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巨大マシンが戦車のごとく突進! ヒルクライムに見たBMWのブランド力とは

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
写真出典:Webikeバイクニュース 撮影/佐川健太郎

ヒルクライムコンテストに興奮!

先週末の9月7日(土)~8日(日)にかけて、BMWのオーナー向け全国イベント「BMWモトラッドデイズ2019」が長野県・白馬村で開催されました。

16回目となる今年は、インターナショナルGSトロフィーの国内最終予選やニューモデル試乗会、ライブコンサート&バーベキューなど毎年恒例のコンテンツに加え、新たに新旧様々なジャンルのBMWによるドラッグレースを模したデモ走行や、Fシリーズ限定でのスキルアップ&タイムトライアル、白馬三山を臨むご来光ツーリングなども企画されさらに充実。例年以上の盛り上がりを見せた2日間でした。

かくいう私もいくつかのコンテンツを担当させていただき、BMWオーナーの皆様と楽しいひと時を過ごすことができましたが、中でもとりわけ印象に残ったのが「ヒルクライムコンテスト」でした。

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巨大なGSが山頂目指して駆け上る

毎年会場となるHakuba 47マウンテンスポーツパークは巨大なスキー施設です。ヒルクライムコンテストは、冬場は一面雪に覆われるゲレンデの急斜面をBMWのバイクで一気に駆け上がるタイムトライアル競技。ドイツ本国で行われている競技に倣ったものとのことです。

R1250GSやF850GSなど、BMWが誇るビッグアドベンチャーモデルが土煙を蹴り上げながら猛然と突進していく様は凄い迫力! 毎年多くのギャラリーを集める一番人気のコンテンツといっていいでしょう。ちなみにアドベンチャーモデルとは「砂漠や林道など道なき道を走破しながら長距離ツーリングをこなせる性能が与えられた多目的モデル」のことで、今世界中で人気の高いカテゴリーです。その中でもBMWのGSシリーズは圧倒的な人気とシェアを誇るベンチマーク的な存在として知られています。低中速トルクに厚いエンジン特性や重量感あふれる走り、そして走破性の高さから「戦車」に例えられることも多いようです。

今年は今シーズン最高とも言われる晴天に恵まれ、路面コンディションも良好だったせいか完走率は8割近かったのではないでしょうか。ほとんどの参加者が山の頂上まで登り切っていきました。

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見上げたガッツだ

感動したのは皆さんのチャレンジスピリットです。参加者は皆さん、普通のBMWオーナーの方々です。もちろん、巨大なGSを操って急斜面に挑んでいくわけですから、それなりの技量の持ち主とは思いますが、けっしてプロライダーではありません。

それにしても見上げたガッツですね! 転倒者の救援スタッフとして自分も間近で観察していましたが、まず一番はやはりハートの強さかと。最初に最も急な斜面と段差があるのですが、そこでひるまずにアクセルを開けていかないと失速して登れません。次にライン取りでしょうか。上手い人は最初からラインを読んで、なるべく段差の少ないフラットな路面を狙っていきます。そして、トラクションのかけ方が大事。アクセルの開けが足りないと登れないし、開け過ぎて派手にスライドさせたり、途中でタイヤが宙に浮いてしまうと途端にトラクションが抜けて失速ゴケ……というパターンも。意外にも一定速度で地を這うように地味な走りをした人が成功していたようでした。

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ほとんどのマシンはRあるいはFシリーズのGSにブロックタイヤを履いていましたが、中にはSTDのデュアルパーパスタイヤで登っちゃてる人や、直4エンジン+前後17インチホイールの本来はオンロードモデルの「S1000XR」にブロックタイヤを装着して、はたまたBMW最小排気量310cc単気筒エンジンの「G310GS」で挑んでいく強者も。R1250GSで果敢に挑戦し見事完走している女性ライダーの姿も見られました。

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その勇気に全員が惜しみない拍手を送る

BMWは知ってのとおり高価なバイクですし、特にGSシリーズとなれば重量もハンパじゃないし操るだけでも難しいはず。いろいろな意味で転倒したときのリスクは大きいことは承知で挑んでいくそのメンタリティが凄い。実際にもんどりうってバイクとともに斜面を転げ落ちる参加者もいましたが、成功した人にも失敗した人にもギャラリーとスタッフ全員が惜しみない拍手を送ります。できてもできなくても一歩踏み出していく参加者の勇気を讃えているのです。

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そして、そんなアグレッシブな競技(ゲーム)を参加型アトラクションでやってしまう豪放磊落さもBMWというブランドが持つキャラクターの一面であり、そのバイタリティの強さにオーナー達は魅力と誇りを感じているのだと思いました。普通に考えれば、メーカーとしてはなるべくリスクを負いたくないはずですから。ちなみにケガ人がひとりも出なかったことも報告しておきます。

ある参加者にヒルクライムに挑戦する意味を聞いたところ、「そこに山があるから」と茶目っ気たっぷりに答えてくれました。かつてエベレスト登頂を目指したジョージ・マロリーの言葉を引用しているわけですが、なんとも洒落ているではないですか。自分にとっても爽やかな風が吹いた週末でした!

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※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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