かつて欧州で人気だったドゥービルの再来か

NTは「ニューツーリング」の意味。日常での使い勝手が良く長距離ツーリングも楽しめる多用途に使える次世代スポーツツアラーを目指したという。

実はホンダは昔からNTの名で同様のコンセプトのモデルを出していた。欧州市場で好評を博したNT650V/700Vドゥービルだ。水冷52度Vツインはトランザルブや先代アフリカツインなどにも採用された同系ユニットで、オールラウンドに使える軽快なツアラーとして一部のマニアの間ではいまだ人気が高い。その現代版がNT1100というわけだ。

見た目は足長のクロスオーバーモデルに見えないこともないが、開発者の話だと完全なオンロードモデルとのこと。ただし、前後150mmと多めにとられたストローク量は荒れた路面でも快適な乗り心地を得るためだとか。

弾けるトルクで見た目以上にスポーティ

大型スクリーンを備えたボディ一体型のフロントカウルに20Lタンクを搭載するなど、一見して長距離ツアラーだと分かるスタイルで、フロントがボリューミーで反対にリアがシュッとしたデザインは“オタマジャクシ”のようで可愛らしくもある。シンプルで知性を感じさせるスマートなスタイルが現代的で、ベースになったCRF1100Lアフリカツインとは正反対とも思える雰囲気。シート高820mmと足着きも難儀しないレベルだ。

エンジンは基本的に現行アフリカツインと共通の水冷並列2気筒1082ccで吸排気系が専用設計、ファイナルも高速ツーリング向けにロング設定に最適化されている。低中速トルクに厚いフラットな出力特性ということもあって、最高出力102psの数値以上に加速は鋭く248kgの車重より軽く感じる。上体が起きたアップライトなライポジも関係しているだろう。ハンドルもオフ車並みに幅広いため、ライディングの自由度が高く振り回して乗れる。ハンドリングは穏やかだが見た目以上にスポーティだ。良く動く長い足を生かしてスロットルと重心移動でタイミングを計ってやれば、大きな車体を右へ左へと軽快に切り返せる。OE装着のメッツラー・ROADTEC 01のしっとりとしたグリップ感とも相性がいい。安定して自然なハンドリングは、やはりオンロードに特化した前後17インチを採用しているメリットだろう。実は興味本位でダートも少し走ってみたが、長い足とオフ車的ライポジのおかげで普通に走れてしまうことも確認できた。

快適かつ操る楽しさも味わえるDCT

ミッションはDCTのみの設定だが、これが大正解。クラッチ操作もいらずにアクセルを捻るだけでスルスルと走り出し、270度クランクの鼓動感溢れるサウンドとともに弾けるように加速する。あとは気分でマシン任せのATモードで楽に走るも良し、MTモードで積極的にシフトチェンジしながら走るも良し。さらにATの中にも燃費重視の「Dモード」と高回転を使ってキビキビと走れる「Sモード」がある。

いろいろな場所で走ってみたが、高速道路ではラクしてATのDモードで走り、ワインディングではATのSモードを使ってパワーバンドを引き出し、さらにアップ&ダウンがきついタイトな場所ではMTモードに切り替えて、その勾配に合ったギヤを自分でセレクトして加速し、エンブレを使って速度をコントロールしてみたり……。つまり、マシンと人間が協業しながらシチュエーションに合わせて最適な走りを組み立てられるわけだ。単に楽で快適だけではなく、「自分で操る」という意志が明確に介在できるところがDTCの素晴らしさだとあらため実感した。

もうひとつDCTが凄いのは絶対にエンストしないこと。難しい半クラ操作など必要なく、発進や低速バランスも容易にこなせる(ある程度慣れは必要)。加えてハンドル切れ角も片側38度とすごく切れるのでUターンも得意だ。

気が向くまま彼女とワーケーションへ

今や当たり前になったライディングモード(TOUR/UBAN/RAIN/USER/USER2)やトラコン、ABSに連動した急制動ハザード点滅システムなど安全面もぬかりなく、モードに合わせてレイアウト表示が変化するタッチパネル式TFTディスプレイや音声コマンドでのスマホアプリ操作にも対応するなど最新機能も充実。加えてぴったりスリムにフィットする専用の純正パニアシステムなどアクセサリーも豊富に用意されるなど、バイク旅を快適にバックアップしてくれる機能や装備が整っている点も魅力だ。

ITガジェットをスマートに使いこなしつつ、気が向いたら都会を離れてタンデムでワーケーションに出かけていく。そんなイメージが浮かんでくる、まさに時代に合ったスタイリッシュな快適快速ツアラーである。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeニュース