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信号機のない交差点は成立しないのか!? 十字路交差点に潜むワナとは

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
欧州の田舎には小さなロータリーがたくさんある。写真出典:Webikeニュース

信号撤去した交差点で起こった事故

先週、滋賀県野洲市の交差点で軽自動車同士による出会い頭の衝突事故が発生。これにより男性が重体に陥っているという。

新聞報道によると、この交差点は見通しの良い市道で一方が優先道路、交差する道路には一時停止の道路標示・標識がある。昨年12月に「円滑な交通」を理由に元々あった信号機を撤去し、代わりに路上ペイントや停止線ライトを設置して注意喚起を行っていたという。同県では2017年からコスト削減と円滑な交通のため、必要性が低い信号機を撤去し代わりの安全対策を進めていた最中だった。

日本は信号大国だった

交差点での衝突事故はおそらく毎日何件も発生していることだろう。バイクとクルマの典型的な右直事故のニュースなども毎週のように耳に入ってくる。

交差点にはやはり信号機が必要不可欠なのだろうか……。

ちなみに日本は信号大国らしい。ちょっと調べてみたが、現在国内にある信号機の数は約208,000基 ※1、1km2当たりの信号密度では日本より国土の狭いイギリスの5倍、アメリカの16倍だとか※2。日本は広い道路が作れる平野の面積も少ないので一概には比較できないが、信号が多い国であることは確からしい。

※1警察庁「都道府県別交通信号機等ストック数」

※2 【信号大国ニッポン × NOTE e-POWER】日本は世界最高クラスの信号大国!?(下記動画)

優先意識が事故を招く

でも信号機をたくさん設置しても交差点での事故はなくならない。ちなみに最近は信号機を撤去する社会実験が世界中で行われていて、むしろ事故件数が減少した例も多いようだ。信号機がないとお互いに運転が注意深くなるためだとか。

それでも今回のような事故が起きてしまう要因として、交差点の構造が関係しているのではないか。日本では道が直角に交差するいわゆる十字路交差点がほとんどだが、これは構造的に必ずクルマ同士が交差するため大きな事故に発展するケースが多い。

前述の事故例にもあるように、自分は優先道路を走っているからと速度を落とさずに交差点に進入したところに、たまたま一時停止しなかったクルマと鉢合わせするという事態が起こりうる。「自分は正しい」という優先意識が事故を招くのだ。信号機で統制されていればなおのこと、「青」を信じて突っ切ると目の前に右折車が……。

譲り合いの精神を育む「ラウンドアバウト」

▲ロータリーをぐるぐる回りながら行きたい方向に出ていくだけとシンプル。
▲ロータリーをぐるぐる回りながら行きたい方向に出ていくだけとシンプル。

信号機を無くして事故を起こりにくくするためにはロータリー式の交差点が良いと思う。欧米などで主流の「ラウンドアバウト」はその発展形で日本では正式には「環状交差点」と呼ぶが、これであれば中心にある島の周りをグルグルと回りながら行きたい方向に出ていく方式なので、進入するときは当然大幅に減速する必要があるし、信号もないので常に相手の出方を見極めながら慎重に通過することになる。

安全運転で一番大事な「譲り合いの精神」が自然と育まれることになるのだ。ラウンドアバウトでは一時停止が必ずしも必要ないこともメリットだ。サークル内が空いていれば減速しながらそのまま進入できるため時間のロスも最小限で済む。

これに対し十字路交差点では信号待ちが必然となるが、これも度重なるとイライラが募ることもある。特に田舎道などでクルマの往来もほとんど無いのに信号機だけがポツンと立っている場面を見ることがある。前からも横からも一台も来ないのに、ひとり信号待ちしている姿はシュールですらある。

信号機の設置には一台数百万円かかるそうだ。電気代やメンテナンスも必要だろう。そうした無駄を省きながら、より安全な交通社会を実現していくのが今を生きる我々の責任ではないかと思う。

交通管制だけではないその理由

▲ラウンドアバウトには基本的に一時停止も信号もない。
▲ラウンドアバウトには基本的に一時停止も信号もない。

国土が狭く道路を建設する用地も限られる日本では十字路タイプにせざるを得ないという話もある。だが本当にそうなのか。

海外に行くと美しい街並みの一部としてラウンドアバウトが機能している様子を見ることができる。サークルの中心には花壇があったり歴史的なモニュメントが置かれていたりして心も和む。走り方にもすぐに慣れるし、バイクで走ると緩やかなカーブをリズミカルに曲がっていくのが気持ちいい。

ラウンドアバウトを設置するにはたしかにある程度のスペースが必要だろうが、一度作ってしまえば電気代も管制システムも必要なくメンテナンス費用もあまりかからないのではと思う。

実際のところ欧州などでも郊外に行けば十字路タイプと変わらないスペースに収まった小さなロータリーがたくさんあるし、五差路、六差路に分岐して交通のハブとしての機能も合わせ持っていたりする。そして、ロータリーを取り囲むようにカフェがあって地元の人々の憩いの場になっていたりする。

ラウンドアバウトが絶対と言いたいわけではない。繰り返しになるが、現状の日本の交差点では事故が絶えず、信号機があっても無くても事故が起きるという事実があるのであれば、それを改善してより良い安全な交通社会を目指すべきでは、と意見したいのだ。今後は新たな街作りや都市再生計画の中にも織り込んでいくべきだろう。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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