びましょう。

 基本は、図2に示すような固型式首掛け式で国土交通省型式承認(いわゆる桜マーク)を受けた製品がおすすめです。浮力が保障されており、笛がついています。首にかけるタイプなので、ベッドの上でも、車いすに乗った状態でも簡単につけることができます。そして図3に示すように、頭を自動的に保護してくれますし、頭を保温してくれます。

図2 固型式首掛けライフジャケット(筆者撮影)
図2 固型式首掛けライフジャケット(筆者撮影)
図3 首掛けライフジャケットは頭部を自動的に保護してくれる。何かに当たった時の衝撃を緩和するばかりでなく、頭部の冷えを抑えてくれる(筆者撮影)
図3 首掛けライフジャケットは頭部を自動的に保護してくれる。何かに当たった時の衝撃を緩和するばかりでなく、頭部の冷えを抑えてくれる(筆者撮影)

 雨具のようにフードのついたライフジャケットもあります。ライフジャケットそのものが雨合羽になっているタイプもあります。雨の中でも濡れずに歩いて避難する時には、一石二鳥のアイテムです。

 釣り好きのおじいちゃん、おばあちゃんであれば、相当な種類の釣り専用のライフジャケットが販売されています。磯釣り用、ボート釣り用など、用途に応じて様々なタイプがあります。そのため、プレゼントされる人と相談して、どういうタイプがいいか決めましょう。もちろん、このようなレジャー用のライフジャケットも洪水の避難時に身に着けると安全性が高まります。性能が心配な時には、JCI性能鑑定適合と明記されている製品を選びましょう。

まとめ

 高齢者の避難の難しさが改めて課題となった今年の豪雨災害。次の台風が来るまでの間、敬老の日のタイミングでおじいちゃん、おばあちゃんにプレゼントしたい防災リュックやライフジャケットについてまとめました。

 これらは玄関の目立ち所に置いて、避難する時に忘れずに持っていけるようにします。2階以上に垂直避難する時にも靴とともに持っていきます。老人福祉施設なら、部屋ごとに置いておきます。

 

水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

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