【ロイヤルエンフィールド コンチネンタルGT650】60年代英国車の輝きを伝える正統派カフェレーサー
ロイヤルエンフィールドは19世紀末に英国で創業した世界最古級のモーターサイクルブランドである。現在はインド資本のメーカーだが、開発とデザインは今でもバーミンガムにあるテクニカルセンターで行われている。その最新作である「コンチネンタルGT650」は英国車全盛時代の面影を残す現代のモデルである。
伝統の名を冠して蘇った現代のバーチカルツイン
最初に少しだけ前説を。1960年代に生まれた初代コンチネンタルGTが登場したのは1960年代。低めのクリップオンハンドルやレーシングシートを備えたカフェレーサーとして人気を博した。その名が単気筒500ccモデルとして復活したのが2014年で、実はロンドンで開催された国際ローンチに自分も参加する機会を得た。
バイクに熱中する当時の若者たちの生きざまを描いた映画「さらば青春の光」でも有名な港町・ブライトンまでツーリングしたが、歴史をよく知る地元の人々から温かい眼差しを送られたことを覚えている。そして今回、伝統的な空冷並列2気筒650ccのバーチカルツインを搭載した完全新設計のモデルとして蘇ったのだ。
270度クランクの野太い鼓動と18インチの手応えがいい
エンジンは低中速トルクに厚く、270度クランクによる不等間隔の野太い鼓動感が印象的だ。ただし硬質ではなくマイルドで乗っていて気持ちの良いフィーリング。
トルクが弾ける3000回転から6000回転辺りを使って街中をゆったり流すのが楽しいが、一方で吸気系はインジェクション+4バルブと現代的なので、アクセルを開ければパリッとした節度のある加速フィールも楽しめる。鼓動感の割に意外にも振動が少なく、メカノイズなども気にならないレベルだった。
高速道路も走ったが、6速ミッションなので回転を上げずに走れるところがいい。ハンドリングもとても安定感があって、クラシカルな前後18インチのワイヤースポークホイールはデザイン的にも優雅だが、大径ゆえに程よい手応えがあって落ち着いて乗れる。
けっして俊敏ではないし車体もずっしりしているが、それでいて走り込んでいくとベテランの探求心をも満足させられるスポーティな一面も見えてくる。
見た目はノスタルジックだが乗り味はモダンだ
たぶん、フレームが優秀なのだと思う。理由を後で聞いて納得。伝統的なスチール製ダブルクレードルフレームは、なんと英国を代表するフレームビルダーのハリス社が設計しているのだ。ちなみにハリス社はかつてWGPのレーシングマシンにもフレームを提供していた実績があるその道のエキスパートだ。
だからなのか、見た目は60年代カフェレーサー風だが乗り味はモダンで古い感じがしない。足まわりもサブタンク付きツインショックにABS付きのBYEBRE製前後ディスクブレーキなど過不足のない装備が整えられている。サスペンションは乗り心地を優先したと思えるソフトセッティングだが、タイヤも現代版のピレリ製ファントムを履いていることもあり、しっかり曲がるし止まってくれる。
実はサーキットにも持ち込んで試走してみたが、けっこう攻め込んだ走りをしても問題ないレベルだった。もちろん現代のマシンなので当たり前ではあるが、安心して乗れることは重要なポイントである。
スタイリッシュに都会の街を駆け抜けたい
独特のロングタンクにセパハン、アナログな2連メーターから臨む景色はまさに60年代カフェ。ライポジとしては若干グリップ位置が遠めになるが、極端な前傾ではないのでツーリングも十分こなせるレベルと思う。また、感心したのはハンドル切れ角の大きさで、豊かな低中速トルクを生かしてUターンもしやすかった。
シート高は790mmと標準的でスリムなシートとえぐりのあるタンクのおかげで足着きも良かった。
60年代英国車の輝きを今に伝えるコンチネンタルGT650。空冷バーチカルツインのノスタルジックな鼓動に包まれて、都会の街を颯爽と駆け抜ける。今だから乗りたくなる粋なカフェレーサーだ。
※原文より筆者自身が加筆修正しています。