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バイクの進化が凄いことに!「立ちゴケ抑止」「足着き楽々」「地獄に仏」の最新テクノロジー

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
リバース・アシスト搭載の「BMW R18」と筆者 画像出典:Webikeニュース

IT業界では日進月歩で新たな技術が生み出され人々の生活を便利にしているが、それはモーターサイクルの世界にも言えること。今どきのバイクに搭載された驚きの最新テクノロジーの数々について、最近試乗した自分の経験も踏まえてお伝えしたい。

MVアグスタ「SCS」 発進も停止もクラッチいらず、Uターンも楽々!

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イタリアの至宝、MVアグスタの3気筒ネイキッドの最新モデル「ドラッグスター 800 RR」にはSCSという自動クラッチを搭載した仕様がある。これはMVアグスタが米国・リクルス社と共同開発したスマートクラッチシステムで、発進から停止、極低速でのトロトロ運転まで一切クラッチ操作が必要ないという優れモノだ。

SCS自体は数年前からオフロードレース界を中心に普及し始め、ガレ場の脱出などで絶大な効果を発揮しているが、メジャーな車両メーカーが市販車に投入した例は初めてだと思う。

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SCS仕様を実際に試してみたが、エンジン始動、ギヤを1速に入れればアクセルを開けるだけで発進できる。しかも人間が半クラで操作するよりスムーズ。全開スタートでもエンストやまくれを心配せずに加速できるし、停止するときもクラッチレバーを握る必要がない。

シフトアップ&ダウン対応のクイックシスターと併用すれば、ニュートラルに入れるとき以外は一切クラッチ操作が必要ないのだ。もちろん、マニュアル操作も普通にできる。

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個人的に最もメリットを感じたのはUターン時。なにせアクセルだけで微妙な極低速が作り出せて、絶対にエンストしないのだ。特にビギナーは半クラで失敗して立ちゴケというパターンが多いので、絶大な安心感になるはずだ。さらにSCS搭載による重量増はわずか数十グラムという軽量ぶりも凄い。

ショーワ「EERA」 停止時に車高ゲキ下げで、“足着き”不安を払拭!

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ご存じ国産サスペンションの老舗、SHOWAが開発した「EERA」(イーラ)は電子制御式油圧バルブによって減衰力を制御する最新式の電制サスペンションだ。ここでは言い尽くせないほど様々なモード機能が組み込まれているが、その中でも革新的なのが「ハイトフレックス」機能。

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これは停止時に自動的に車高を下げるシステムで、試乗したテスト車両はシートが高い欧州仕様の新型アフリカツインがベースだったが、跨ってみると驚くことに両足ベタ着きでヒザも曲がるほど。それが走り出すと、徐々に車高が上がってきて標準設定に戻る。

走行中はライダーの体重や積載重量にかかわらず車体姿勢を自動的に最適化してくれ、停止時にはタイミングを予測してその直前に車高を下げる仕組みだ。

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作動感は極めてスムーズで、アフリカツインの場合で約50mmもシート高が下がる設定になっているそうだ。特筆すべきはSHOWA独自のセルフポンピング機構というもので、サス自体がストロークする油圧を利用してプリロードや車高を調整する仕組み。

動力源として大きなモーターなどを使わずに済むためシンプルかつ軽量コンパクトな構造で、低コスト化も実現できたという。

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従来の大型アドベンチャーモデルはある程度の体格やスキルがないと扱いが難しかったが、“足着き性”という最大のハードルが下がったことで一気にユーザーのすそ野を広げる可能性を秘めていると言えるだろう。

BMW「リバース・アシスト」 350kgでも楽々取り回し、巨漢マシンの必需品!

そして、最近国内にも投入されたばかりのBMW史上最大排気量のボクサーエンジンを搭載したメガクルーザー「R18」。これに搭載されている「リバース・アシスト」機構がなかなか便利だ。クルマで言ういわゆるバックギアなのだが、こちらはセルモーターを利用した電動アシストになっている。

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後進機構についてはさほど新しいものではなく、BMWのK1600シリーズにも作法は異なるが同様のシステムがあり、ホンダのゴールドウイングにもDCTにリバース機構を組み込んだタイプ(MTモデルは電動リバース)などが存在するが、こうしたハイテク・ツアラーではなく「R18」のようなヘリテージモデルに搭載されたことがトピックと言える。

実際に「R18」に試乗してリバース・アシストを体験してみたが、操作方法はシンプルでアイドリング状態のままエンジン左側にあるセレクターレバーを「R」ポジションにセットし、スターターボタンを押すだけで安全にバックすることができる。ボタンの押し加減で微妙な速度調整も可能。(筆者による「リバース・アシスト」操作の様子は下記動画VOL.2の3:00あたりから解説していますのでご参考までに)

シートも低いので両足をバタバタと着きながら安定状態を保ちやすいのも良い。車重350kg近くある巨漢マシンではとかく便利で、たとえば狭い駐車場での出し入れや、坂道に頭から突っ込んでしまったときなどは“地獄に仏”並みの有難さを実感するはず。その意味では坂道発進を容易にする「ヒル・スタート・コントロール」とともに、これからの大型バイクにはぜひ標準装備していただきたいシステムだと思うのだ。

【BMW R18 徹底解剖】VOL.1

【BMW R18 徹底解剖】VOL.2

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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