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【GASGAS新型SM700最速インプレ】 軽快スリム!公道映えの俊足ビッグモタード

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
画像出典:GASGAS/佐川健太郎(以下同)

GASGAS(ガスガス)は知る人ぞ知るスペインを代表するオフロードの名門ブランドだ。特にトライアルでは世界タイトルを何度も獲得するなど活躍。2019年からはKTMファミリーの一員となり体制を強化しニューマシンの開発を加速させている。今回スペインで開催された国際ローンチで発表されたのが「SM700」と「ES700」の2機種。GASGAS初のストリートモデルである。まずはオンロードに軸足を置いたSM700からレポートしたい。

SMとはスーパーモタードの意味。エンジンは水冷4スト単気筒OHC4バルブ排気量692.7ccから最高出力75ps(55kW)を発揮。一方、車体は軽量なクロモリ鋼のトレリスフレームにWP製前後サスペンションを装備。電制も2種類のライドモードとリーンアングルセンサー付きのABSとトラコンに加えスリッパークラッチも共通の装備とするなど、シンプルながらツボを押さえたパッケージとなっている。また、SMは足まわりもオンロード寄りのセッティングになっているのが特徴で、前後17インチのキャスト(合金)ホイールにハイグリップタイヤを履く。

見た目も走りも過激だが実は素直で扱いやすい

まず見た目がカッコいい。ブランドカラーの深紅の外装をまとい、これでもか、と大きく目立つGASGASのロゴ。やる気満々のイメージだ。GASGASとは「もっとガスを!アクセル開けていけ!」というような意味。マルケス兄弟やエスパロガロ兄弟しかり、最近のMotoGPを席巻しているスペイン勢の元気の良さをそのままカタチにしたようなマシンである。

ホイールベースが1475mm、シート高も898mmとけっこう大柄だが、跨ると車体がスリムで足が真下に伸ばせるため足着きは見た目ほど悪くない。身長179cmの自分でヒザが少し曲がるぐらいだ。

新世代のLC4エンジンは、高圧縮のビッグシングルらしいソリッドな鼓動感がありトルクフル。それでいて、ショートストローク化されて1万rpm近くの高回転まで軽々と伸びていく。6速ミッションはシフトタッチも節度感があってスムーズ。アップ&ダウン対応のクイックシフターのおかげで走行中はほぼクラッチいらずの快適さだ。

乗り味はしっかり&しっとり。鋼管トレリスフレームの骨格は剛性感があって欧州の高速道路でもカチッと安定している。場所が許せば150km/hオーバーでのクルーズも可能なほど。ハブセンターにマスを集中させたキャストホイールのおかげでハンドリングも軽快。ちょっと足が長めの軽くてスリムなネイキッドといった感じだ。そして、同クラスのロードバイクより段違いに機敏。ワインディングではスーパースポーツと張り合えるし、ショートサーキットでは車重150kgを切る軽さと瞬発力を生かして無敵レベルと思えるほどの走りを見せつけてくれた。とはいえ、見た目こそ過激だが実は素直で乗りやすいバイクでもある。ハンドル切れ角も十分でUターンも苦にならないレベル。前後サスのストローク量が多い分、加減速でのピッチングモーションも大きめに出るが、その特性を生かしてひと呼吸“タメ”を作ってやると倒し込みや切り返しもしやすくなる。

一歩突っ込んでみたい上級者にはスイッチひとつで切り替わるライドモードの「モード2」がおすすめ。いわゆるSuperMotoモードで出力特性がよりスポーティになり、リア側のABSが解除されてトラコンも最小限になる。さらにエキスパート向けにはトラコンの全解除も可能。ショートサーキットでは手練れのテストライダー達はロングウイリーにジャックナイフ、進入スライドetc.のスゴ技をこれでもかと披露していた(笑)。つまり、腕さえあれば多彩なトリックを存分にキメられるというわけ。自分も含め普通のライダーには縁遠い話かもしれないが、それがまさにモタードの魅力でもある。ともあれ、目立つカラーにルックスもいいし走りは筋金入り。街でもワインディングでも映えすること請け合いだ。

【GASGAS新型ES700最速インプレ】これぞビッグオフ!圧巻のパワフルな走破力

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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