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「Vストローム1050XT」試乗インプレッション より高みへと冒険マインドを広げた万能マシン

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
画像出典:Webikeニュース 撮影/富樫秀明

Vストローム1050XTでワンデーツーリングに出かけてきたので印象をお伝えしたい。

試乗したXTはワイヤースポークホイールにエンジンガード類を標準装備し、電子制御もより充実させた上級バージョンの旅仕様で、スタンダード仕様に比べてよりアドベンチャー色を強く打ち出したモデルとなっている。

気分はパリダカ!

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まず、見た目がアドベンチャーらしくカッコ良くなった。鋭く突き出したビーク(くちばし)からボディへとつながる一体感のある直線的なデザインが男らしい。カラーリングも1988年のパリダカマシン「DR-Z(ジータ)」がまとったマルボロカラーを彷彿とさせる赤×白のコンビとくれば、気分はもうサハラ砂漠だ。

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データ的には車格やライポジは従来と変わらないはずだが、体感的にはハンドル位置が少し高くなりリヤ下がりになった感じか。従来モデルはよりロードスポーツ的でややフロントが低かった気がする。スクリーンが高くなりメーターもフル液晶タイプとなるなど、視覚的にも最新感があって気持ちいい。

車体サイズは大柄でシート高は850mmと低くはないし、特にXTは装備も充実している分、車重も250kgに迫る威風堂々の重量級マシンである。

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強烈だが扱いやすい全域フラットなパワー

従来型を踏襲しつつも吸排気系やカムシャフトの改良により7psアップの106psへと強化された排気量1036ccの水冷Vツインエンジンは強烈で、高速ツアラーであってもこれ以上のパワーは必要ないと断言できるほど。Vツインらしい鼓動感もあまり主張しすぎず、回転はスムーズで振動も少なめ。

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従来モデルで気になっていた極低速でのトルクの細さも解消され、低速から高速まで全域でフラットにパワーが立ち上がってくる。高速ツアラーにぴったりの出力特性に仕上がっていると思う。

質実剛健な走りに元祖アルプスローダーの血統

ハンドリングも素直でクセがなく、スーパースポーツ並みの図太いツインスパーフレームによって、高速コーナーやワインディングでの安定感も抜群。重心の高さを生かしたダイナミックなコーナリングが楽しめる。

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前後サスペンションもダンパーが強めに効いた、どちらかというとオンロード寄りの設定になっているようで、路面の荒れに対しても変にフワフワせずしっかりと収めていく。何事にも動じない質実剛健な走りに、欧州の山岳路で鍛え上げられた元祖「アルプスローダー」の血筋を感じる。

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電子制御系にも新たにボッシュ製6軸IMUを採用されるなど緻密さが増している。特に恩恵を感じたのがブレーキシステムでコーナリング対応ABSのおかげでバンク中の安心感が違う。上り坂で停止時に自動的にリヤブレーキをかけてくれる機能も便利で、特にこのサイズのマシンでは立ちゴケ防止という点でもありがたさを実感した。

想像以上にダートも楽しめる

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ダートも走ってみたが、これが想像していた以上に良かった。フロント19インチでタイヤもオールパーパス用のBS製「A41」だが、フラットな広い林道や固くしまったダートならスロットルを開けてガンガン遊べる。ただし、車重があるので無理は禁物。また、深い砂利やゆるい土だと本格的なブロックタイヤを履かないと難しいだろう。

ちなみに、ちょっとテールを流しながら向きを変えたり、とアドベンチャーマシンらしい走りをしたいときはトラコンをオフにしてSDMSは穏やかなCモードが最適。2段階のABSも介入度を低く設定したほうがダートでは止まりやすい。

また、リヤショックはダイヤル式で簡単にプリロード調整できるため、体重が軽い人は予め初期荷重を少し抜いたほうがリヤ車高も下がって操りやすくなるはずだ。

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新型Vストローム1050XTは“アドベンチャースポーツツアラー”のコンセプトどおり、冒険マインドを満たしながら快適な長距離ツーリングを余裕で楽しめる万能マシンだ。スタンダード仕様と価格的にも10万円も変わらないので、やはり装備が充実したXTを個人的にはおすすめしたい。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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