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避難指示 緊急浮き具を携行して 命を守る行動を

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
緊急浮き具の例。いざという時に顔を水面に出せる(筆者撮影)

 場所により避難指示が発令されています。ただちに命を守る行動をとりましょう。この場合に取るべき命を守る行動とは、道路冠水が始まっているか、否かで決まります。急な洪水に備えて、緊急浮き具を携行しましょう。

周辺道路の冠水が始まっていない時

 川の流域なら、すぐに避難所へ行きます。その際にカバー写真右のように、衣類などをビニール袋に詰めて、リュックサックに入れて常時携行。万が一水が襲って来たら、リュックサックが命を守る緊急浮き具になります。作り方を図1に示します。

図1 避難に持っていきたい緊急浮き具の作り方(筆者撮影)
図1 避難に持っていきたい緊急浮き具の作り方(筆者撮影)

 川から離れているのであれば、避難所の他に高台への避難も選択肢に考えてください。避難所の密集を避けます。当然、衣類の詰まったリュックサックは必需品です。

 いずれも車での避難も選択肢に考えます。ただ、車は避難手段としては有効ですが、車そのものは避難所になりません。洪水に遭遇したら簡単に流されますし、車内に閉じ込められたまま溺れる危険が大です。

周辺道路の冠水が始まっている時

 歩いてでも、車でも外に出ての避難は諦めます。自宅や周辺の建物の2階以上に垂直避難します。万が一2階まで浸水が襲ってきた時に備え、カバー写真左のようなダウンジャケットなどの厚手のジャケットを準備しておきます。このようなジャケットは緊急のライフジャケットに早変わりします。数時間は浮力で浮いていることができます。

避難途中に水がきたら

 避難を始めたときには全く冠水していなかったのに、付近の河川の堤防が決壊したとなると、その周辺は30分もたたずに冠水します。そのとき大量の水が押し寄せてくるわけで、流れを伴っています。流れを伴う洪水は大変危険です。人は膝をこえる水深で流されてしまいます。また、車も同様で、流れが秒速1 mを超えて、水深50 cmを超えると流され始めます。従って、徒歩でも車でも水深50 cmを超える流れが来襲してきたら、すぐに近くの高台や屋内の2階以上に避難しなければなりません。

 道路には、ふたのあいたマンホール、側溝があります。こういったところは冠水しているとその存在に全く気が付きません。しかも大雨の中だとさらにわからなくなります。そういったマンホールトラップや側溝トラップは溺水トラップとなります。過去には、大雨のさなかの避難中にこのようなトラップに落ちて命を失っている人が多くいます。特に見通しの悪い夜間は外出しないようにします。

田畑の様子を見に行かない

 用水路や排水路の水の流れ、生長途中の稲の様子、様々な心配事があるかもしれません。でも、大雨の最中や直後には絶対に見にいかないようにしてください。田畑の冠水が始まっていると、道路から一段下がっている田畑の水深が深くなっていてもなかなか気が付きません。そこに足を踏み入れ、いっきに沈水してしまうこともあります。溺水トラップのうちの田畑トラップです。毎回の台風や集中豪雨で犠牲者が発生しています。夜間には、特に危険性が増します。

水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

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