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【BMW新型「F900R」海外試乗インプレ速報】スポーツ純度アップでワンクラス上の走りに進化

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
BMW F900R 記事内画像出典:Webikeニュース ライダー:筆者

F850GSベースに排気量拡大と電制強化

並列2気筒エンジンを搭載するBMWのFシリーズの最新モデル、F900RとF900XRの海外試乗会に参加してきたので早速レポートしたいと思います。

▲各国のジャーナリスト
▲各国のジャーナリスト

新登場の2つのモデルですが、ネイキッドタイプの「R」とクロスオーバータイプの「XR」という位置づけになります。共通する特徴としては、まずエンジンが2018年登場のF850GSがベースになっていること。エンジンのボアを2mm広げて従来の853ccから895ccへ排気量を拡大。鍛造ピストンの採用などにより最高出力は95psから105psへと大幅にアップしています。

▲F900XR/F900R
▲F900XR/F900R

フレームもF850GS由来のスチール製ブリッジフレームをモデルに合わせて最適化しています。また、電子制御も進化し、ABS、ASCに加え「レイン」「ロード」の2つのライディング・モードを標準装備。さらに車両の安定性を高めるアンチ・ホッピング・クラッチ(いわゆるスリッパ―クラッチ)とともに急激なシフトダウンによる後輪スリップを低減するMSR(いわゆるエンジンブレーキコントロール)など安全装備が充実。またコーナリングする方向を照らしてくれるアダプティブ・ヘッドライトやキーレス・ライド、軽量プラスチック溶接式のフューエルタンクなどBMWの最新技術が投入されています。

270度クランクの弾ける鼓動が気持ちいい

さて、まずはネイキッドタイプのF900Rですが、先代は2015年リリースのF800Rということになります。ただし前述したとおり新型のベースはF850GSに移行しているため先代とはまったく別モノのマシンになっていると言っていいでしょう。

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たとえばエンジンは同じ水冷並列2気筒ではありますが、F800Rの排気量は798ccで最高出力は90ps。360度クランクの滑らかなパワー特性が印象的でした。それが新型F900Rでは不等間隔爆発の270度クランクとなり鼓動感もアップ。と同時に路面を蹴飛ばすトラクション感覚も鮮明になり排気音もよりワイルドに弾けています。そして15psも上乗せされたパワーによるワンクラス上の図太い加速感が気持ちいい。スペインという特別のロケーションもありますが、ワインディングがめっぽう楽しいマシンです。

走りは別モノ、乗り味そのものがアグレッシブだ

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ハンドリングも激変しています。従来モデルはアルミツインスパーフレームで車体センター付近に硬さがあったのですが、新型は骨格にしなやかさが増して自然に曲がりやすくなった感じ。ディメンション的にもリアのスイングアーム長が伸びて路面追従性が向上するとともに、フロント荷重が増したことでフロントからの旋回力が明らかにアップしています。軽量プラスチックタンクや車体の低位置にコンパクト化された新型エキゾーストシステムの恩恵によりフットワークも軽快さを増すなど、スペック的な進化はもちろんのこと、“乗り味”そのものがよりアグレッシブな方向性になったと言えるでしょう。

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また、シート高も815mmと標準的でかつ並列2気筒ならではの車体のスリムさも手伝って足着きも良好。シート形状もフラットになり前後移動の自由度が増してライポジにゆとりが生まれたこともポイントですね。

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最新の電子制御で走りの変化を自在に楽しめる

電子制御の進化にも目を見張るものがあります。試乗車は最上級のプレミアムライン仕様でライディング・モードも「レイン」と「ロード」に加え「ダイナミック」と「ダイナミック・プロ」の2つのモードが追加装備されていましたが、選択したモードによってスロットルのレスポンスやABSやトラコンの介入度、そしてBMW十八番の電子制御サスペンション「ダイナミックESA」(リア側のみ)の設定まで最適化してくれるという、まさにスーパースポーツ並みの機能が装備されていました。それを現行モデルとしては最大級の6.5インチ大画面のフルカラーディスプレイで見ながら手元のスイッチとジョグダイヤルで直感的に操作できるという、いかにも高級4輪メーカーでもあるBMW的な人間工学に基づく発想だなあと感心。最初は戸惑いますが、走りながらアレコレいじっているうちに慣れてきて、モードによって走りのフィーリングが変わるのが楽しくなってきます。

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ちなみに国内投入されるF900Rには「ベース」、「スタンダード」、「プレミアムライン」の3つのグレードがあり、それぞれで装備される機能が異なっています。価格も「ベース」グレードは驚きの105万円台です!

BMWの中では入門モデル的な位置づけのFシリーズですが、その中でもとりわけコンパクトで“普通に乗れる”のがこのF900Rではないでしょうか。それでいて最新テクノロジーを投入した現代的な作りと充実した装備を考えれば、正直コスパ的にも相当お得な感じがしました。

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※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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