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信号待ち・渋滞末尾に注意! ライダーを突然襲う「追突事故」の恐怖

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
写真はイメージです。(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

交差点停止で突っ込まれる恐怖

11月初旬、クルマの追突によってライダーが犠牲になる事故が起こった。

6日未明、名古屋市東区の国道でクルマ4台とバイクが絡む事故があり、バイクに乗っていた女性が意識不明の重体に。現場は国道19号の交差点手前で、男性(46)が運転する乗用車がバイクに追突。

その後、乗用車は弾みで別のクルマにも衝突するなどクルマ計4台とバイク1台が絡む事故となった。運転していた男性は過失運転傷害の容疑を認めているという。

情報が少なく事故現場の詳しい状況などは分からないが、事故映像を見る限り女性が乗っていた250ccスポーツモデルは原形をとどめないほどに破壊されている。

相当な速度差でクルマが追突したと思われ、現場が交差点手前ということや他のクルマも巻き込んでいる状況を考えると、おそらくは信号停止中か、ほぼ停止に近い状況で車列の末尾にいたバイクに衝突し、勢い余ったまま他のクルマにも次々とぶつかっていったのではないかと思われる。

見逃せない「ながらスマホ」の問題

ドライバーが過失を認めているということなので、居眠りか、わき見運転だろうか……。原因は分からないが、追突事故の恐ろしさをまざまざと見せつけられた。バイクはただでさえ無防備な状態なのに、後ろから不意を突かれるわけだから身を護りようがない。

最近、ある2輪業界の施設経営者からも似たような話を聞いた。本人はクルマ運転中で信号停止していたところ、いきなり後ろからドーンとトラックに追突され、むち打ち症に。クルマも後ろ半分が潰れたそうだ。トラックの運転者はどうやらスマホに見入っていて、赤信号に気付くのが遅れたらしい。

追突された本人は「これがもしバイクに乗っていたら……」と表情をこわばらせていた。また、彼の知り合いのライダーはやはり同じような状況で追突されて、1年間の病院生活を余儀なくされたという。

こうした運転中の「ながらスマホ」による交通事故が増加する中、改正道路交通法が昨年12月1日から施行され、罰則が強化されたことは記憶に新しい。あれから約一年が経つが、まだまだ「ながらスマホ」しているドライバーの姿を見ることも多い気がする。

渋滞末尾には付くな

画像出典:Webikeニュース
画像出典:Webikeニュース

では、ライダーはどのようにして悲惨な追突事故から身を守ればいいのだろう。

昔からベテランライダーの間では「高速道路の渋滞末尾には付くな」というのが常識になっている。つまり、渋滞している車列の間に入って避難すべき、という考え方である。

大型トラックなどが深夜に高速渋滞末尾に突っ込む事故がかつては多発していたが、衝突低減ブレーキなどが普及してきた現在でも、その手の事故は無くならない。クルマでも追突されれば大きなダメージを受けるが、それがバイクであれば確実に命は無いだろう。

守るべきは規則か命か

ライダーには自分の命を守る権利があると思う。もちろん、それは「すり抜け」を是とするものでも推奨するものでもないが、頑なに規則を守って死んでいくのか、それとも命を守ることを優先するのか、という実に難しい問題である。たとえば、渋滞している車列の間を速度も落とさず延々とすり抜けしていくのは言語道断である。

だが、渋滞末尾に出くわしたときに、身の危険を感じてやむを得ず車列の間に十分速度を落として徐行しながら入っていくのは「緊急避難」と見なしても良いのではなかろうか。自分の場合、少なくとも渋滞しているのが見えたら、前車両と十分な距離をとりつつポンピングブレーキやハザードランプを点けるなど後続車に対して最大限のアピールをするように心がけている。それでも、突っ込まれそうな気配を感じたときは……。

悲惨なバイク事故を見聞きするたびに複雑な思いが去来する。皆さんはどう思われるだろう。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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