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洪水リスクこれから本番 流域の長い河川は特に注意 (13日14:30追加版)

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
台風19号の洪水で冠水した道路。溺水トラップが全く見えない。(写真:ロイター/アフロ)

13日14:30追加

 動画は新潟県津南町の信濃川の状況です。田畑が冠水しています。まだ水量が減少に転じていません。小千谷、長岡から40~60 km上流です。

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13日10:55追加

 昨晩の千曲川の氾濫があり、今ほどその下流の津南町で信濃川が氾濫しました。次はその下流になります。千曲川は新潟県で信濃川に名前を変えているだけのことを忘れてはいけません。小千谷市の信濃川がすでに氾濫危険水位を超えましたので、小千谷市から下流の平野部において氾濫が起こるのは時間の問題かもしれません。信濃川とその周辺の支流域の方は高台へ避難することをお勧めします。同じようなことは、この50年間に何回も発生しています。特に支流域は氾濫を繰り返しています。

 さらに、阿賀町にて阿賀野川が氾濫しています。下流の流域も避難を早めてください。各地で河川氾濫が確認されています。信濃川、阿賀野川、阿武隈川、北上川、大きな河川の氾濫は過去に大災害を引き起こしています。

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 台風19号が過ぎ去りました。朝を迎え、東海、関東、東北地方を中心に被害の全容が明らかになりつつあります。これから、避難所からの一時帰宅、排水作業、堤防の応急処置などの時間軸に入るかと思います。台風が過ぎ去っても、水害による溺水リスクはまだ続きます。そして洪水リスクはこれから本番という河川もあります。特に流域の長い河川では、下流において洪水に注意しなければなりません。

避難所からの一時帰宅では溺水トラップに注意

 朝を迎えて、家の様子が心配になり、避難所から一時帰宅を希望する方も多いかと思います。まずは、冠水状況を確認してください。避難所の周辺が冠水していたら、まだ帰宅を考えるのは早いかもしれません。溺水トラップと呼ばれる、側溝、フタの外れたマンホール、田畑のように、ぽっかりと口を開けた急な深みがいたるところにあります。これらは周囲が明るくなっても存在に気が付きません。ましてや、自宅が見えてくるとそちらに気を取られて、いつもなら気が付くトラップに気が付かないからです。新潟の7.13水害でもそうやって自宅の前の側溝にはまり亡くなった方がいました。

【参考】 危険!冠水時の避難 溺水トラップが事故を招きます

【参考】流れのある洪水 歩いて避難できるか? その判断基準は

水路の排水作業では細心の注意を

 昨日発生した御殿場での水難事故では、水路で作業中の方が流されました。

 本日は、水路にたまったごみを取り除き排水を促す必要があると思います。特に注意したいのは、水路に直接入っての作業です。ごみが流れをせき止めて、排水が進まない箇所が多数あるかと思います。水位が低くてもごみ除去作業を水路に入って行わないようにしてください。作業中に下流に入ってごみを取り除くと、急に流れ出した水で足がとられ、あっという間に流されます。側溝のようなコンクリート水路では、尻もちをついた瞬間にウオータースライダーのように高速で流されます。流されながら、自力で立ち上がって逃れようと思っても、立ち上がることすらできません。

【参考】 こんな小さな用水路で、なぜ人は次々と溺れるのか?富山の用水路の現状から

洪水リスクこれから本番の河川もある

 昨日被災した地域を流れる長野県の千曲川。千曲川は新潟県を流れ日本海に注ぎます。新潟県内では信濃川と呼ばれます。このように流域の長い河川においては、一日ほどたってから下流にて洪水をおこすことがあります。筆者は新潟に住んでいますが、これまで30年くらいの間にも数回、長岡大花火大会の会場となる長生橋のすぐ下まで水が迫ったことがありました。長生橋の長さは1 km弱ですから、広大な信濃川の洪水風景として、それはただ恐怖でしかなかった思い出があります。問題は、その信濃川に流れ込む支流です。多くの支流のうち、長岡市内の渋海川はよく氾濫しています。本日10月13日 08:40 現在でも、氾濫危険水位(37.14 m)をすでに1 m以上超えて、堤防まで3 mほどの水位になりました。水位は急上昇中ですから、これからが洪水の本番となります。

 このような河川は関東地方や東北地方のいたるところにあります。流域の長い河川の下流域ではこの時間からでも避難所に避難して、これからが本番の洪水に備えてください。

まとめ

 台風が過ぎ去って一安心ではありません。水害で命を落とすかもしれない事案はこれからが本番です。筆者の周辺でもまさに起こりつつあります。疲れた体、精神の中ですが、ともに気を抜かずに行きましょう。

水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

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