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バイクの乗り味はエンジンで決まる その2.レイアウトによる違いとは!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
画像出典:Webikeニュース

コロナ禍でなかなかバイクに乗れない日々が続いています。そんなときこそバイクに対する知識を深めましょう。ということで、バイクのエンジンに関する第二弾。今回はレイアウトについて考えてみたいと思います。

エンジンには「気筒数」と「並べ方」がある

前回のコラムではバイクの乗り味はエンジンで決まること。そして、排気量がその大きな要素を占めているという話をしましたが、もうひとつ大事なことがあります。それはエンジンのレイアウトです。

レイアウトとは配置のこと。大きく分けて「気筒数」と「並べ方」によって変わってきます。たとえばよくバイクのカタログに出てくる「並列4気筒」や「V型2気筒」という言葉があります。並列とはシリンダーが一列に並んだ状態のことで直列とも言います。

だから並列4気筒とは横一列にシリンダーが4本並んだ形をしたエンジンのことで、これが2本だと並列2気筒。V型2気筒だと2本のシリンダーがV字型に開いた形をしています。

スズキ「SV650 ABS」に搭載される水冷V型2気筒エンジン 画像出典:スズキ
スズキ「SV650 ABS」に搭載される水冷V型2気筒エンジン 画像出典:スズキ

現在の代表的なレイアウトとしては「気筒数」では単気筒、2気筒、3気筒、4気筒、6気筒が一般的で、「並べ方」には並列、V型、水平対向などがあります。かつてはV8(モト・グッツィのGPレーサー)やロータリーエンジン(スズキ・RE-5)とか、また大昔には航空機の星型エンジン(シリンダーが放射状に並んだ)を応用したものとか、よく分からないヘンテコなマシンもたくさんありました。そういえば、ホンダ初のMotoGPマシン・RC211VはV5でしたよね。

気筒数で大きく変わるキャラクター

乗り味に関して非常に単純化して言うと、単気筒はドッドッドッと明確な鼓動感があって「味わい深い」とか「牧歌的」などと表現され、クラシックモデルや小排気量車、軽さを生かせるためオフロードモデルなどによく使われています。

2気筒はドコドコドコと不等間隔だったりドゥルルルと粒感があったりで、「路面を蹴り出す感じ」や「トラクションに優れる」などと言われたりします。これも点火順序や点火間隔で大きくフィーリングも変わるため一概には言えませんが、たとえば最近の並列2気筒(パラレルツイン)で流行りの270度クランクはあえて不等間隔爆発とすることでV型2気筒(Vツイン)のような鼓動感とトラクション(タイヤが路面をとらえる感覚)性能を高めていると言われています。

4気筒はフォーーーンという甲高いサイレンのような排気音と「胸のすくような上昇感」が特徴で、最も高回転でパワーを稼ぎやすくスーパースポーツなどの高性能マシンはほぼ4気筒を採用。日本製バイクが伝統的に強い分野ですが、これも並列4気筒(直4)とV型4気筒(V4)とではだいぶフィーリングが異なります。大雑把に言うと、直4は高回転パワーでV4は中速トルクに優れると言われたりします。また、V4は車体の幅をスリムにできるなどメリットもあります。

3気筒は2気筒と4気筒の中間的な感じで出力特性は基本的にフラットで、サウンドも滑らかさの中に鼓動感もあるタイプ。トライアンフやヤマハ・MT-09などが採用していますね。

6気筒はシルキーシックスと呼ばれるように回転フィールは4気筒以上に滑らかで平滑。そのため、BMWのKシリーズやかつてのZ1300、CBX1000などの大排気量ツアラーに採用されることが多いです。

「横置き」か「縦置き」か

もうひとつ忘れてはならないのがエンジンの車体への「置き方」で、横置きと縦置きがあります。これはクランクシャフトの向きを基準としていて、車体に対してクランク軸が交差する向きに置いてあるのが横置きで、同様に車体の進行方向に向いているのが縦置きになります。

伝統的な縦置きV型2気筒エンジンを搭載するモト・グッツィ「V7 III Racer」 画像出典:Piaggio Group Japan
伝統的な縦置きV型2気筒エンジンを搭載するモト・グッツィ「V7 III Racer」 画像出典:Piaggio Group Japan

現行モデルで言うと、BMWのRシリーズが採用する水平対向2気筒(通称フラットツイン)やモト・グッツィのV型2気筒、ホンダ・ゴールドウイングの水平対向6気筒などシリンダーが横に飛び出しているのが縦置きで、それ以外のほとんどのバイクは横置きになります。

少数派の縦置きエンジンですが、クランク軸が車体と同じ方向を向いているため左右への倒し込みが軽いというハンドリングの特徴があります。また、クランク回転の反動(いわゆるトルクリアクション)により、アクセルオンで車体が右か左に傾く傾向があるなどマニアックさが魅力にもなっています。それも最近ではバランサー装備などにより低減されていますが。

このように排気量は同じでも気筒数やそのレイアウトによって乗り味は大きく変わってくるのです。これ以外にも4ストと2スト、水冷と空冷、ボアとストローク、ファイアリングオーダー(燃焼間隔と順序)、バルプ形式など細かく挙げればキリがないですが、こうしたレシプロエンジンならではの個性やフィーリングや味わいを肌で感じられるのもまた、バイクの楽しみだと思います。

人類が150年かけて発明・開発・進化させてきた英知の結晶でもあるエンジンに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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